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一週間のタイムリミット

 俺の目の前に一人の人物が立っている。周りが暗いため顔をはっきりと見ることができないが、体格から男であろう。


「誰だ?」


 そう問いかけるが返事はなく、身動きもせずただこっちをじっと見ているだけなので周りが暗いのも合わさって非常に不気味に感じる。

 このままでは埒が明かないように思ったため、男に近づこうとしたところで――


 ピピピピピッ!


「! 夢か……」


という目覚ましの音に目を覚ます。なんだったんだ今の夢は、妙にリアリティがあったな……




「どうした優臣、ひどい顔だな?」


 メアと共に師匠の家に着いて早々、中から出てきたレオンに言われる。メアにも言われたがそんなにひどいのだろうか?


「妙にリアルな不気味な夢を見たからかもね」

「へー、どんな内容だったんだ?」


 別に隠すことでもないのでレオンに伝える。するとレオンは血相を変えて詰め寄ってきた。


「馬鹿な!? 優臣、今すぐ魔力を手に流せ!」


 すごい剣幕で言われたためすぐに流す。


「右手にはないな……左手は……やっぱりか!」


 レオンが俺の左手に何かを発見したようである。


「どうしたの?」

「自分の左手の甲を見てみろ」


 そう言われ見ると昨日まではなかった砂時計のような模様があった。なんだこれ!?


「なにこれ!?」

「お前が見た夢はドッペルが現れる前兆だったんだよ。つまりそれはドッペルが現れるまでの日にちと時間、一週間後の正午を表しているんだが……早すぎるな」

「早すぎるって何が?」

「ドッペルが現れるタイミングが、だ。最低でも一か月はこれまでは猶予があったのに」


 黙り込んで何かを考え始めるレオン。急なことでよく理解できていないが良くない状況なのは分かる。


「とりあえずジジイのところにさっさと行くぞ!」


「あと一週間しかないと……それは早すぎるな。だがだからといって諦める必要はないな? それまでにお前を出来る限り鍛え上げてやろう」


 そう師匠は言った。レオンと比べ非常に落ち着いている。


「じゃあ早速始めるかの」




 昨日までの鍛錬に加え師匠、レオン、メアと模擬戦をした。剣を扱うのがあまり得意ではないように言っていたメアにさえまったく勝てる気がしなかった。

 こんなんでやれるのか? と不安に思っていると


「優臣、自分を疑うでない」

「師匠……」


 師匠に声をかけられた。不安に思っているのがばればれだったのだろうか?


「己を信じなければ得られるものも得られないぞ? そもそも儂らに勝てないからといってどこにドッペルに勝てないという根拠がある? 難しいのは分かる、不安に思う気持ちも分かる、儂もドッペルと闘ったときはそうじゃったからな。じゃが今は余計なことを考えず、ただ己を信じ鍛え上げることを考えよ」

「はい、師匠」


 話には聞いていたが師匠も自身のドッペルと闘ったことがあったらしい。経験者が、師匠がそういうのならば今はその言葉を信じて前に進むのみである。


「ありがとうございます」




 ドッペルの夢を見てから三日が経過した。鍛錬が厳しく嫌になることもあるがなんとかこなしている。


「ふむ、少しずつではあるが形になり始めたかの。やはり異人はこっちに来てからすぐは成長が早いのう」

「師匠、どういうことですか?」

「それはの――」

「それは僕が説明しよう!」


 師匠に「成長が早い」ということの意味を聞こうとしたら蓮二さんがやってきた。


「僕たち異人は最初は魔力をもっていないね? だがこっちの世界に来て魔力を吸収する。初めのうちは魔力量が少ないため魔力を吸収する量が多いんだけどそれと同時に、肉体的な経験値を得る量も増えているみたいなんだ。これはこれまでの研究で判明していることなんだ、今は魔力と経験値の繋がりを調べていてね――」

「蓮二殿、落ち着きなさい。今日は別の用事があって来られたのであろう?」

「そうでした。優臣君、ドッペルが現れるみたいだね」

「!」


 蓮二さんに話していないのになぜ知っているのだろう?


「レオン君が教えてくれたよ。僕は言ったよね、『困ったことがあったらギルドに来なさい、力になる』と。今、君は困ってないのかい?」

「それは……困ってますけど……」

「なら僕たち大人を頼りなさい、君はまだ子供なのだから。シュヴェルトさん、優臣君が使っているものはどれですか?」

「これじゃな」


 師匠から俺が使っている刀と防具を受け取った蓮二さんは魔法陣が刻まれている場所に何か手を加え始めた。


「何をしているんですか?」

「最近強化の魔法陣の改良に成功したからね、それを付与しているんだよ。これで魔力の消費を抑えられるはずだよ」

「ほお、流石魔研異人支部じゃな。でもまだ発表しておらぬのであろう? 使って良いのか?」

「共に研究した仲間に聞きましたが快く許可しましたよ、 研究成果より子供の命の方が大切であるのは当然ですからね。もし真似されたら悔しいですが、まあうちならそれをすぐ上回るものが開発できると信じてますから」

「ありがとうございます蓮二さん」

「気にしないでいいよ、これで勝ってくれ優臣君。あ! でも闘いが終わった後に取材させてもらえると嬉しいかな。これまでのドッペルと何か違いがあるかもしれないからね」

「そんなことでいいならもちろんですよ」




 それからは魔力に余裕ができたためこれまでの鍛錬に加え、無理しない程度に魔法の鍛錬も始まった。

最初はレオンと同じ副属性である赤からである。


「まあ赤ならまずは火だろうな。火を思い浮かべながら魔力を操作して手に集め、それを放つような感じだな」


というアドバイスとレオンが実際に見せてくれたことによりすぐにできた。魔法は一度完成すると次からは感覚でできるようになるものであるらしい。

 そのため繰り返し練習をすることができ、そこから少しではあるが応用も利かせられるようになった。




 そして……ドッペルが現れる当日になった。

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