そして実戦へ *
目覚まし時計に起こされて朝を迎える。服を着替え、身だしなみを整えてロビーに向かう。
「さてどうしようかな?」
昨日メアに朝起こすように言われたのだが……良いのだろうか? 一度ギルドに行って他の人に、それこそあいに頼むこともできるが。
「まあいいか」
たかが起こしに行くだけだし。
「メア、朝だぞ~」
ドアをノックし、外から声をかけているのだが起きる気配がない。他の人の迷惑になりそうだから早く起きてほしいのだが……
少し待ってみたがやはり起きてこないため、再びノックして部屋の中に入る。一応昨日メアの許可はあったので問題ないと思うが、もしこれで他の人に犯罪者と勘違いされたら恨むからな!中に入るとメアは可愛らしい寝息を立てていた。
「おーい、メア。朝だぞ」
「う……ん……」
声をかけるが反応は芳しくない。そのため次は体を揺すると
「ん……ちっ!」
舌打ちされた。辛い……子供の頃、中々起きなかった俺を起こす母もこんな気持ちだったのだろうか?
「メア、いい加減起きてくれよ」
困ったな、だが朝には鍛錬があるのだ。そのため再び体を揺すり起こそうとすると布団に隠れているメアの手があるであろうところが輝いた。
「えっ」
顔のすぐ横で「ヒュッ」という音とともに何かが一瞬で通りすぎたと思ったら後ろで何かが壊れる音がした。振り向けば壁に槍が刺さっている。
「ねえ、メア! 何してんの!?」
「ん……あら、おはよう優臣」
「えっ、ああ、おはよう……じゃなくて! 本当に何して……」
「? どうしたの優臣?」
メアが体を起こすと掛け布団が剥がれた。それは普通のことだがメアの格好に違和感を感じる。どうも何も身に着けていないように見えるのだ。まだ少し寒季節いということもあり掛け布団は羽毛であるため掛け布団は体から剥がれても盛り上がっており、辛うじて大事な部分は見えていないが……
「えっとメア? その格好は」
「えっ……っ!? きゃああああ!!」
「待って!待っ、ああー!」
「お前らは寮に入って初日で何をやらかしてるんだ?」
レオンはそう言いながら正座している俺とメアを見る。再びメアの指が光ったため待つように言ってみたのだがそれは無意味で槍は放たれた。その被害は最初より酷く、部屋の壁を貫通し奥の壁に刺さっていた。
「だって優臣が!」
あのあとメアは部屋から俺を追い出しすぐに服を着ていた。メアを見ると指には指輪がはまっており、どうやらそこから槍を取り出しているように思える。
「ええ……」
言い返したいが、大事な部分は見えなかったとはいえ、際どいところまで見えたため何も言えない。
ちなみにあとでメアになぜ裸で下着もつけず裸で寝ていたか聞いたところ
「普段からそうしてるからよ。昨日は眠すぎて優臣に起こしに来るよう頼んでいたことを忘れてたのよ。でもこの気持ち、分かるでしょ!? 全身で布団の気持ちよさを感じたいという気持ち。滑らかな生地にもふもふ感、最高でしょ!?」
と語った。その気持ち分からなくもないが、きちんと俺が来ることは覚えておいて欲しかった。
「初日から寮を破壊するなんてお前ら記録更新だな。今後この記録が破られることはないだろうから名を残せるな」
「こんなことで残しても嬉しくないんだけど!」
「それはお前らが悪い。別に寮を壊してもいいがせめて自分たちで直す手段を確保していてからにしてくれ。あともう少し遅い時間にな、今回はギルドが直しておいてやる」
自分たちで直すなりの手段を確保しておけば寮を壊していいとは、このギルド少しおかしいのでは?
☆
「ぜー、ぜー」
「はぁ、はぁ」
アクシデントがあったが無事今日の鍛錬を終えることができた。
「優臣、午後は空いておるか?」
「空いてますがどうしました?」
休憩していると師匠がやってきて午後が空いているか尋ねてきた。どうしたのだろうか?
「そうか、じゃあ早速実戦をするかの。お前たちはどうする? できればテオは回復役としていておいてほしいのじゃが」
「まあ俺は行くとして」
「シュヴェルトさんがおっしゃるなら僕も行きますよ」
「俺は研究するからパスで」
ということで実戦に着いてくるのはレオンとテオとなった。シュヴェルトさんは師匠として、メアはパートナーとして当然である……って少し待ってほしい!
「もう実戦ですか? もう少し練習してからとか」
「本当は儂もそうしたいのじゃがな、そんな悠長に言ってもおれんじゃろ。ドッペルがいつ現れるか方法は違うが必ず一週間前に現れる予告をされ、そして予告された日の正午に現れるというのは知っておるな?」
蓮二さんからいろいろと説明されたなかに、その説明があったのを覚えている。
「はい」
「それがもしかしたら今すぐかもしれない、まだ一ヶ月も経っておらんのだからそれはないじゃろうがな。だが分からないから後悔のないようにするのだ。普段の練習もまったく役にたたないわけではないが、実戦に勝るものはないじゃろ」
「……」
そう言われたら何も言えない。自分は素人で師匠はプロなのだから。そしてレオンたちもそうであり、師匠に何も言わないということはそれが正しいからなのだろう。
「分かりました。すみません、いきなりだったので驚いてしまって……後悔しながら負けたら死んでも死にきれないので。師匠、お願いします」
現在街から外に出てゴブリンを相手にしている。まずは人型で比較的弱いゴブリンで経験を積むそうだ。装備は刀と軽い装備を借りている。それぞれに魔方陣が刻まれており、これによって装備者の魔力を利用し刀などをより硬くしているらしい。ただ魔方陣を用いた方法は効率が悪く、自分で流した方がいいらしい。そのため武器などに魔力を流す、さらに流しながら戦闘をする鍛錬も今後していくようだ。
「お疲れ」
「思ったより疲れたよ」
ゴブリンを二体倒したところで休憩になり、テオから一応回復魔法をかけてもらう。この防具は優秀らしく、ゴブリンの攻撃をくらっても死ぬことはないらしい。まだくらってないから本当か分からないが。当然くらってみる気はさらさらない。
そしてやはり実戦は先の鍛錬より疲れる、体力的にも精神的にも。特にこれまでゲームでは何も思わなかったのだが、血が飛び散るのはあまり気分がいいものではない。
「はあ……」
「疲れるのは分かるけど頑張りなさい。私も手伝うから」
「やる気出てきた」
思わず溜め息をついたらメアが応援してくれた。女の子に応援されたら頑張るしかないな!
そしてあのあとゴブリンを三体倒して実戦は終わった。どうやらギルドにあった依頼の一つだったらしくお金が貰えるそうだ。ゴブリンを含む魔物には体内に魔石と呼ばれるものが精製されているらしく、形は様々なようである。
他にも聞いたところ魔物の強さと魔石の大きさは比例するらしい。ゴブリンの魔石は小さく一般的には使い道はないが、これが討伐の証になるようでギルドに提出するらしい。
「ではまた明日、同じ時間にな」
「はい師匠」
師匠の家に戻った俺たちはそこで解散となった。レオンとテオはギルドに、メアは一旦寮に戻るらしい。そして俺はというと
「へー、ここにはこんな建物があるのか」
街を探索していた。かなり疲れているがこの街がどのような感じなのか気になったため軽く見て回るつもりだ。そしてふらふら歩いているといつのまにか裏路地に入っていた。あれ? どこでこうなった?
このまま進むと帰り道が分からなくなりそうだったため、来た道を戻ろうとすると
「きゃああああ!」
という悲鳴が聞こえた。なんだ!?
声が聞こえた方に行ってみると二人の男が一人の女性を壁際で囲んでいた。
えっ!? なんだこれ、どうすればいいんだ!?
周りを見てみるが人は誰もいない。どうしよう!? どちらの男もがたいがよく、強そうにみえる。ここで助けに入ってもすぐやられるだろう。だが
「ちょっと待ったーー!」
ここで見て見ぬふりをするのは人として、男としてなしだろう。
「なんだこいつ」
「ちっ、めんどくせえな」
男たちが女の人を逃がさないようにしつつ、こちらを向いた。
「男二人がかりでなにをしてるんだ?」
「ちょっとこの女に用があってな。お前には関係のないことだ」
「見たからにはそうはいかないだろ」
そう返すと
「……なるほど、確かにお前の言うとおりだな。じゃあ邪魔者は殺すか」
男たちはナイフを取り出した。えっ、武器もってんの!? 刀も防具も借り物のため師匠の家に置いてあり、今俺の手元には何もない。
「じゃあ死ね!」
「っ!」
男たちがナイフをもって襲いかかってきた。こんなやつらに殺されてたまるかってんだよ! なんとかしようと魔力を操作し、なにかしらの魔法を発動させようとする。だが魔力の操作にまだ慣れていないため発動が遅く、凶刃がこちらに届くというところで
「ぐっ!」
「がっ!」
男たちが声を上げ倒れた。見れば脚から血を流している。
なんだ、何が起きた?
「お主、大丈夫か?」
サブタイトルの*は作者が把握するためのものですので特に気になさらないでください。




