悪事千里を走る
ドッペルに侵食されてきていると知らされた翌日から、俺は早速レオンたちと解決方法を探り始めた。
「ドッペルに侵食されるのとその属性を使うことに関連があるんだろ? だったら青の魔法とかを使わなかったらいいんじゃないか?」
「いや、それは根本的な解決にはならないだろ。優臣には時間稼ぎじゃなく、ドッペルを克服してもらう必要があるんだからな」
「それなら……」
どうするべきか、皆で意見を出しあっていると
「レオンはいるかい!?」
勢いよくギルドの扉を開けてリヴォルが中に入ってきた。
「……うるせぇな。なんだ、わざわざここに来て」
「いた! レオン、エルピリアが一般人に手を出したというのは本当かい!?」
「あぁ?」
「この街だけじゃなく王都でも噂になってるみたいだよ! どうなんだい?」
「噂だぁ? ……ちっ、そういうことか」
レオンが小さく舌打ちする。
「おい、その噂は誰から聞いたんだ?」
「えっ、それはうちのギルドメンバーだけど」
「じゃあその噂の出所は知ってるのか?」
「……いや、知らないけど」
「そうかそうか。それなのにお前は俺たちよりもそんな噂の方を信じるんだな」
「あっ、いや! そういう訳じゃ――」
「まぁ事実なんだが」
「えっ?」
「ちょっと説明してやるから聞いていけ」
そしてレオンはリヴォルに説明し始めた。
「そんなことが……優臣君、無事で良かったよ」
俺の方を見ながら安堵した表情を浮かべるリヴォル。
「そして君たちは今、蛇と敵対してるんだね。でもそれが一般人に手を出すのとどう関係するんだい?」
「それは優臣を襲ったのが『元』蛇ということだ。そいつらは蛇をすでに追放されてんだ。つまり――」
「ギルドメンバーではなく、ただの一般人扱いということになるわけだね」
「そういうことだ」
レオンの説明を聞いて怒りが湧いてくる。先に襲ってきたのはあっちなのに悪いのは俺たち……というか俺だと? そんなのめちゃくちゃだ!
「それで君たちはどうするんだい? その噂をどうにかしたいならフランヴィーレの皆に話して協力してもらうけど」
「いや、これは俺たちの問題だ。それにすでに王都でも噂になってるんだろ? ならもう遅いだろう」
「それでも――」
「お前も気付いてるんだろ? ここまでの流れはすべて仕組まれてんだよ。となるとこの流れを止めるのは不可能だ」
「……どうして君はそんなに悲観的なんだい」
「現実をしっかりと理解しているだけだ。それに今回流されたのは悪い噂だ。いいか、人ってのは良い噂よりも悪い噂の方が好きなんだ。その対象が有名だったり優秀だったりすると尚更だ、そっちの方が面白いからな」
「……」
「ん? おっ、ほれ見ろ。今、管理協会から連絡が来たんだが、グラースの蛇を含む4つのギルドがうちに対し非難声明を出したとよ」
「……レオン」
「ちっ、何だその顔は。こんなんで俺らが折れるわけないだろ。いいからお前はさっさと戻れ」
「分かった。でも言ってくれれば僕たちはいつでも協力するからね」
そう言ってリヴォルは最後まで心配そうな顔をしながらギルドを出ていった。
「さて、それでこれからエルピリアはどうするかだが」
「いやいや、落ち着いてるけど非難声明って大丈夫なの!?」
「蛇以外のギルドはどうとでもなる。むしろ敵対してるギルドがはっきり分かって儲けもんだ」
そ、そういうものなのか?
「レオン」
「どうした、テオ」
「もうさ、一度はっきりとやりあった方が良いんじゃないかな?」
「テ、テオ?」
「これまで我慢してきたけどさ、これだけやられて黙ってられる訳ないよね」
いつもにこにこしているテオが冷たい声で、そして冷たい目をしてそんなことを言う。
「お、落ち着け。一度、管理協会に反論の文書などを送るから」
「ふーん」
「とりあえずこの問題は俺がなんとかする。だからお前らは大会と解決方法を探ることに力を注いでくれ」
「分かった」
そうしてこの件はいったんは保留となったのだった。
☆
しかしその二日後、問題はさらに大きなものへと発展する。
それは蛇への新たな処罰を求めたエルピリアに対し管理協会が寄越した返事が『処罰なし』であったということ。そしてさらには蛇がエルピリアに攻撃を仕掛ける準備をしているという情報をエクスが入手したからであった。




