対立
年明けから一週間以上経ちましたがまずは明けましておめでとうございます。
今年も気ままに書いていくので、よければこれからもお付き合いいただけると幸いです。
「レオン様、こちらの部屋になります」
「分かった」
テオとエクスを連れて王都のギルド管理協会本部にやって来た俺は一室へと案内された。職員がドアをノックし開けると中には眼帯をした中年の男が一人テーブルの向こうに座っており、背後には男女が一人ずつ立って待っていた。今回俺たちがここにやって来た理由、それはギルド『グラースの蛇』と話すためだ。
「目上の俺より後に来るたぁ良いご身分だな?」
後ろのドアが閉められると同時に目の前の男が口を開いた。恐らく牽制目的だろう。
「歳だけを無駄にとってきた奴のどこを敬う必要がある?」
「あ゛ぁ?」
向かって反対の椅子に座りながらカウンターをかますと男は目を吊り上げて怒りを露わにした。
「ちょっとレオン、今は……」
「分かった分かった。俺はエルピリアのギルマス、レオンだ」
「ちっ、グラースの蛇のギルマス、セビルだ」
「今日はとことん話し合おうじゃねぇか」
「ふん……それで? 俺たちがここに呼ばれた理由はなんだ?」
「自分の胸の内に聞いてみろ。思い当たることがあるだろ」
「さぁ、さっぱりだなぁ?」
なるほど。どうやら向こうはしらを切りたいようだが……それを許すはずがねぇだろ。
「そうか、思い出せないならしょうがないな。それじゃあこれを見てもらおうか」
「ん、なんだそれは?」
「いいから黙って読め」
当時の状況が事細かに書かれてまとめられている紙の束を投げて渡す。さすがにこれを読めばあの老いぼれの頭でも理解できるだろう。
「ふむ……」
一通り読み終えたのか、目の前の男は机の上に紙の束を放り投げた。
「それで? 結局何が言いたかったのだ?」
「おいおい、これを読んで理解できないとかまだボケるには早いと思ってたんだがな」
「そうか、それじゃあバカな俺に分かるように言ってくれないか? 七光りの坊ちゃん?」
「……いいだろう、要はあんたのギルドの連中がうちのメンバーを襲撃、もしくは襲撃しようとしていたってことだよ」
「……」
「そのことをあんたが指示したかは知らないが、少なくとも計画があったことは知っていたはずだ」
襲撃場所などを見れば、この襲撃が前もって綿密に計画が練られていたことがうかがえる。中にはただの1ギルドメンバーが知らないはずの情報も含まれていた。
「なるほど。それでこっちに何を求める?」
「まず賠償と仮処分としてこの紙に書かれている計画に加担した6人の大会出場停止だ。そして大会終了後にギルマスのあんたと6人、さらに他にメンバーがいればそいつらを含め、追って正式に処分を行うことだ」
「ほう……だが一ついいか?」
「なんだ」
「確かにその紙には細かく状況が書かれ、分かりやすくまとめられてあった。襲撃の未遂については位置情報などからも可能性は高いと言わざるを得ないだろう。だが実際に襲撃をしたかどうかについては確認のしようがないよな?」
「なに?」
「位置情報、魔術具の映像、どれもが途中で切れていたからそこの空白部分については予想、推測でしかないわけだ」
「……」
「いや、むしろこの状況を利用してお前のメンバーのうっかりミスを俺たちの責任にし、賠償をせしめようとしてるんじゃないのか?」
「んだとテメェ?」
「おぉ、そんなに睨んじゃって怖いねぇ。おじさん漏らしちゃいそう」
この野郎……今すぐ殴り飛ばしてやろうか……
「そんなに睨まないでくれよ。そうだ、仲直りの握手をしようじゃないか」
二カッと笑い、セビルは右手を差し出してきた。
「……」
「おいおい、そんなに警戒しないでくれよ。悲しくなるだろ」
明らかに何かを企んでいそうだがそれでも握手をしないと話が進みそうにない。
仕方ない……そう思った俺は一歩、二歩と歩みを進めたところで――
「ぐっ!!」
セビルの重い蹴りを喰らい、後ろに勢いよく吹き飛ばされた。バリッ! という音を立ててドアを破り、廊下に放り出される。
「レオン!?」
「レオン!」
テオとエクスが部屋の中から慌てて駆け寄ってくる。どうやら蹴飛ばされた俺を躱したみたいで、無事で安心した。
「すぐに回復魔法を――」
「いや、大丈夫だ」
咄嗟に右腕でガードしたため、腹への攻撃を阻止することに成功していた。あれをそのまま喰らっていたらまずかったかもしれない。
「何事ですか!?」
音を聞きつけて職員が慌てた様子で現れた。
「なに、そいつが虫に驚いて後ろに大きく跳んだだけだ。そうだよなぁ?」
「……あぁ、そいつの言うとおりだ。その際に虫に刺されたが大した痛みじゃないから心配する必要はない」
「そ、そうですか……」
「さて話し合いは終わったし俺たちは帰らせてもらうぜ。そうだ、あんた上の奴に伝えておいてくれ。セビルはグラースの蛇に対する仮処分を受け入れるとな」
「わ、分かりました!」
「それじゃあな。な、な、ひ、か、り、の坊ちゃん」
そう言ってセビルは二人を連れて去って行った。
「あの……エルピリアの皆様はどうしますか?」
「その部屋を少し借りていいか? そうしたら俺たちもすぐ帰る」
職員にそう伝え、俺たちは部屋の中に戻った。
見れば木製の小さな机が半分に割れている。セビルが蹴りを行う際に踏みつけてこうなったのだろう。
「レオン、すぐに右腕を見せて!」
テオが慌てた様子で俺の袖を捲り、
「やっぱり……」
そして顔を曇らせた。テオの目線の先には赤黒く腫れあがった俺の腕が露になっている。
「すぐに回復魔法をかけるから」
「……あの野郎、本気でやりやがったな」
「蹴り始めから終わりまで一瞬だったからな。むしろよくそれだけで済んだというべきだと思うぞ」
「相手も相手だけどレオンも挑発するからだよ」
「仕方ねぇだろ」
「はいはい」
「それよりエクス、一つ頼まれてくれるか?」
「何をだ?」
「祭りの空き時間でいいからセビルの周囲の情報を集めてくれ。あわよくばあいつからも情報を手に入れろ」
「……ふぅー、手段は?」
「ばれないならその辺は任せる」
「やれやれ、吾輩がばれるようなヘマをするわけがないだろう。分かった、すぐに準備に入ろうではないか」
「助かる」
あのクソ野郎が……最後まで余裕ぶっこいていやがったが絶対に泣きっ面をかかせて……いや、あんなおっさんの泣き顔なんて見たくもねぇ。とにかく俺らに喧嘩を売ったことを後悔させてやる!




