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犯人

 ダンケルハイトさんに呼び出された次の日にメアは帰ってきた。そこでお互いに謝り、話し合った結果パートナーは続行するということで決まった。

 その翌日、メアは崖から落ちたときの話を聞きたいと昨日俺も呼ばれたギルド管理協会とレオンのところへ向かった。

 そして俺はというと――


「ありがとうございましたー」


 王都の闘技場の周りで許可を得て、恭也とたこ焼きの屋台を運営していた。当然、俺たち以外にもたくさんの店が出店している。


「そろそろ屋台しめるか」

「おっ、賛成」


 祭りの雰囲気が皆の財布のひもを緩くしているのだろう。想定していたよりも多くの人が買っていき、用意していた材料もほとんどなくなったため、昼の書き入れ時が過ぎたところで終えることにした。

 そうそう、お客さんと言えば途中にバイゼルたちがやって来た。どうやら俺とメアが怪我をしたと聞いて心配していたらしい。実は昨日もギルドに来ていたようだが、生憎俺たちは昨日はこの国にほとんどいなかったため会うことができなかった。だから改めて今日会いに来たということだった。

 まさか他のギルドの人からも心配されているとは思っていなかったため、こういうのはなんだか少しむず痒く、しかし同時に嬉しくもあった。


「むっ、もう店じまいか?」

「あっ、クロ。そうだね、ちょうど終わろうとしていたところだよ」

「そうか……」


 それを聞いてクロはしゅん……と残念そうな顔をした。


「もしかして食べたかった?」

「い、いや。そんなことはないぞ!」


 口では否定しつつも目はちらちらとこっちを見ている。


「あっ、そうなんだ。せっかく来てくれたんだから奢ってあげようと思ってたんだけどそれなら――」

「本当か!? それは楽しみじゃの!」

「……」

「あっ」


 やっぱり食べたかったらしい。


「はいはい、すぐ作るから待っててね」




「うーむ、美味いのぉ!」


 出来立てのたこ焼きをふーふーと冷ましながら、クロは嬉しそうに口に入れている。喜んでくれてなによりだ。


「そうだ、クロ。それを食べ終わってから少し聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「うむ、よいぞ。少し待っておれ」

「焦らなくていいよ。こっちも片付けがあるからね」



「それで我に聞きたいこととはなんじゃ?」


 片づけを終えた俺は恭也と別れ、そしてクロと近くにあった喫茶店に入った。


「うん。まずはこれを見て欲しいんだ」


 目を閉じて意識を集中させると、突き出した俺の右手の中にスッと刀が現れた。


「ん? これはなんじゃ?」

「見ての通り、刀なんだけどいつの間にか持ってたんだよね」

「いつの間にか……?」

「うん。それがいつ手に入れたかよく覚えてないんだよね」

「はぁ?」

「いやいや本当だって! 試合からこっちに戻って来たときにずっともやもやした何かが頭の中にあったんだ。それをどうにか思い出そうとしたらこの刀が突然現れたんだよ」

「ふむ……少しじっくり見ていいかの?」

「もちろん」

「……」


 そう答えるとクロは目をスッと細め、真剣な眼差しで刀を調べ始めた。そして少ししてから顔を上げた。


「何か分かった?」

「とりあえずこれはお主に返そう。それでその刀じゃがな……二つお主に言えることがある」


 そう言って目の前に指を二本立てるクロ。


「一つは特殊な物質で形成されておる」

「えっ? これ、鉱石で作られてないの?」

「触ったらそのように感じるかもしれんが実際はまったく違うな。まぁ普通の人には分からないようにしてあるみたいじゃから分からなくて当然じゃろ」

「へー」

「そしてもう一つは想いが込められておる。期待、信念、希望……そういったものがな」

「それって分かるものなの?」

「うむ、その刀を作った奴はそれにかなり思い入れしたようじゃの。何かが違えば呪いとなるほどの強力な想いじゃ。故にそれほどの刀が出来上がったのじゃろうな」


 そう言うクロの声がいつもよりも優しく聞こえる。


「それでじゃな優臣、その刀は大切にすべき……いや、してほしいのじゃ。それは必ずお主たちにとって必要となるときがくるであろうからな」

「そこまで言うの? うーん、分かったよ」

「それに関して我から言えるのはこれくらいかの。それで? さっきの口ぶりじゃと他にも聞きたいことがあるみたいじゃが?」

「うん……実は情報を集めて欲しいんだ、俺たちを狙った奴の」

「そのことについてか……ふーむ」

「どんな些細なものでもいいんだ。もちろん報酬は払うよ」

「あぁいや、我が悩んだのは別に報酬のことなどについてではないぞ。もちろん協力するのはやぶさかではないのだが……もうすでにあ奴らが動いておると思うからのう」

「あ奴ら?」

「うむ、まぁ我は我で動いてみるかの。優臣よ、期待しておくといい。すぐにでもお主の望む情報が手に入るであろうからな」

「ありがとう」


 よし、クロが協力してくれるなら百人力だ。俺たちを狙ってきたのがどこのどいつだか知らないが、ただで終わる俺と思うなよ……!


           ☆           



「レオン、どうかな? 何かつかめた?」

「ばっちりだ」


 優臣たちやギルド管理協会から手に入れた情報を整理しているとテオが部屋にやって来た。


「本当に!?」

「あぁ、まずはこれを見てくれ」


 そうしてテオに一つの紙の束を渡す。


「エクスや恭也にも話を聞いたがどうやらあいつらも競技中に誰かにつけられていたらしい」

「そうなの? というか恭也とマヤはよく気付いたよね。二人ともこういうのは苦手でしょ」

「恭也というよりはエリムが気付いたらしいがな。そしてマヤはテオの言うとおり、気付かなかったらしい」

「あっ、やっぱりそうなんだ」

「それでつけていた奴らの特徴を書きだすと一致するペアがそれぞれあった。しかも同じギルドだ」

「でもそれだけじゃ偶然という可能性も」

「そうだ。だから今度は協会に魔術具の追跡ルートを調べさせ、その情報を貰ってきた」


 さらにテオに紙の束を渡す。


「どれどれ……って、これは……!」


 うちの連中と追跡していた連中のルートの比較が記された紙を見てテオが驚きの声を上げる。


「どうだ? ところどころずれてはいるが一致する部分が多いだろ。こういう競技で同じルートを通ることなんてまずあり得ない」


 そしてその紙には優臣たちとその追跡者たちのルートも通信が途絶える前までではあるが記されており、これももちろん同じようになっている。しかもそいつらは自分たちの魔術具を撃ち落した後、一気に距離を詰めて優臣たちのもそうしたようだ。通信が途絶える時間にほとんど差がないことからそのことがうかがえる。

 ここまでされるともう偶然とは言えないだろう。


「……それでどこのギルドがやったの?」


 静かではあるが怒りをにじませた声でテオが聞いてきた。


「ここだ」


 最後に追跡者の名前と顔が印刷された一枚の紙を渡し、テオに答えを示す。


「この紋章のギルドは……」


 一匹の蛇が星を今まさに飲み込まんとする紋章。その紋章を使っているギルドの名前は――


「グラースの蛇。そこが今回の犯人だ」

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