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病院にて

「はい、これで大丈夫ですよ」

「ありがとうございました」


 医務室の先生にお礼を言って俺は部屋を出た。

 メアの毛布が剥がれ落ちるというアクシデントがあった翌日、つまり今日ということになるが俺とメアは地図を頼りに魔法陣を見つけ、なんとか日が暮れるまでに競技場に帰還することができた。


「よぉ」

「レオン……」


 部屋を出るとレオンたちが廊下に立っていた。


「すまなかった! 撤退を判断したのは俺なんだ、だから責めるなら俺だけにしてくれ」


 そう言って俺はレオンたちに勢いよく頭を下げた。そう、俺たちはまだ競技の日数が一日残っていたにも関わらず撤退したのだった。


「いや、お前らはよくやったよ。お疲れ」

「えっ」


 どんな誹りを受けるか内心びくびくしていた俺にレオンが放った言葉は労いの物であった。


「おいおい、なんだその顔は。まさか俺が罵声の言葉でも言うと思っていたのか?」

「……」

「やれやれ……あのなぁ、引き際を間違えて命を落とすのはただのバカだ。そしてお前は間違えずにきちんと正解を選んだんだ。もっと胸を張れ」

「そう……かな」

「そうだ、だから今はしっかり休め。それでお前の怪我はどんな感じだったんだ?」

「右腕の骨折と全身の打撲だよ。まぁそれも魔法で治してもらったから今は大丈夫だけど」

「そうか、それでもとりあえずしばらくは安静だな」

「先生にもそう言われたよ。それよりも――」

「分かってる。それじゃあ行くぞ」



           ☆           


「メア!」

「何よ、騒がしいわね」


 俺たちが向かったのはメアのところだった。メアは少し離れたところにある部屋のベッドで、患者衣に着替えて休んでいた。


「それでどうだった?」

「私はそこまで大きな怪我はなかったらしいわ」

「そうか、それを聞いて安心したよ……」

「あら、随分心配してくれてたのね」

「あたりまえじゃないか!」

「そう、ふふっ」


 何か良いことがあったのか、嬉しそうに笑うメア。


「……ふむ」

「レオン、どうした?」

「いや、お前らから話を聞こうと思ったが今日は止めだ。二人とも疲れてるだろうし今日は休め」

「そうだね、それじゃあ俺も――」

「は?」

「うん?」

「いやいや、お前はメアに付き添ってやれよ」

「えっ、でもレオンの言うとおりメアは疲れてるだろうし」

「はぁ~」


 大きなため息をついてメアの方を見るレオン。


「大変だな」

「な、なんのことかしら」

「はいはい、それじゃああとはお二人でごゆっくり」


 そう言ってレオンたちは出ていき、部屋には俺とメアの二人だけが残った。


「……」


 部屋に気まずい空気が漂う。以前も湖でメアの裸を見たことはあったが、あの時は離れていたためそこまではっきりとは見えなかった。しかし昨夜は目の前で、それも正面からであったため、より気まずく感じる。

 だがここで黙っていては話が進まない。俺はメアに言わなければいけないことがあるのだ。


「メア」

「なにかしら」

「契約を解消しよう」

「……えっ?」


 それはメアと契約を解消することの提案だ。別にこれは昨日今日で考えたわけではない。


「俺じゃメアを守ることが出来ない。いや、それどころか足手まといにすらなっていると思う」


 そう、これまでメアと過ごしてきて俺はこれを痛感してきた。そして同時にあることも感じた。それは――


「それに引き替えレオンたちならそんなことはならないはずだ。今回だってあいつらならメアはこんなことにならなかったと思う」

「……」


 レオンたちとの差だ。もちろん経験の差はあるだろうが、それでもレオンたちは頭一つ抜けて強いのだ。そしてあいつらの性格ならメアを傷つけることはないはずだ。


「だから契約を解消しよう。もちろんダンケルハイトさんには俺から連絡しておくよ。俺が原因で解消したんだ。俺と契約を解消してもメアがこっちにいられるように――」

「もう……って」

「え?」

「もう黙って!」


 俺が話し始めてから俯いて話を聞いていたメアが怒りの声とともに顔を上げた。


「メア?」


 その頬には薄らと涙が伝っている。


「いったいどうし――」

「まさかそんな風に思っていたなんて……いつ私が優臣に守ってと頼んだの! 私はそんなことを望んでいないわ! ただ隣にいてくれるだけで良かったのに!」

「ご、ごめん……」

「もういいわ、この部屋から出てって!」

「メ、メア」

「出てって!」

「……ごめん」


 俺は席を立ち、メアに背を向けて部屋から出た。

 ……なにがいけなかったのだろうか。それを必死に考えながら俺は家に帰ったのだった。



           ☆           



 そして翌日――


「……メア、入るよ」


 答えが出ないまま、再びメアのお見舞いにやって来た。


「どうぞ」


 確認すると部屋の中から返事が返って来た。あれ、でも今の声って?

 不思議に思いながら部屋に入ると、やはり中でティナちゃんが椅子に座っていた。


「やっぱり今のはティナちゃんだったんだね」

「えぇ、そうですわ……一応来たんですのね」

「ん? 何か言ったかな……ってあれ? メアは?」


 ベッドの方を見ればそこにはメアがいなかった。どこかに出かけてるのだろうか?


「ここにはいませんの」

「みたいだね。それじゃあ帰って来るまで待ってようかな」

「いいえ、もうここにはいませんの」

「えっ」

「貴方、お父様が待っていますの。私と一緒に来て下さるかしら?」

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