吸血姫召喚
美少女で可愛いと思った天使がまさかの男ということに驚いた。こんなに可愛いのに……
「レオン、準備は整っているよ」
「急だったのにありがとな、やっぱりお前に頼むのが一番だ」
「あはは、そりゃどうも。じゃあ優臣の体調が整ったら行こうか」
「行くってどこに?」
「君の歓迎パーティーさ、軽めのだけどね」
一階に戻ると先程より人数が増えており、様々なテーブルの上には大きな肉や魚、酒などが置いてあった。
「今日新たな仲間が一人加わった。優臣はドッペルと闘う力をつけなければならない、お前らに改めて言う必要はないと思うが助けてやれよ」
「倉田優臣です、みなさんよろしくお願いします」
「じゃあ簡単な自己紹介も終わったことだしパーティーの始まりだ!」
「すまなかったな、優臣。巻き込んでしまって」
一階に戻ってしばらくしてからレオンの簡単な挨拶と俺の自己紹介が始まった。そしてそれが終わり料理に舌鼓を打っていると一人の男が謝ってきた。確かこの人はレオンに背負い投げされていた人だったかな?
「俺はバーンだ、よろしくな。他の二人も謝りたがっていたが罰として今調理しているからな。他の二人の分も俺が謝らせてもらう」
「いえ、別に怪我もしてないのでいいですよ」
「お前は良いやつだな! 他の奴らだとこうはいかないからなぁ……じゃあ俺もすぐに調理に戻らないと怖いからまたな」
バーンさんは嵐のように去って行った。あの人たちがこんなに美味しい料理を作っているのか……人はやっぱり見かけで判断したらだめだな。
☆
今日は絶好の召喚日和だな! 外に出ると青空が広がっている。昨日あの後いろいろあって大変だったなぁ、楽しかったけど。
「じゃあ一旦ギルドに行って合流するか」
「分かった」
昨夜、俺が明日召喚を行うことを知ると恭也とテオ、そしてあいが見たいと言ってきた。レオンはもともと着いてくる予定だったので今日は5人での行動になるのかな?
それにしても眠い……召喚する相手の名前を考えていたらなかなか寝付けなかったからなぁ。うーん、名前何にしようかな?
「随分眠そうだな、疲れが残ってるのか?」
「いや、召喚する相手の名前を考えていたらなかなか寝付けなくてね」
「え……召喚する相手は大体一定以上の知能があるから普通に名前をもっているが。それこそ俺ら人間と同じ場合もあるし」
「じゃあ俺の昨夜の行動は」
「完全に無駄だな」
「……」
辛い、俺の睡眠時間を返してほしい……はぁぁぁ。
ギルドに到着し二人と合流した後、街の外に出た。
「じゃあ早速始めるよ」
昨日ドラゴンと対峙した時のように集中して魔力を動かして……
「ここだ!」
なんとなくできそうなタイミングを感じたので魔力を一気に手のひらへ流し両手を前へ突き出す。すると地面に魔法陣が現れた。と同時に体からごっそりと魔力をもっていかれる感覚があり、疲労感がどっと押し寄せたため思わず膝をついた。
「大丈夫かい!?」
「魔力をごっそりもっていかれたかと思ったら疲労感が……」
「あぁ、魔力欠乏状態になったのか。自然回復でしか治らないから頑張れ」
「これが召喚術かぁ、なかなか見る機会がないから見れてよかったぜ」
魔力をごっそりもっていかれたあともほんの僅かだが徐々に魔力をとられている。早く召喚されてくれ……
「もう1分近く経ってるんだがいつ召喚できるの?」
「さぁ……普通はすぐできるはずだが。お前と相性のいい相手がいないとか? もしくは相手に拒否されているとか」
「そういう不安を煽るようなことを言うのはやめてくれないかな!?」
「優臣の言うとおりだよ、レオン。きっと大丈夫だって、優臣」
「冗談だって、冗談」
テオはすぐ心配してくれるし安心させてくれるしやっぱり天使だなぁ……
などとやり取りをしていると魔法陣に変化が起こった。魔法陣の光が紅に変わり、中央に何やら模様が現れたのだ。
「これは吸血鬼だな」
「へぇ吸血鬼……ん?」
変化が現れたと思ったら残っていた魔力のほとんどを一気にもっていかれ、魔法陣はさらに輝きを増して辺りは光に包まれた。
「うわっ! 眩しっ!」
「なんだ!?」
すぐに光は収まり目を開けると魔法陣は消えており、魔法陣があった場所の中央には白を基調としたドレスを着ており可愛さと美しさを兼ね備えた一人の女の子がいた。
「初めましてみなさん。私は吸血姫のメノアと申します、どうぞメアとお呼びください。よろしくお願いしますね。それで私を召喚してくださった方はどなたですか?」
さらさらと流れる綺麗で長い銀色の髪と赤く燃えるような瞳が特徴的な、サナちゃんより少し年上ぐらいだろうか、その女の子がスカートの裾をちょこんとつまみ、挨拶をする。そして握手を求めてきた。
「えっと自分です、倉田優臣といいます。よろしくお願いします」
洗練された佇まいとあまりの美少女っぷりに動揺してしまった。だがこれは仕方がないんだ! 初めてこんな美少女を見たらほとんどの人はこうなってしまうはすだ!
「こちらこそよろしくお願いしますね」
握手をしようとメアのところに行こうとした途端、魔力がほぼなくなったからだろう。それによって足がもつれてしまい前へと倒れてしまった。
「あっ」
「きゃっ!」
「いてててて……だいじょう……ん?」
思わずメアを押し倒したため、確認しようと下を見ると手がメアの胸の位置にあった。のだが胸が先程より小さくなっているような?
「なっ、なっ……なにしてくれてんのよーー!」
現在メアに誠心誠意心を込めて謝っているところである、土下座で。どうやら胸が小さくなったのではなく元からあの大きさだったらしい。魔法で大きく見せていたようだが俺が触れたことによって魔法が解けてしまったらしい。
「見ろよ、あの土下座」
「あぁ、すごく綺麗な型だな。今度教えてもらおう」
後ろではレオンと恭也がひそひそと話している。今は黙っててくれないかな!?
「ありえないありえないありえない……」
そしてメアの先程までの完璧ぶりを思わせる雰囲気はなくなっており「ありえない」を連呼していた。……胸部にかけていた幻覚が剥がれると同時に被っていた猫も剥がれたか?
「はぁ……まあいつかはぼろが出てただろうから早いか遅いかの違いよね、こんなすぐにばれるとは思わなかったけど」
「すみませんでした!」
「まぁ召喚してくれたからそれでチャラにしてあげるわ。優臣が私を召喚してくれたのよね?」
「そうだけど」
「そう。じゃあ早速契約しましょ、邪魔が入らないうちに」
「契約? 召喚したら終わりじゃないの?」
「召喚術は相手を呼び寄せ、特別な契約をできるようにする術よ。知らなかったの?」
「こいつは異人だからな」
「あぁなるほど。じゃあ右腕を前に突き出して手を握って。そして魔力を少し流して」
立ち上がり指を絡ませると、ほんの少しだが回復した魔力を流すとメアからも魔力が流れてきた。少し違和感を感じるが暖かくも感じる。すると頭の中に一つの呪文のような言葉が浮かんできた。
「最後に今、頭の中に響いてきた言葉を揃えて言うの。いくわよ」
「「我らは自由を、強さを求める者。求めるもののため、どんな苦難も共に排してみせよう。今ここに新たなる契約を開始せし!」」
そう言った途端お互いの手の甲が光り、魔法陣に描かれていた模様が現れそしてすっと消えた。
「これからよろしくね、優臣」




