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奇襲Ⅲ

 メア、どこだ!

 川に飛び込んだ俺はすぐに下のほうへと泳ぐ……というより流されながらメアを探し始めた。しかし川の中は視界が悪く、さらに荒れているため思うように進めない。

 マズイ、早く見つけないと……! このままだとすぐに俺もメアも体力が尽きてしまう。


(いた!)


 焦る気持ちを抑えつつ、探しているとすぐにメアは見つかった。ただ、意識がないのか川の中をもみくちゃにされながら流されている。


(くそっ)


 魔力で身体強化し、泳いでメアへ近寄る。そしてその腕を掴み


「ぷは!」


 なんとか引っ張り上げてメアと水面へ顔を出した。


(メアっ!)


 やはり意識がないようでぐったりとしている。今すぐにどうにかしたいが川の流れは速く、周りは高い崖のため川から出るのは無理だ。


(間に合ってくれ……!)


 ただそれだけを祈りながら、俺は必死に二人の顔が水面に沈まないように注力し続けた。



           ☆           



「ゲホッ、ゲホッ!」


 どのくらい流されただろうか? なんとか川下に流れ着いた俺は即座にメアを背負って陸に上がった。

 もともと川下に向かって歩いていたため流された時間は短かったが、体感ではそれの何倍もの時間に思えた。


「メアっ!」


 もう一度呼びかけるがやはり意識がない。これは急がないと相当まずいだろう。そう判断した俺は――


(ごめん!)


 心の中でメアに謝りながら人工呼吸を行った。




「よっ……と」


 できるだけメアを揺らさないようにしながら、俺は毛布でくるんだメアを背負って森の中を移動していた。

 人工呼吸の最中、メアが激しく咳き込んで水を吐いたので顔を横に向けさせて気道に入らないようにした。その際にマジックボックスから木を取り出し、たき火を起こして人工呼吸を続けたのだが風が吹いていてなかなか体が温まらなかったのだ。

 そういうわけでメアの呼吸が落ち着いてすぐに、俺は休める場所を探すことにしたのだ。


「くっ、どこかに洞穴は……メア、もう少し頑張ってくれ」


 返事がないのは分かっているが、メアに声をかけながら足早に進んでいく。

 こんなことになると分かっていたら黄の魔法を優先して練習したのに……そうすれば簡単なものではあるが風を通さない休憩場所ぐらいは作れただろう。だがそれを今悔やんでも仕方のないことだが。

 それにしてもそろそろ休まないと俺もきつい――


「グルォオオオ!」

「っ!?」


 木の陰から突然現れたウルファルドが大きな口を開けて飛び掛かって来た。


「くそっ!」


 迎撃ができないと判断した俺はメアを即座にその場におろし、その口に魔力を大量に纏わせた左腕を突っ込んだ。

 腕を噛み千切られることはなかったが鈍い衝撃が走る。だがその痛みを押し殺し、刀を抜いてウルファルドの首を切り落とした。


「ぐっ……」


 左腕に噛みついたまま残っているウルファルドの頭を振り落とすと「ズキンッ」とした痛みが再び走った。噛み千切られなかったが恐らくひびは入ったのだろう。


「早くここから離れないと……!」


 あの時の変異種ならいざ知らず、通常狼型のモンスターは群れで行動するのだ。ということはつまり――


「グルゥアアア!」

「そういうことだよな、くそ!」


 予想通り新たにウルファルドが五頭現れ、俺たちをぐるりと取り囲んだ。とりあえず背後、そしてメアを狙われることを防ぐためになんとか壁を一枚後ろに生成する。と同時に飛び掛かって来たウルファルドを障壁ではじき返……いや、駄目だ! そう判断した俺は魔法で正面の奴を、刀で右側の奴を相手にしたが両方躱されてしまった。


「ちっ」


 疲労と体が冷えている状態であるため、思うように体を動かすことが出来ない。

 障壁を展開すればモンスターからの攻撃を耐えきることができ、こいつらは諦めて撤退するかもしれない。しかし今は一刻を争っている状況なのだ。そんなときに耐久なんてできるわけがない。

 というかそもそも障壁というのは一対複数の状況に弱いのだ。常に攻撃され続ければなかなか解除する機会を掴めず、そして魔力切れになって解除されたところを一気に叩き込まれてしまうのだから。となればなおさら障壁を使うわけにはいかないだろう。


「グォオオオ!」


 今度は左と正面からのを刀を薙ぎ払って、そして大きく跳躍して上から飛び掛かって来たのを魔法を放って対処する。


「ギャン!」


 上の奴は避けることが出来ず命中した。そして刀は左の奴には躱され、正面の奴には――


「バキンッ!」

「えっ……?」


 刀をかみ砕かれてしまった。

 そしてそのまま着地してすぐにしてきた体当たりを両腕に魔力を纏わせ、正面で交差させて防ごうとしたが後ろに大きく弾き飛ばされ、自分で作った壁に思いっきり背中、そして頭をぶつけた。


「うっ……」


 ウルファルドらが近づいてくる足音が聞こえ、早く立ち上がらないといけないのに体にまったく力が入らない。


「メ……ア……」


 隣で毛布の中で小さく震えているメアを見ながら俺の意識はだんだんと遠のいていったのだった。



           ☆           



「おい! まだ優臣たちは見つからないのか!?」


 大会の本部へとやって来た俺は、大会委員へと少し声を荒らげながら尋ねた。


「すみません。どうやら外部から何らかの強い衝撃を受けたみたいで……魔力感知の性能がかなり低下しているのです」

「高性能のはずだろ」

「それはそうなんですが……あっ、見つかりました! すぐに会場に繋げ――ひっ!?」

「どうした!? あいつらは無事なのか!?」


 委員が小さく悲鳴を上げたのを受け、俺は焦って映像を覗きこみ――


「なんだこれは……いったいお前は誰なんだ!?」


 そしてそれを見て俺も思わず声を荒立たせた。

 なぜならそこに映っていたのは確かにあいつの姿ではあったが、一目見ただけで普段とは明らかに違う、まるで別人のような様子の優臣だったのだから。

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