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奇襲Ⅱ

「おはよう」

「うぅ……おはよう」


 朝になりメアを起こしたのだがいつもより眠そうにしている。


「もしかしてよく眠れなかった?」

「? えぇ、そうね……」


 まだ寝ぼけているのだろう、呂律が回っていない。


「だって昨夜は……」


 メアはそこまで言って突然ハッとした表情を浮かべ、そして一気に顔を赤くした。


「昨夜は?」

「あれっ!? 私、今何を喋ってたかしら!?」

「えっ? 眠れなかった理由じゃないの?」

「忘れて!」

「えっ?」

「いいから忘れてちょうだい!」

「分かったよ……」


 なんなんだ急に……あっ、もしかして眠れなかった理由が恥ずかしかったのだろうか? 昨日は大雨の中、外で寝たからそれが恐かったのかな? 別にそんなの顔を赤くするほど恥ずかしいものでもないと思うのに。


「それじゃあ朝食を準備するから待ってて」

「……ありがとう」




 持ち込むことが出来た食材で作った簡単なスープを飲んだ後、俺たちは片づけをして洞窟を出た。外の天気は決して良いとは言えないが、雨が降っていないだけマシだろう。ただ昨日の雨で地面がぬかるんでいるのが少し気になるところだが。

 そんなことを思っていると、どこからか魔術具が飛んできた。この魔術具、かなりの高性能で寝ているときやトイレをしようとするとそれを察知してスー……とどこか離れた場所に飛んでいくのだ。そしてそれが終わってしばらくすると、またどこからか飛んで戻ってくるのだ。なかなかに配慮されていると思う。


「これからどうするの?」

「うん、まずは川を探そうと思うんだ。そこに魔物が水を飲みにやって来ると思うから、その周辺で見つけ次第叩こう」

「それが良いわね、そうしましょう」


 メアからの同意を得て、俺たちは洞窟を後にした。




「はぁぁぁああ!」

「ぶぎぃ!?」

「そこだ!」


 突進してきたイーバーンの足をメアがすれ違いざまに薙ぎ払い、転んだところに刀を首へと振り下ろすと血しぶきが跳ね上がった。気を付けて死んでいることを確認してからすぐにマジックボックスへと収納する。これで無事、また素材の確保である。

 洞窟を出てから時間が経つが、まだ川は見つかっていない。まぁそれでも何体か魔物を討伐できているから問題ない――


「ねぇ、あっちから水の流れる音が聞こえないかしら?」

「本当!? それならそっちに行ってみよう」


 メアが水の流れる音が聞こえたというのでそっちに向かうと確かに川があった。しかしそれは目の前ではなく下に、だったが。

 さらにそれは、昨日の雨の影響で流れが速く濁っている。間違ってここに落ちたら、言うまでもなくかなり危険だ。


「メア、この崖から少し離れたところを沿って――」

「グルゥアアア!」

「なに!?」


 進もう、と言おうとしたところに突然、大きな熊型の魔物が唸り声をあげながら木々の中から飛び出してきた。そして立ち上がり、鋭い爪を振り下ろしての攻撃を


「ふっ!」


 障壁を展開し、それを軽く防ぐ。


「助かったわ!」

「これぐらい任せてよ!」


 攻撃を防いだのを確認するやいなやメアは障壁から飛び出し、俺が渡していた、俺の魔力が込められた魔石で出現させたメティオラで魔物の腕を斬り落とした。


「グゥオオオオ!」


 腹の底に響く鳴き声を魔物が上げ、その声が辺りを木霊した。


「くっ……」


 あまりの声の大きさに思わず耳を塞ぎそうになるのを堪え、俺は魔物にとどめを刺そうと踏み出そうとして――


「あっ!? 優臣!」


 メアに横へ大きく突き飛ばされた。そしてその瞬間


「きゃぁああああ!」


 俺がもといた場所を突風が吹き抜け、それをもろに受けてしまったメアは後ろへと吹き飛ばされ、その姿は谷へと消えていった。


「えっ!?」


 突然のことにフリーズしそうになる頭をフルに回転させ、急いで谷側へと近づく。しかし「ドボンッ」という音が聞こえ、そしてメアの姿を確認することが出来ない。


「メアぁあああ!」


 メアが流されたことを瞬時に悟った俺は、メアの名前を叫びながらすぐに濁流へと飛び込んだのだった



           ☆           



「あれっ? 皆さんすみません! エルピリアの魔術具が原因不明のトラブルを起こしてしまいました。すぐに復旧させますので少しお待ちください!」


 素材集めの競技が始まって二日目、俺はエルピリアでギルマスとしての仕事をしながら参加している三ペアの様子を見ていたのだが、突然優臣たちの映像が途絶えてしまった。

 どうやら何かトラブルがあったようだが……あの高性能の魔術具がトラブルを起こすなんて珍しい。そんなことを考えながら俺は直るのを待っていた。

 しばらくして再び優臣たちの様子が映ったが、俺の目に飛び込んできたのはメアが谷底へと落ちる瞬間だった。そしてそれを見た優臣が何も考えた様子を見せずに、メアを追いかけるように即座に谷へと飛び込んでいった。


「あいつら!」


 その様子を見て思わず椅子から立ち上がり、大きな声を出してしまった。

 そしてどうやら俺と同じ奴がいたようで、廊下から走ってくる音が聞こえドアが勢いよく開いた。


「レオン! 優臣たちが!」


 入って来たのはテオだった。そしてそのすぐ後にテオと一緒に見ていたあいたちも入ってくる。


「分かってる! 状況を確認するために俺は今から王都へ向かう。テオ、ついて来い!」

「分かった!」


 クソッ、映像が途絶えた間にいったい何があったんだ!? 俺はあいつらの無事を祈りながら、急いでギルドを飛び出した。

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