奇襲Ⅰ
「さて、今回の競技は素材集めです! それでは内容を説明します!」
そんな元気な司会の声を俺は観客席ではなく、競技場の中央で聞いていた。ということで俺はレオンの指名で今回の競技に参加している。
なぜ指名されたのかと言えば――
「まず各ギルドには、二人一組を最大三つまで作って参加するようにお伝えしてあると思います」
そう、今回の競技はペアとなって行われるらしいのだ。そういうわけで普段からペアで行動していて連携に慣れている俺たちが三組の内の一組に選ばれたのだ。そしてが残りのペアはエクスとミーナ、恭也とマヤである。
……エクスとミーナのペアは当然だとは思うが、恭也とマヤのペアは大丈夫なのだろうか? あまり戦闘が得意なようには思えないのだが。
「そして競技を行う場所ですが……こちらをご覧ください!」
司会が勢いよく指を指した場所に三種類の地図の映像が映し出される。
「選手の皆さんにはこれからペアでそれぞれの場所へ転移してもらいます。そして現地に着いたら事前に魔報に入れてもらった地図のデータを確認してください。三つの内どれかに赤い点が映っていたらそれが自分のいる場所の地図になります!」
あぁ、気になっていたアレは地図のデータだったのか。さっき魔報に入れた際に確認しようとしたのだが、鍵がかかっていて見ることが出来なかったのだ。
「そこで様々な素材を集めてください! 素材は魔物から草花、はたまた鉱石などなんでもありです。それを私たちギルド管理協会が量や質、そして希少さや種類の多さなどを評価して点数を決定します」
なるほど、それなら無理に戦う必要もなさそうだな。
「また素材を採取できるは結界で区切られており、その範囲内でのみ集めてください。まぁ結界は広範囲に張られているのでそもそも結界にたどり着くことはないと思いますが。さらにこの結界は電波を遮断する効果もあり、魔報による結界外との連絡は一切できなくなっています」
これはおそらく外部と連携するのを防ぐためだろう。競技中の俺たちの様子は各ペアごとに割り当てられた魔術具で撮影され、中央のスクリーンにて流されるらしい。まぁそれだと一つ一つの映像が小さくなってしまうため、その映像とリンクさせることで個人の魔報で見ることが出来るらしいが。つまりそれを利用して外から見ている人たちが、情報を教えることを防止する目的があるのだろう。
他にも不正の防止対策として、マジックボックス内の魔物の素材などは一時ギルド管理協会へと預けることとなっている。そのため現在のマジックボックスの中はほとんど空の状態だ。
「競技の期間は四日です。その期間内に素材を集め、地図上にいくつか表示されいる青い点の場所に向かってください。そこには魔法陣が設置されており、それに乗ればここに戻ってくることが出来るようになっております。ちなみに期間内に戻ってくることが出来なかった場合は失格となり、その場ですぐにここへ戻らされるようになっていますので。そして最後になりますが他のペアへの攻撃は一切禁じられてます。発覚し次第そのペアは失格となりますので気を付けてください。以上で説明を終わります。それでは選手の皆さん、説明が終わって早々ですが行ってらっしゃいませ」
司会が言葉を終えると同時に目の前の景色が突然変わった。どうやらすぐに現地へと転移させられたようである。
「これからどうする?」
「まずは寝泊まりできる場所……洞窟とかを探そう。ほら、空を見て」
「あら、少し天気が悪いわね」
王都のからっとした天気から一転、メアの言うように空は黒い雲で覆われていて今にも雨が降り出しそうな状況だ。そしてそんな空をこちらを監視するように飛んでいる物体があるが、あれが魔術具なのだろう。
「って、もう降り出してきたじゃない! 急いで探すわよ!」
「了解」
☆
ザー……という音が外から聞こえてくる。
なんとか本降りになる前に洞窟を見つけることができたのは良かったのだが外は薄暗く、遠くまで見ることが出来なくなっている。
「あらら……」
「これじゃ探索は難しいね。どうしよっか? それでも周囲の探索だけならできそうだけど」
「慣れない場所の上に視界も悪いからやめておいた方がいいと思うわ」
「そうだね……それなら洞窟を探索しよう。奥に魔物がいないか確認もしたいからね」
「賛成。それじゃあ行くわよ」
「何もなかったわね……」
「あぁ……」
まさか何もないのは予想外だった。三十分もしないうちに洞窟の行き止まりについたのだが、その道中に目ぼしい素材を見つけることは出来なかった。そして外の雨は探索している間にさらに強くなっている。これはもう今日は外に出るのは諦めるしかないだろう。
「雨も酷くなってるし今日はもう休もう」
「そうね」
探索する前に携帯食料を食べていて、腹はそこまで減っていないので晩御飯を食べずに寝ることにした。
ということで外から魔物が入ってこれない程度に魔法で洞窟の入り口で塞ぐ。そしてマジックボックスから毛布を取り出し、それで身体を包み込んだ。
「できた?」
「いいわよ」
そしてメアも寝る準備ができたのを確認し、魔術具のランプの明かりを小さくすると辺りの闇はさらに深まった。
「おやすみ」
「えぇ、おやすみ」
「ねぇ」
「うん?」
子守唄とするにはいささか大きすぎる雨の音を耳にしながら、しばらく目を閉じているとメアが話しかけてきた。
「どうしたの?」
そう聞きつつ振り向けば、ランプの小さな明かりを隔てて彼女もこっちを向いていた。
「ねぇ、優臣は……」
「俺は?」
「いえ、やっぱり何でもないわ」
「えっ、いいの? 真剣な顔してたけど……」
「いいのよ、忘れてちょうだい。寝るのを邪魔してごめんね」
「あ、あぁ」
一体なんだったのだろうか? 真剣な顔をしてたから何か重要なことでも話すのかと思ったんだけど……でも本人がいいと言うならいいか。俺はそう考えて、眠りについた。




