視線
「ねぇ、あれは流石にやりすぎたと僕は思うんだけど」
控室に戻るとテオたちが待っていた。のだが、早々にテオに怒られてしまった。
「だってよ、優臣」
「えっ俺!? 作戦を立てたのはレオンだろ!」
「いやいや、実行したのはお前じゃねぇか」
「なんだと!」
「やんのか?」
この野郎……立案者なら最後まで責任持てよ!
「そう言い争うな。それにだ、吾輩は良かったと思うぞ」
「「今エクス(お前)の意見は聞いてない!」」
「……」
「お姉さんも少し派手すぎだとは思ったわよ?」
「そうかの? 我はおもしろかったが」
「そうそう、俺も――」
「テオ、やりすぎてごめん」
「すまなかった」
「おい、どうして俺が賛同すると謝るんだよ!?」
恭也が同意すると同時にテオに謝ったことについて噛みついてきたが、そんなの当然に決まっている。
「そりゃあお前」
「こういうことに関しては恭也と反対の意見が大体正しいからなぁ」
「よし分かった。今日という今日こそはお前らをボコボコにしてやる」
「やれるもんならやってみろ!」
「また返り討ちにしてやる」
「はいはい、ストップストップ」
事実を言ったことに対してキレた恭也を撃退しようとしたがテオに止められてしまった。
「ごめんねテオ、やりすぎちゃって」
「メアは謝らなくていいよ。どうせあの二人が原因でしょ?」
「「ぐぬぬ」」
「このギルドは嫌でも注目集めるんだからわざわざそんな行動をとる必要はないと僕は思うんだけど。そこのところ、二人はどう思う?」
「「すみません……」」
「ううん、分かってくれたなら良いよ。それじゃあ次のギルドが待ってるだろうし、この部屋を出ようか」
☆
「今年はどんな競技があるっすかね?」
「そうだなぁ……」
外に出た俺たちは、屋台で買った物を広場に座って食べながら大会の競技について予想しあっていた。この大会は出場人数については競技が始まる30分前、競技の内容に至ってはその場で知らされるためその時になってみないと分からないようになっている。
そして中には数日かかる競技などもあるらしいが……あまりそういう競技は引き当てたくな――
「……?」
「ん? どうした急に振り返って?」
「いや、今誰かに見られてた気がするんだけど……」
「そうなのか?」
「たぶん……あっ、もしかしてさっきの試合を見て俺に女の子のファンが――」
「あっはっは、できてないから安心しろ」
「どうして断言できるのさ!?」
「? お前、鏡で自分の顔を見たことないのか?」
「俺がブサイクだって言いたいのか!」
なんて失礼な男なんだ! そもそもブサイクだったら女装が似合うわけ……いや、この話題は止めておこう。俺の中の大切な何かが擦り減ってしまう気がする。
「まぁそんな冗談はさておきだ」
「あっ、冗談だったんだ。よかった……」
「本当に誰かに見られてたのか? もし気になるなら――」
「いや、気のせいだったみたいだ。ごめんごめん」
「そうか? それなら良いんだが」
視線を感じたと言ってもほんの一瞬だったし恐らく俺の勘違いだろう。なんせ今は大会で人が大勢いるのだ。たまたま誰かの視線に入ってしまったということも十分ありえる。
「それより優臣、吾輩たちはこれから他の試合を見に行こうと思っているがお前はどうする?」
「うーん、一緒に行こうかな」
どんな競技が行われるのかや自分の知らない戦い方などいろいろと得るものが多そうだし。
「分かった。それじゃあこれを食ったら移動するぞ」
「ほーい」
その後はいくつかの試合をレオンたちと見て回り、夕方にはクリューンに戻ってまた明日ということになった。
☆
その翌日――
「そして一位は……エルピリアです!」
エクスと恭也が試合に出て一位を獲得した。
競技の内容は用意された大きな氷の塊を削るなどして何かを作り上げるというものだったのだが、これに対して二人はエルピリアの紋章のもととなっている鳥、エフィーリアを完成させた。
エクスが魔物を素材とした糸で大きく削り取り、そして恭也がエリムを使役して細かい作業をしていた。そうして氷の中から現れたエフィーリアは大きな翼を広げており、自由を象徴する鳥というものに恥じないものとなっていた。他にも短い制限時間の中で一枚一枚羽がしっかりと表現されていることなども評価され、審査員から絶賛されていた。
こうしてエルピリアは二試合連続で一位を取り、最高のスタートを決めたのだった。




