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一撃

「さぁついに始まりました今大会! 早速競技の説明を始めようと思います!」


 大会初日、最初の競技が行われる王都の競技場へとやって来た俺たちは、障壁で区切られた競技場内の区画の一つへと転移させられた。大会は年齢ごとに分けられているため、周囲を見れば当然ではあるが俺たちと同じ年頃の選手しかいない。

 さて、話は戻るが最初の競技に出られるのは四人までとなっているため誰が出るか話し合った結果、俺とメア、そしてレオンとリアの四人で出ることとなった。


「今回の競技は至ってシンプル! まずはそれぞれの区画の中央をご覧ください!」


 言われたとおりに見れば「ジジジッ」という音とともにポリゴンがドラゴンを形成していった。


「っ!」

「はーい、落ち着いてください。それはその場からは動きませんよ」


 突然のことに思わず武器を構えたがその必要はなかったようだ。確かに尻尾や羽は動いているもののドラゴンはその場から離れようとはしない。

 つい恥ずかしくなって周りを見渡せば俺と同じような反応をした人もいたようである。うんうん、そうする気持ち、すごく分かるよ。


「今回の競技はそのドラゴンをいかに早く倒せるかというものです! ちなみにそのドラゴンはその場からは動きませんが防御や反撃をしてくるのでそこはお忘れなく! そしてドラゴンを倒すとその場に魔法陣が出現するので、倒したチームからそれで控室に戻ってください! それでは選手の皆さんは時間がくるまで作戦会議をどうぞ!」




「俺に良い考えがある」


 開口一番レオンがそんなことを口にした。正直こいつの良い考えが本当に良いものであるとは思えないが……まぁ聞くだけ聞いてみるか。


「どんなの?」

「せっかく最初の競技で最初のグループという最高のスタートだろ? それなら一発ド派手に花火をあげたくねぇか?」

「えっ嫌だよ、それ絶対に悪目立ちするじゃん」


 やるならレオン一人でやってほし――


「ちなみにだがこの大会で目立つことができればモテる」

「よしぜひ協力させてくれ!」


 目立てばモテるだと? そんなの協力するしかないじゃないか!


「かもしれない」


 ん? 今レオンが小さくボソボソと何かを言った気がするが……まぁそんなことは今の俺には些細なことだ。

 

「そしてこの作戦にはメアの協力も必要なんだが」

「いや」


 自分の名前が出されると、メアはバッサリと切り捨てた。すぐに拒否するなんてそんなに嫌だったのだろうか?


「駄目か?」

「いやよ。もちろんリアも嫌わよね?」

「いえ、私は別に構わないのですが……」


 リアの返事に「あれっ?」という顔をするメア。なにか同意が得られるという確信でもあったのだろうが、その予想は外れてしまったようだ。


「ふーむ、そうか……おい優臣、なんとか説得しろ」

「オーケー。ねぇメア、これはとても大事な作戦なんだ。そう、俺たちの名をあげることで今後大きな依頼とかが入ってくるようになると思うんだ」

「そして成果を上げたら女の子にモテるかもしれないものね」

「ごめんレオン、説得は無理だったわ」

「諦めるの早いな!?」


 そりゃそうだろ。そんな急に言われて説得できるはずないじゃないか。それになにより、こんな俺の下心満載の作戦に無理やり付き合わせる気は(はな)からなかったしな。

 何が嫌なのかは分からないが、メアがこんなゴミを見るような顔をするということは相当嫌なのだろう。


「うーん、それじゃあどうするかな……これが一番手っ取り早かったんだが他の作戦をたて――」

「ちょっと待ってください」


 別の作戦を立てようとしたレオンにリアが待ったをかけた。


「メア」

「なにかしら?」

「少し耳を貸してください」


 メアに顔を近づけなにやら小声で話しているリア。


「ちっ、違うわよ!」

「あら、本当にそうなのですか?」

「……っ~!」


 リアの問いに対し、メアは顔を真っ赤にして声にならない声を上げて後ろを向いてしまった。いったい何を話してるんだ?


「あの、優臣?」

「ん? どうしたの」

「祭りの最終日に何か予定は入ってますか?」

「えっ最終日? それってだいぶ先のことだよね?」


 突然リアに祭りの最終日の予定を聞かれ、俺は思わず困惑した。

 祭りが終わるまで一ヶ月以上あるのだ。そんな先の予定なんてまだ分からない。


「そうなのですけれど。どうなのですか?」

「入ってはないけど……」

「そうですか! それならその日はメアに付き合ってあげてくれませんか?」

「えっなんで?」

「なんででもです。いいですか?」

「う、うん」

「だそうですよ、メア」


 それを聞いてメアはこっちに向きなおしたが、その顔はまだ少し赤いままだ。


「……はぁ、今回だけ付き合ってあげるわよ」

「えっ? いや、いいよ。だってメアすごく嫌そうにして――」

「私がいいっていうのだから問題ないでしょ? それでレオン、作戦は?」

「お、おう。作戦は優臣がメアに魔力を供給してメティオラで貫くという至ってシンプルなものだ。お前らよくやってるしできるだろ?」

「分かったわ」


 本当に作戦に協力してくれるなんて……俺は最終日にいったい何に付き合わされるんだ? 

 あっ、というか待てよ。


「ねぇ、今の作戦だと俺が魔力を供給してるところを思いっきり見せることになるけど良いの?」

「んぁ? あぁ、見せるだけなら問題ないと思うぞ。どうせ見ただけで分かる奴なんているわけないからな。もし気になるなら別の方法にするが?」

「いや、それなら大丈夫だよ」

「さぁ、時間になりましたので選手の皆さんは準備してください!」


 おっと、どうやら開始の時間がきたようだ。


「今からAグループの試合を始めます! それでは……試合開始!」


 試合が始まるとすぐに周囲のチームは一斉に動き出した。剣を構え斬りかかる人、味方にサポートしてもらいつつ魔法を放つ人、その他にも様々な方法でドラゴンに攻撃している。

 それに対し俺たちというと……


「さぁ、選手の皆さんが一斉に攻撃を……いえ、まったく動いていないチームが一つだけあります! あれはどこのギルドなのでしょうか!? えーと……エ、エルピリアです!」


 そう、司会が言うようにまったく動かなかった。いや、この言い方だと少し語弊があるだろう。

 試合開始と同時に俺は魔力を譲渡するためにメアの左手を握り、そしてメアは右手にメティオラを発現させたがそれだけで、俺たちはその場から一歩も動いていない。


「優臣、そろそろ……」

「分かった」


 メアから合図を受け、握っていた手を放す。そしてメアは空いた手に槍を持ち替え――


「おっと? エルピリアがついに動き出しました!」

「それじゃあいくわよ……ふっ」


 息を軽く吐いて大量に魔力が込められた槍をドラゴンへと投擲した。


「……!」


 メアの手から離れた槍はドラゴンの首を勢いよく貫き、首に大きな穴が開いたドラゴンは小さな電子音を残してその場から消滅した。そしてすぐにドラゴンが立っていた場所には転移用の魔法陣が現れた。

 どうやら終わったようだ。


「えっ? ……えっ? い、一撃です! まさかの一撃でドラゴンを倒してしまいました! や、やったのは今年エルピリアに加入したメノア選手と優臣選手です! レオン選手と、そして同じく新たに加入したリアン選手はまったく動くことなくたった二人で最初に倒してしまいました!」


 司会の宣言と同時に「わっ」という歓声が会場から湧き起こった。

 よかった、ちゃんと倒せてたみたいだ……司会の人が困惑した声しか上げないから少し不安になってしまった。


「やったな」

「えぇ」

「だろ?」


 後ろで待機していたレオンが近づいてきて拳を突き出してきたので軽く突き合わせる。


「見てみろ。やつら驚きすぎて攻撃の手が止まってるぞ」

「ん?」


 レオンの言うように周りを見れば、他のチームは驚愕の表情でこちらを見てドラゴンへ攻撃していないため観客席とは打って変わって静かなものだ。


「あれ? ねぇ、これってもしかしてやりすぎた?」

「んなわけねぇだろ。むしろ俺はこれぐらいでいいと思うぞ」

「そう?」

「あぁ、俺が言うんだから間違いない」


 こういうことに関してはそこまで信用できないやつが言っても不安なのだが……まぁ確かにそこまで気にするほどでもないか。


「さて、競技も終わったしここから出てテオたちと合流するか」

「だね」

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