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試行錯誤

「来てくれて助かるよ」

「こんなところに呼び出してどうした?」


 俺にエルピリアの地下にある訓練場に呼び出されたレオンがそう聞いてきた。他にもエクスとテオを呼び出したのだがそれにはある理由があった。それは


「うん、実は――俺に魔法を撃って欲しいんだよね」

「「分かった」」

「うおぉぉおお!? ちょっと待って! 違う! 今すぐにじゃないから!」

「何だ、違うのか?」

「当たり前だろ!? レオンもエクスも言った途端撃ってきてさぁ! もし俺が避けられなかったらどうしてたの!?」

「ちっ、うるせぇやつだな。結界が張ってあるから問題ないだろ」

「そうだけどそういう問題じゃないよね!?」

「ちょっと三人とも落ち着いて、ね? それでどうして優臣はこんなことを始めたの?」

「あぁそれはね……障壁を展開したまま移動できるようになりたいからなんだ」

「「「……」」」


 あ、あれ? どうしてみんな黙ってるのだろうか? もしかして聞こえなかったのかな?


「障壁を――」

「あぁ、二度も言わなくていい。ちゃんと聞こえてるから」

「あっ、そう?」

「それでお前、正気か?」

「何が言いたいのさ」

「障壁を展開したまま移動できないというのは常識だ。もちろんお前もそれを知ってるよな? なんせお前は俺たちの中では断トツで障壁を展開してる回数が多いんだからな」

「もちろん」

「知ってる上で、やるのか?」

「当然。不可能というわけじゃないからね。少しでも可能性があるなら俺はやるさ」

「そうか……」

「あっ、でも別にここのモンスター相手でもできないこともないから断っても――」

「おもしろいじゃねぇか」

「えっ?」

「その話、のった。確かに常識という枠組みに囚われるのはエルピリア(俺たち)らしくねぇよな。それにだ、なんとなくだがお前ならやってくれそうな気がしなくもないからな。お前らはどうする?」

「吾輩も協力しよう」

「僕も。優臣ならきっとできるよ。魔力制御だってあっという間にできるようになったんだから」

「みんな……ありがとう」

「それでどうするんだ?」

「実は今朝、蓮二さんと会って来たんだけど――」




「膨大な魔力と『何か』か……」


 そう、これが蓮二さんが予想した障壁を展開したまま移動できる条件だ。

 昨日見た魔術具だが、あの大きさに対してかなりの魔力が必要らしいのだ。特に移動用の方などその辺の魔術具とは比べものにならないらしい。しかしそれもそうだろう、普段障壁を展開するのにそれなりの魔力を使うのだ。それらを考えるとまずは膨大な魔力が必要ということになる。

 そしてもう一つの条件である『何か』だが……これはまったく見当もつかないらしい。

 この世界で膨大な魔力……というより『魔力覚醒』のスキルをもっている人は『大賢者』といったほんの一握りしかいない。その人たちが俺と同じように考えて実験したが、結果は誰一人成功しなかったらしい。

 試した人数が少ないから断言できないが、そもそも『魔力覚醒』を獲得するのは魔法のエキスパートだ。そんな人たちが誰一人成功しないのだから何かが足りなかった、もしくは何かが多かったというのが蓮二さんの考えだ。

 そんな人たちに対し、俺は魔法の素人であるにもかかわらず『魔力覚醒』を得た、異端の存在だ。そんな俺だからこそ、もしかしたら――と蓮二さんは言ってくれた。

 

「そう、だけどその『何か』が分からないから困ってるんだよ。でも俺が考えても分かるわけないだろ? だから――」

「魔法を撃ちこんでくれ、と」

「そういうことさ」


 分からないのだから体を動かして感覚を掴もうというわけだ。


「そんなことでいいなら任せろ」

「それじゃあ早速始める?」

「うん、頼むよ」



           ☆           



「どあぁー!? 死ぬ、死んじゃう!」

「はははははっ!」

「待って! いったん止めよう!」

「ん~? 音がうるさくて何言ってるのか聞こえねぇなぁ。まさかあの優臣が止めろなんて言うはずがないしなぁ」

「しっかり聞こえてんじゃねぇか、このクソ野郎が!」

「あ? 今俺のことをクソ呼ばわりしたな? 許さん」

「えっちょ待っ……ぎゃぁああああ!」


 なんとか逃げ回っていたが、レオンが放った魔法を背中にもろに受けて床に転げまわる。結界の設定で痛みは本来の半分になっているが、それでも痛いものは痛いのだ。


「大丈夫か?」

「……そんな風に見えるか?」

「おう、軽口が叩けるうちはまだ余裕だな。それにだ、俺の魔法でくたばってたらやってられねぇぞ? ほれ、あいつらを見てみろ」

「え?」


 レオンに言われた方を見るとテオが魔導書を装備していた。そしてさらに、普段は魔法をあまり使わないエクスも杖を装備している。


「俺は魔法の装備を持っていないからこれで済んでるが、あいつらはどうやら全力でやるみたいだな」

「ちょ、ちょっと二人とも?」

「大丈夫だよ、ちゃんと本気出すから」

「そうだな、それじゃあ次は吾輩だな」

「……」


 あぁ、これは失敗したかな……ある程度の痛みがあった方がなにかを掴みやすいかもと思って結界による痛みの軽減を半分に設定したが、もっと減らすべきだったかもしれない。


「さぁ、やるぞ」

「ちっくしょぉおおお!」




「うぅ……身体が……身体が痛い……」


 レオンたちの魔力が減ってきて、いったん休憩しようということになったので俺はその場で仰向けに寝そべった。


「お疲れ」

「生きてるか?」


 レオンたちがポーションを飲みながら近づいてきた。


「なんとか」

「どうだ? 何か掴めたか?」

「全然だね」

「ま、そうだろうな。……お前はポーション飲まなくて大丈夫なのか?」

「ん? あぁ、魔力はまだ余裕があるよ」

「やっぱりお前の魔力量すごいな。あんだけ魔法も撃ってたのに」

「ふっふっふ、だろ?」

「調子にのんな。そういえば恭也は呼ばないのか?」

「恭也かぁ……呼ぼうと思ったけどあいつ戦闘できないだろ?」

「だれが弱いって?」

「うぉ、恭也!? なんでここに!?」


 後ろから声が聞こえたので振り向けば、エリムとともに恭也が立っていた。


「なんとなくだ。それでお前らはなにしてんだ?」

「あぁ、実は――」




「へー、そういうことなら俺も協力するぜ」

「いや、でも」

「気にすんなって! 俺もお前の力になりたいんだよ」

「……」


 これだけ聞けば恭也が仲間思いの良い奴に思えるが、こいつが自分のこと以外にやる気を見せるなんてほぼほぼありえない。確実に裏があるはずだ。


「本音は?」

「こんな楽しそうなことに参加しないわけがないだろ! 面白そうな波動を感じたから来てみて正解だったぜ!」

「やっぱりかよ!」

「なんだバレてたのか。まぁいい、それじゃあ早速始めようか。良い機会だからボコボコにしてやるぜ」

「上等だ! 返り討ちにしてやる!」



           ☆           



「ただいま」

「おかえり……って、辛そうね。どうしたの?」

「あぁ、大丈夫だよ」

「そんな風には見えないけど……まぁ、いいわ。それならもう少しでご飯ができるらしいから、それまで部屋で休んでたら?」

「ありがとう、メア」


 部屋に戻り、ベッドへとダイブする。


「いてて……くそぅ、あいつらめ……」


 俺がほとんど反撃しないからって本気でやりやがって……

 本気で付き合ってくれるのは助かるし嬉しいのだが、それでももう少し抑えてくれてもよかったんじゃないか? おかげで傷はまったくできていないが、身体の節々が痛い。


「それに何も掴めなかったしなぁ」


 もちろんたった一日でなにかが掴めるとは最初から思っていない。しかし先がまったく見えない、まるで迷路を進んでいるようで不安な気持ちにさせられる。はたして俺はこれで本当に移動しながら障壁を展開できるようになるのだろうか……?


「いや、こんなことを思ったらだめだな」


 弱気になったらできるものもできないってもんだ。それに俺がこんな気持ちだと、付き合ってもらってるレオンたちにも悪い。


「優臣、できたらしいわよ」

「分かった、今行くよ」


 メアの知らせに、痛む体を起こしてベッドから降りる。明日からも付き合ってくれると言ってくれたレオンたちのためにも、しっかりと体力を回復しないとな。

 そんな気持ちを胸に部屋を出て、俺はメアたちが待つ一階へと下りた。



           ☆           



 それから二週間、時間があるときは朝から晩まで一人でも特訓を続けたのだが、わずかな進展もなかった。

 それによって不安の気持ちが積もっていく中、ついに一年に一度のお祭り、ファルケド神祈祭が始まったのだった。

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