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称号の反転、祝福と呪詛Ⅱ

 それにしてもまさかサチがここに住んでいる理由が称号を制御できないからだったなんて……ん? ということは、だ。


「もしかして外の地面が一部乾いて割れているのも称号が原因なのかな?」

「はい。意識して称号の効果を押えないと、障壁の範囲内に私のフィールドが収まりきらないらしくて……一応障壁で弱まっているはずなんですけどね。常に効果を抑えることを意識するのは難しいので、私はここに住んでいるのです」


 なるほど……確かにそれを常に意識するのは精神的にも肉体的にもきついだろう。恐らく俺が魔法に使う魔力量を抑えるような感じなのではないだろうか?


「サチ。その魔術具についてなんだけど、蓮二さんが新しいのを開発してくれたみたいなんだよ」

「蓮二さんが?」

「うん、どうやら優臣に手伝ってもらったらしいけど……そうなんでしょ?」

「ん? そんなことあったかなぁ?」


 まったく身に覚えがないのだが。


「えっ? だってデータ収集に協力してもらったって……」

「あぁ、もしかしてあれかな?」


 俺専用の魔石を作ってもらってから、何度かそれのメンテナンスや情報を伝えるために蓮二さんのところへと行っている。その度に地下の訓練場で障壁を展開するようにお願いされたのだ。

 俺としては少なくない報酬が貰えれば良かったので詳しくは聞いていなかったが、恐らく集めたデータを使って新たな障壁を発生させる魔術具を開発したのだろう。


「……とにかくそういうわけだから、よかったら今から試してみてくれないかな?」

「そうですね、せっかくなので使ってみましょう。少し待っててください」


 そう言ってサチは隣の部屋に行き、何かを抱えて戻ってきた。


「それは?」

「これが魔術具なのです。同時に展開すると干渉しあって不具合を起こすのでまずはこちらを止めないといけないのです」


 そして持ってきた魔術具を裏返し、底に挿入されていた魔石をサチが抜くと――


「うっ……!」


 何とも言えない不快感が全身を襲った。なんだこれ!?


「あっ、ごめんなさい!」


 俺たちの異変にすぐさま気付いたサチが謝ると同時にスー……とそれは消えていった。まさか今のが……


「ここ最近は称号(呪詛)を抑え込んでなかったからすっかり忘れてました! あの……大丈夫ですか?」

「問題ないよ」

「吾輩もだ」

「なんとかな」

「俺も初めてで驚いたけど大丈夫だよ」

「良かったです……」


 それを聞いて安堵した表情を見せるサチ。自分が及ぼす影響にかなり敏感になっているようだ。


「それじゃあ新しいのを渡すよ。まずはこれだね」


 テオがマジックボックスから取り出したのは指輪のネックレスだった。どうやらあの小さな指輪の大部分が魔石で作られているようだ。


「持ってみてもいいですか?」

「もちろんだよ」

「それでは……あれっ、思ったより軽いですね?」

「うん、どうやら魔術具と魔石を融合させることに成功したからできたみたいだよ」

「えっ!? それってかなりの発明じゃないですか!」

「でもまだ汎用性はないみたい。今はサチの魔術具にしかその技術が使えないらしいよ」

「そうだったんですか」

「それなら指輪としても使えるし良いでしょ?」

「えぇ、大きさもちょうどいい感じです。それでは使ってみますね」


 指輪に魔力を流したのだろう。指輪が緑色に微かに光り、展開された障壁がサチをぴったりと包み込むように展開された。


「これは……すごいですね」

「うん、僕もここまでとは思わなかったよ。それでどうかな、動いても解除されない?」

「えぇ、歩いても展開されたままですね」

「まじか……」


 障壁というのは一度展開したら、解除するまでその場から動けなくなってしまうというのが弱点だった。しかしそれが解消されたとなったらそれはもう最強……と言うのは過言かもしれないが、かなり強いのではないだろうか?

 ……どうやらあの障壁、俺の障壁のデータがもとになってるみたいだし、今度蓮二さんにそこら辺を含めていろいろと聞いてみようかな?


「それが普段身につける用で、こっちが家に置いて使う用だね」


 そう言ってもう一つ魔術具を出すテオ。ネックレスと比べるとかなり大きいがそれでもさっきサチが停止させた魔術具よりは小さく、見た目も機械っぽさがなくなっている。


「なにからなにまでありがとうございます……!」

「あはは、僕たちは仲間じゃないか。困ってたら助けるのは当たり前だよ」


 テオのこういう積極的に仲間を助けようとするところは素直に凄いと思うと同時に不安にもなる。人のことを気にかけすぎて自分を犠牲にしてなきゃいいんだけど。……なんせうちのギルドは問題児ばかりだからなぁ。

 そう思い、その問題児筆頭の二人を見ればその二人と目があった。ん? なぜこいつらは俺の方を見るんだ?


「それでどうかな? 魔術具の性能も良くなったことだしこっちで暮らしても問題ないと思うんだけど?」


 サチが二つの魔術具を試し終わったので再び聞くテオ。その問いに対しサチは


「いいえ、やっぱり私はここで暮らします」


 少し悩んだ様子を見せながら断った。


「そっか」

「あ、いえ、突然のことだったので決められなくて……もちろんそちらで暮らしたい気持ちもありますけどここで暮らすのに慣れてしまったので。ですから少し時間をください」

「ううん、僕も決断を急がせるような言い方をしてごめんね。もしこっちに引っ越したいと思ったら連絡してね、その時は手伝うから」

「テオ……ありがとうございます」

「気にしないで……それじゃあ良い時間になったし僕たちはそろそろお邪魔するよ」

「えぇ、ぜひまた来てくださいね。もちろん優臣もですよ」



           ☆           



「あれが称号の反転、か……」


 サチと別れた帰り道、俺は小さく呟いた。


「驚いたか?」

「あぁ、まさかあんなことになるなんて」

「称号の反転は、その称号が強力なほど反転した時の影響も凄まじい。優臣も恭也もどうやら強力な称号っぽい気を付けてくれよ。とは言っても気を付けてどうにかなるなら苦労しないんだがな」

「あはは……」


 エクスの言葉に乾いた笑いが零れた。

 俺は称号の恩恵をかなり受けている。『召喚術』に『魔力覚醒』に『食材の見極め』。『食材の見極め』は今はほとんど使うことがないから問題ないとして、もし残りの二つが反転したりなくなったら……俺は、メアはどうなるのだろうか? もしメアと別れることになったら……いや、このことについて考えるのはもうやめよう。

 とにかくこうして、俺はエルピリアのメンバー全員と知り合ったこととなったのだった。

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