予期せぬ別れ
――退屈でおもしろくない、ただ見ているだけなのはもう飽きた。
待っているだけでは の望む楽しみを得られない。
さあ、だから始めよう……
春が過ぎて暖かいと感じる日々が増え、桜がちらほらと咲き始める頃になった。
「じゃあお前ら、またなー」
「おう、またな」
高校を卒業し大学への進学を決めていた俺は友達と遊んでいた。こいつらとはとても気が合っていたのだがそれぞれが別の大学へと進学し、そしてそれを機に全員が会って集まることは難しくなるだろうということで、こうやって暇な時に集まっては遊んでいたのだ。
とはいっても会えなくなるだけであり、連絡はいつでも取ることができるのでこれまでと大して変わらないのだが。
「あー楽しかった。しかし結構遅くまで遊んだなぁ」
そして現在、友達と別れた俺は帰路に就いていた。辺りはすっかり暗くなって、出歩く人もほとんどいない。
今歩いているこの道は街灯が少なく他の道より暗いが、その暗さが空に浮かぶ満月をいっそう綺麗に輝かせているように感じた。
そうしてしばらく歩いていたのだが不意に誰かの視線を感じた。足を止め振り返ったが周りには誰もいなかった。
「気のせいか? 誰かに見られているような気がしたんだけどな……」
ただ誰もいなかったため、気のせいだと思い再び歩きだした。のだが、やはりどうにも視線を感じるため、少し不安になって少し速めに歩くことにした。
だが歩く速度を上げたにもかかわらず、感じる視線は弱まるどころかどんどん強くなっているように思えた。
「くそ、どうなってんだこれ! 絶対誰か見てるだろ!?」
と言葉を漏らしつつ視線から逃がれようと動いていたのだがなかなか逃げ切れない。そこで再び振り返ってみると大きな、まるで獣の爪のような形をして盛り上がっている自分の影があった。
「は? 何だこれ……? 何だこれ!?」
意味が分からなくなった俺はとにかく自分の影から逃れようとして走り出した。
しかし当然ながら自分の影から逃れることはできず、遂に息が切れて必死に動かしていた足を止めてしまった。
振り向いて確認すると、まるで俺が足を止めるのを待っていましたというかのようにゆらゆらと揺れた。その動きに思わず後ずさるとそれは大きな爪で胸を鋭く切り裂いてきた。
「――っ!」
あまりの痛さに声を上げることができず、前のめりに倒れこんでしまった。すると今度は自分の真下の影が揺らめき、次第に影の中へと引きずり込み始めた。
「そうはさせるか……!」と抗おうとしたのだが、傷の痛みと影の引きずり込む力が強くて碌に動くことができず、どんどん影の中へ引きずり込まれてしまった。
(どうしてこんなことになったんだ……?)
意識が遠のいていくなか、得られるはずもない答えを求めていた。
そして全身が影の中に消える頃には、意識を完全に失っていた。
――彼が影の中に消えていった場所には、まるで今までここで何事も起こっていなかったと主張するかのように普段と変わらない風景があった。




