姿見せぬ彼
初めて小説を投稿します。粗末ではありますが暖かい目で読んでいただければ幸いですm(_ _)m
「今日からここが貴方の病室よ、灰原さん。」
そう言って優しそうな看護士さんが私に病室を案内してくれた。仕切りのカーテンを区切りにテーブル付きのベットとタンスが置いてあった。
「何か困った事があったらナースコールで呼んでね。」
「分かりました。」
私はそう返事をして、病室を出ていく看護師さんを見送る。私だけになった病室は静寂に包まれた。私は部屋の窓を開けた。雲一つない空と森が広がっている。
もし他の人がこの景色を見たら、その人の目には青い空と緑の森が広がっているのだろう。でも私は違う。
私の目にはモノクロの空とモノクロの森が広がっている。私は色覚異常の病気を患っていた。色の判別が困難な病気。信号とかの青や赤や黄色の区別がつかないので日常生活に大きく支障をきたした。色覚異常の病気は治った実例が無いらしく、治療法が見つかるまでここで入院することになった。ここは日本でも1番大きな病院で山奥に建っている。
「いつまでここに居なきゃ行けないんだろう・・・」
そう考えると凄く憂鬱になる。
外の景色の興味が失せた私は自分のベットに座った。
ふと、私は目の前のベットを見る。そこには1冊の本が置いてあった。おそらく同室の人の持ち物だろう。題名はオリエント急行殺人事件。有名なミステリー小説だ。私も1回読んだことがある。私は小説を読むのが好きだった。同室の人もそうなのだろうか。私は同室の人がどんな人なのか興味を持った。今はいないのでベットには本が置いてあるだけ。私は1回部屋を出てネームプレートを見た。そこには2つのプレートがある。一つ目には「灰原 優美」と書かれている、私の名前だ。その下に「暁 白狼」と書かれているプレート。名前からして男の子のようだ。会ったら挨拶しなきゃと思いながら私はもう1度部屋に戻った。そしてベットに腰掛けながら私物の本を読みながら、彼が来るのを待つことにした。
2時間ほど経っただろうか。彼は一向に現れなかった。食事の時間になり、看護師さんが夜ご飯を運んできてくれた。私は彼について聞いてみることにした。
「あの・・・暁さんはいつ部屋戻ってきますか?1度挨拶しておきたいんです。」
「そうね・・・彼はいつも夜中に部屋に戻ってくるらしいわ。それまで待ってみたらどうかしら。」
「そうですか、・・・そうしてみます。」
私はそれまで起きていられるかなぁと思いながらあまり美味しくない食事を食べた。夜の11時を過ぎても彼が私の目の前に姿を現すことはなく、私は睡魔に負けて深い眠りについた。
続く