5ロリ
時間がたつにつれ、遠くから聞こえた銃声も怒声も聞こえなくなる。
期待や不安で少しずつではあるが、鼓動が高まる。
「はぁ…はぁ…」
その手にはしっかりとピストルが握られており、いつでも扉を撃つことができる体勢を作っていた。正直、この状態で戦っても無駄なことはわかっていた。だが、戦わずしてなんとやら。出来るだけのことはしたかった。
タッ、タッ、タッ…
静寂の中、かすかに聞こえてくる足音。それは先ほどまで戦場だったところからこちらに向かってくることがわかった。生唾を飲む。汗が流れ、瞬きの回数が多くなる。俺は冷静さを保ち、聞き耳を立てる。
タッ、タッ、タッ…
どうやら一匹だけのようだった。いや、もしかすれば隊長かもしれない。かすかな望みを抱き、その時を待つ。
扉の前で足音が止まる。がちゃがちゃと扉の鍵が引っかかる音がする。
「まさか…ロリ…」
ピストルを構えなおす。がちゃがちゃという音は聞こえなくなり、すぐにバキッ!っという破壊音が聞こえた。扉の鍵を壊したらしい。そして扉がゆっくりと開き始める。
どくんっ
扉の前には誰もいなかった。開いたのならもう関係ない。俺は声をかけることにした。
「お、おい!誰だ!!」
………
少しの間静寂に包まれるが、扉の横から頭が出てきた。
「…隊長?」
それは隊長だった。だが何かおかしい。頭の位置が低すぎる。それに目がうつろだった。
「た、隊長、どうしたんですk」
「あはははは!!!」
突然笑い声が聞こえてくる。それと同時に隊長の頭は上下に揺れる。そしてそれはドアの横に隠れたと思ったら、一瞬のうちに反対側に飛んでいった。
「な…」
「おー!飛んだ飛んだ!!」
遠くで物が勢いよくぶつかる音が聞こえてくる。そして部屋の中になにかが入ってきた。
「やっほー。じゃあ君も、死のうか…」
入ってきたのはロリ。型は「野球型」であった。黒いキャップをかぶり、白いユニフォームを纏い、手には茶色いバッドが握られていた。だが、それらすべてに返り血を浴びており、ほとんどを赤黒い色が占めていた。
ロリはバッドを振りかぶると、俺に向かって飛んできた。俺はすかさずピストルを撃ち込むが、それらはすべて外れる。
ロリは振りかぶったバッドを俺の横にある壁にたたきつける。壁は見事に吹き飛び、大きな風穴を開ける。
そしてそのままロリは俺の直ぐ目の前に降り立つ。
不敵な笑みを浮かべるロリを見て、体が震える。歯がカチカチと鳴り、頭がくらくらする。
「おいおい、君もロリコンだろう?少しは戦う意思を見せるべきではないのかな?」
「はぁはぁはぁ」
返答が出来ない。こいつは遊ばない。すぐに俺を殺すだろうと察した。
「ん?小便でてんぞ。まぁいいか。これから死ぬんだし」
「はぁはぁはぁ」
ロリは再びバットを振りかぶる。その動きには一切の迷いがない。頭を狙っているようだった。
「んー、この体勢じゃゴルフみたいになっちまうな。おい、ちょっと起きろ」
「あがっ!」
ロリは俺の髪をつかみ、無理やり状態を立たせる。
「こんくらいかな。じゃあ、これを…よっ!」
「ぐが!!」
ロリは俺の頭を後ろの壁にめり込ませる。かろうじて首は出ている状態か。体はえびぞりしていた。
「よしよし、これで壁ごと頭を吹き飛ばせばいいわけだ。おい、遺言はあるか?」
「………」
体は痙攣を起こすのみ。気絶をしていた。
「そうか、無いならさっさと殺してやるよ」
ロリは構えなおす。一本足打法。きれいなフォームを作っていた。
「じゃあ…な!!」
ロリは振りかぶる。空気を切り裂くような音を奏でる。そしてバッドには空気が纏っていた。そのバッドが
壁に当たりそうになった時、鈍い音が鳴る。
ゴッ!!
何かがロリの顔にぶつかった。
「ぐはっ!!」
ロリは先ほどあけた風穴に向かって吹き飛ぶ。そしてベッドにはなにかが降り立った。
「もう…大丈夫だから」
美しく舞うピンクの髪。それは、伊集院鏡花の姿であった…