3-4 テンプレ君教会を訪れる
今朝も陽が昇るとともに目が覚める、My sonは相変わらず痛いぐらいにRisingしている。
はあ、ソーニャさんに会いたい。彼女は現在、日課の自家発電夜のオカズランキングトップをブッチ切りでひた走っている。まあそんな不埒な思い抜きにしても彼女に対する想いは時間とともに膨らんでいる。本当に不思議な娘だった、たった三度しか会った事がないはずなのに。自分の思った事がスルッと口から出せた事もあんな心の充足感を得られたのも前の世界での人生を含めて初めての経験だった。あの時レイモンさんの申し出を断ったのは失敗だったか……いや違う。あそこで公私を混同してしまって良かったわけがない、俺自身のアイデンティティにも関わることだ。あそこでそれを良しとしてしまっていたら心の弱い俺の事だ、なし崩し的に何でもOKになってしまう。そうなったらあとはあっと言う間に堕ちるところまで堕ちてオシマイだ、あの判断自体決して間違っていなかった。そうなるとあんな話しのもちかけ方をしたレイモンさんへと恨みがましい思いが沸いてくる……イカンイカンまた最低な思考に陥ってる。やはり精神的に相当追い込まれてるな、はやくなんとかしないと。
俺は気持ちを切り替える為に素振りでもしようと身支度を整え裏庭へと出る。有り余るリビドーと乱れに乱れた精神安定の為に始めた素振りももはや日課となりつつある。そんな簡単にどうにかなるものではないが、少なくとも黙々と木刀を振っている間だけは無心になれたからだ。
「だいぶさまになってきたな。」
一心不乱に素振りをしていると不意に声をかけらる、声のする方へ目をやるとガストンさんが立っていた。
「わりい、邪魔しちまったみたいだな。」
「いや、かまいませんよ。そろそろ終わろうと思っていましたから。」
「そうか、なら良かった。しかし始めた頃は何だかチグハグだったのが随分鋭くなってきてる、下手な冒険者じゃあとてもかなわねえくらいにな。構えも太刀筋も独特だが理にかなってるしどこかで修行してたのか?」
「ええ、10年以上前に少しだけ。木刀を振ったのもそれ以来です。ただあくまで訓練のみですから実践をつんでる冒険者にはとてもかないませんよ。」
「確かにお前さんの振りは切ったり打ち倒すんじゃなく当てるための振りだもんな。まあそんだけやれるんなら少し実践に出りゃあ感覚はすぐにつかめるだろうけどよ。」
「買いかぶりすぎですよ、私には無理です。」
「ふっ、そういうことにしておくよ。間もなく飯ができる、少ししたら食堂に来いよ。」
ガストンさんはそう言うと食堂へと戻って行った。
なるほど、実践をつんだ人間が剣道を見るとああいう感想になるんだな。高段者はどうなのか分からないが確かに俺がやっていた剣道は決められた場所をどれだけ速く上手く打てるかというものだった。明日からはもう少し実践を意識して斬るように振ってみるか。
素振りを終え少し気持ちがさっぱりした為汗を始末し俺も食堂へとむかった。
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食堂へ入ると他のみんなもちょうど席につくところだった。あいさつを交わし俺も席について朝食を食べ始める。今日のメニューはトマトのリゾットに腸詰めとジャーマンポテトだ、言うまでもなく味は抜群だ。
朝食を終え朝のミーティングを行う。まあ昨日は工房見学ということもあってみんなからは取り立てて報告することはないようだった。その為、俺の今日の予定を伝える。ちなみにその予定の内訳だが、午前中教会へ行って魔素との親和性を調べてみるつもりだ。午後はバンジャマンさんが工房へ奴隷を連れてくるし夜はレイモンさんとエクレールで打ち合わせだ。日中エディは俺に付き合わせよう、常識がイマイチな俺一人で教会に行くのは不安だ。それに奴隷の一人は今後エディのおともをさせようと思っている、ならば買う前に合わせたほうが間違いないだろう。頼みの綱である奴隷の娘の治療もしてやらなきゃな、今日もなんだか予定が詰まっていて忙しくなりそうだ。その後それぞれに今日の指示を出してミーティングを終了する。
ミーティングを終えるとデボラはデュルケーム商会のメンバーと冒険者ギルドへと向かいセシールは宿の業務の手伝いへと戻っていく。俺はエディを伴い教会を覗きにでかけた。
教会は居住区と商業区の境目にありなかなか立派な建物だ、入ってみると朝の礼拝が終わり掃除をしているところだった。
「何か御用ですか?」
美人なシスターはいないかななんてキョロキョロ見回しているといかにも位の高そうな服を着た爺さんが声をかけてきた。
「突然お邪魔して申し訳ありません、実は私教会もないような田舎から出てきましてぜひ洗礼を受けたいと思いお邪魔いたしました。」
「教会がない田舎? そんなものあったかな。まあよろしい、洗礼を授けましょう。」
そう言いながら左手を差し出してきた。んっ? なんだ? エディの顔を見ると苦笑いをしている。そしておもむろに懐から金貨を3枚出し布に包みとその左手にのせた。爺さんは満面の笑みを浮かべ包みを懐にしまうと祭壇へと向かっていった。これはあれか、布施を寄越せという催促か。随分と俗物なジジイだ、後でエディに返さないと。
ジジイは何やら準備をした後、俺たちに祭壇の前にひざまずくように言ってきた。言われるがままひざまずくと早速洗礼が始まった。聖書を朗読しながらパシャパシャと水をかけられたあとジジイの額にあてたパンを渡され食えとのこと、何が悲しくてそんなばっちいパンを食わにゃならんのだ。嫌そうな顔が出るのをグッと堪えパンを食うとまたも聖書の朗読をはじめ最後に聖銀製の四角いペンダントを頭上に掲げ光らせて洗礼は終わった。時間にして訳15分程度か? あっけないもんだ、それで30Zとは随分ボロい商売だな。
そんなことを考えているとジジイは
「では」
とか言ってそのまま引っ込んでいこうとする、オイオイ、俺の本来の目的が済んでないぞ。
「あのっ、すいません。洗礼を受けたら魔素との親和性を調べると伺っていたのですが?」
「おまえさん親和性も調べたことがなかったのか? 一体どんなところからやってきたのやら。」
あからさまに面倒くさそうな顔をしながら魔素を調べる準備を始める。
しかしこのジジイ、鑑定で見ると司教なんて大層な役職についてるお偉いさんなはずだが感情を隠すということをどこかに置いて来たらしい。性根が腐ってるのかあえてそうしてるのかイマイチはかりかねる。たまにいるんだよなこうゆう人、まあ下手に何考えてるのか分からない奴よりはずっといい。そうこうしてるうちに準備が整ったようで早速親和性を調べることになった。
方法は至極簡単、魔石が埋め込まれている石版の魔石部分に血を一滴垂らすだけ。早速の用意してくれていた針で指先を刺し血を垂らす。すると石版が眩いばかりの光をはなち輝き出す……などという事がある訳もなく全くの無反応だった。やっぱりねー、どうせそんなこったろうと思ったよ。親和性なんてないって初めから分かってました。いいし、別にいいし。俺には神の手あるから十分チートだし……ふう、テンプレってなんだっけ。一人ひねくれていると険しい顔をしたジジイと驚愕の表情を浮かべるエディの顔が目にはいった。
「お主一体何者だ。」
はっ? 何やらジジイが訳のわからない事を言い出した。なんか不味かったのか? エディの方を見る。
「ユーゴ兄さん……普通この石版に血を垂らしたら必ず何らかの反応をするはずなんだよ、それが人族のものなら。」
「そのとおりだ、なりは完全な人族なのに石版が全く反応しないという事はお主化けているのか? 目的は一体なんだ?」
あちゃー、そういうことか。俺は人は人だが人族ではなく異世界人だ、これどうやって誤魔化そうか。




