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2-22 テンプレ君大立ち回り

打合せを終えムーランを出た俺はふと考える、時間的にはまだ日付も変わっていないくらいなはずだ。ムーランもまだ営業していた。そして今日俺は相当頑張った、大口の商談も纏め50,000Zもの契約を結んだし計画書のインセンティブで成功報酬が20%も増えた。これはご褒美が必要なはずだ、頑張ったらその分ご褒美があって然るべきでしょうが!

それに今後はコクーンで打合せを行う事になってしまった。さすがにソーニャ嬢がお相手とはいえ我を忘れて何て事はもう絶対に無理だ、ならば今夜はラストチャンス。絶対に行くしかない…いや、行かなければならない!

という事でちょっとコクーンを覗いて見よう。


大義名分を手に入れた俺は意気揚々とコクーンへ向かう。


コクーンに着くといつもの受付がいつもの挨拶をしてくる、すかさずソーニャ嬢を指名すると無情な言葉が返ってくる。


「ソーニャ嬢は本日すでにお客様についておりまして……」


なんだと……まあそうだよな、こんな時間だし仕方ない。かといって別の嬢をという気にはとてもなれない、今日は諦めて撤収するしかないか。


そう思い受付へまた来る旨を伝え帰ろうとしたその時女性の叫び声が響く、何事かと思い振り返って待合室の方を見ると全身を殴打され酷い怪我をおったソーニャ嬢が裸のまま逃げ出してきた。


「たっ、助けて……誰かっ、助けて!」


それを上半身裸の筋肉質な男が怒鳴りながら追ってきた。


「このクズがっ、高貴なこの俺様を下賎な亜人奴隷の不浄なメンスで汚れさせるとは断じて許せん! その罪その命で持って贖え。」


それを見た瞬間頭の中でプツンと何かが切れた。スーパーサイヤ人にはなれちゃうんじゃないかってぐらいキレましたよ。人間、怒りの沸点が振り切れると激情に駆られるわけではなく変に心が凪ぐんだな。


俺は身体中に魔力を全開で循環させながらソーニャ嬢へと近寄り上級ポーションをこれでもかっていうぐらい使ったのち抱きかかえる、可哀想にこんなに震えて。


「ソーニャさん、もう大丈夫です。髪の毛一本とて触れさせません。」


俺のその言葉にソーニャ嬢は気を取り戻したのかギュと抱きついてくる。


「……ユーゴさん、ウチ……」


「落ち着くまで無理に喋らなくても良いんです。もう大丈夫ですから。」


俺もソーニャ嬢をギュと抱きしめてあげる。


「なんだ貴様は!そいつを渡せ!」


チッ、ゴリラが騒いでうるさいな。


「ソーニャさん、ちょっとうるさい害獣を駆除してきます。申し訳ないんですが少し待っていてください。」


俺はソーニャ嬢にそう囁くと床へそっと下ろしバスタオルを取り出し肩から掛けてあげる。そしてゴリラの方へ振り向くとゴリラは拳を振り上げ殴りかかってくるところだった。俺はすかさず強めの結界を張りその拳を悠然と受け止める、すると結界を殴った拳からグシャリと鈍い音が響いた。


「ギャー! なんだ!? 何が起こったんだ!?」


ゴリラは何が起こったのか理解出来ないまま絶叫し砕けた拳を抱え転げ回る、全くうるさくてかなわない。俺は転げ回るゴリラの腹へ怒りにまかせてロベカルもビックリの全力サッカーボールキックを放つ、するとゴリラは重力を無視する様に水平に吹っ飛びそのまま壁へと激突した。吐瀉物をまき散らしながらなおも転げ回るゴリラへとどめのストンピングを見舞おうとしたところで何者かに両脇抱えて止められる。誰だ? 害獣駆除の邪魔をしないでほしい。両脇に手を入れる何者かを力任せに振り回して引き剥がすと今度は別の男に腰へタックルされよろけるもなんとか倒れずに踏みとどまる。そのままそいつの腰を上から抱えて待ちあげると投げっぱなしパワーボムよろしくで先程引き剥がした男へ向けてぶん投げる。


これで邪魔者はいなくなったな、静かに歩みを進めゴリラの頭を掴んで引き起こすと握りつぶす様に力を込める。すると初めは暴れていたゴリラは泡を吹いて悶絶した、さすがゴリラだ簡単には潰れたりはしないもんだ。そのまま掴んだ頭を床に叩きつけようとしたその時、ソーニャ嬢が俺に抱きつく。


「ユーゴさん、もうええ。もう十分や! それ以上やったら死んでまう。」


その言葉にハッとした俺は握り込んだ手を開く、するとゴリラは糸の切れた人形の様に足元にドサッと崩れ落ちた。


はあぁ、やっちまった。もう完全にキレてそこまで頭が回ってなかった。もとの世界の俺には人を殴り殺すなんて力ありはしなかったが、魔力を循環させた今の自分の力はまだ把握できてないのだからどうなるかなんてわからない。これ以上やったら本当に人を殺してしまったかもしれない。


人を殺してしまうところだった、その恐怖から冷静さを取り戻しあらためて辺りを見回すといつの間にか集まった多くの人たちが顔を引きつらせながらこちらを見ている。

その中から一人の男が近づいてくると俺にしか聞こえないよう小さな声で話しかけてくる。


「ユーゴさん、この場は取り敢えず私どもに任せ奥へどうぞ。」





その男に促されるまま奥へと引っ込むと質素な執務室へと通される。


「ご挨拶が遅れました、私この店を預からせていただいておりますフランツ=ルコックと申します。この度は大変ご迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありませんでした。また、当店の者を救っていただきお礼申し上げます。」


「……いえ、こちらこそカッとなって暴力沙汰を起こしてしまい申し訳ありませんでした。」


「まあ、相手は貴族崩れの荒くれでしょうからそんなに大事にはならないでしょう。それにユーゴさんが手を出さずとも当店のバウンサーが取り押さえていたでしょうからそんなにお気になさらずとも大丈夫ですよ。ただ、そのバウンサーが二人掛かりであなたを止める事すらできないというのはちょっと考えなければいけませんがね。しかしオーナーのレイモンからは頭のキレる優男と伺っておりましたが存外荒事もいけるようで。」


「いえいえ、荒事なんてとんでもありません。今回はちょっと頭に血が上ってしまったものですから。途中、止めに入って下さったのはお店の方だったのですね。本当に申し訳ありませんでした、お怪我などされてらっしゃいませんか?」


「彼らは大丈夫です、それが仕事ですから。むしろ今回はその職務を全う出来なかったゆえの騒ぎですのでお詫びするのはこちらのほうです。まあそんな事はいいとしてこれからのことなんですが、今回の事はこちらでうまく処理しておきます。ただちょっとした騒ぎになってしまいましたので申し訳ありませんがユーゴさんも当面の間来店は控えていただけると助かります。」


「そうですね、それは致し方ないです。ですが困りました、先ほどレイモンさんとの打ち合わせで新店舗の打ち合わせを今後こちらで行おうと話してきたばかりだったのです。」


「えっ? そうなんですか? それは参りましたね。ちょっとレイモンへこちらに来るよう伝手を出しますのでしばしお待ちいただけますか?」


「はい、お手数おかけします。」


俺はそのまま執務室にてレイモンさんの到着を待つ。


一時の感情に任せて仕事にも影響を出してしまうなんて、あってはならない大失態だ。しかしあんな風に暴力を振るわれた女性を目の当たりにしてしまったら……今後も冷静でいられるかなんてちょっと自信がない、さらにそれが仕事とはいえ身体を重ね情を交わした相手ならなおさらだ。


じゃあどうすれば良かったのか、今後どうすれば良いのか。


今回はあまりに突然の事で完全に怒りに我を忘れてしまったのが問題だった、今後はこういったケースをあらかじめ想定し心構えを持っておくべきなのだ。元の世界は治安が良かったためこんな事起こるなんて万に一つもなかった、だが今いる場所はロータスだ。文明的にまだまだ力がものをいう部分があるし治安だってよくない、身分差や種族差別もあるのだからこういった事が起こりうるという想定をしておく事が大事だな。


一人反省しているとレイモンさんが到着したようだ。


「ユーゴさん、大変でしたね。お体は大丈夫ですか?」


「ええ、私は大丈夫です。むしろやり過ぎてしまったので相手の方が心配なのですが。」


「相手はちょっと危なかったですがポーションである程度回復してますから大丈夫です。」


「そうですか、しかしこの度は大変申し訳ありませんでした。私事でプロジェクトの計画にまで影響を及ぼしてしまいました。」


「いえいえ、こちら側の不手際もあっての事です。そんなに頭を下げないでください。ですが今回の事はともかく今後の事ですね、打ち合わせ先をどうするか考えなければなりません。できれば内々で済ませたかったのですがこうなっては仕方ありませんのでエクロールという料理店を使いましょう。ここはもともとウチで料理人をやっていたものが開いた店で個室もあります。」


ん? エクロール? なんか聞き覚えが……ああ、以前エディたち初めて会った時に入った店だ。レイモンさんの知り合いだったのか。


「わかりました、そこであれば以前利用した事がありますので場所は分かります。では今後、打ち合わせはそこで行うという事でよろしくお願いします。連絡手段は石鹸などの納品時に手紙を用いて行いましょう。」


そう言って紙とボールペンをレイモンさんへ使い方を渡し使い方を説明する。


「おおっ、これはあの計画書に使われていた紙ですね。実はこの紙も気になっていたんですよ。それにこのペンは凄いですね、これなら仕事が相当捗る。ユーゴさん、これも販売していただけませんか?」


「ええ、構いませんよ。ただそんなにたくさん作れるわけではないの一般販売をするつもりはありません。ですのであまりに大っぴらにはしないでくださいね。」


「分かりました、お約束します。」


そうして紙とペンの追加契約を結びコクーンを後にする。


はあ、ソーニャ嬢に別れが出来なかったな。大丈夫だったんだろうか、最後に一目会いたかったな。しかも元の世界を含めて初めての出禁、ヘコむわあ。これから俺はどうやってリビドーの爆発……いや精神の安定を計れば良いんだ。新規開拓するか? いや、こんだけの騒ぎを起こしたんだ。しばらく歓楽街には近寄らない方がいいだろう。じゃあ奴隷買っちゃう? おいおい、だからそれはつい先日痛い目にあったばっかりだろうが。


あーもう、本当にどうすりゃいいんだよ!!

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