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2-20 テンプレ君とゲラール商会その1

ふと気付けば陽が暮れはじめている、少し早いが主人に仕事で出かけなければならない旨を伝え食事を頼む。食べ終えると計画書を鞄につめ歓楽街へ向かう、到着する頃はちょうど陽が沈んで夜の街が活気付き始める頃合いだった。宵の口の歓楽街の雰囲気は相変わらずで昂ぶる気持ちをグッとこらえムーランへと歩みを進める。


「いらっしゃいませお客様、ようこそおいでくださいました。」


ムーランへ入るといかにも執事といった男性が仰々しく出迎えてくれた。そのまま奥のホールへと案内されるとそこには煌びやかな衣装を纏った絶世の美女達がズラリと並んでいた、こっそり鑑定で見てみると皆高い学と教養を有しておりしかも全員奴隷では無い。

建物といい女性のクオリティといい貴族気分王様気分の看板に偽り無しだと納得させられた。


「お客様、本日はどの者にお相手をさせればよろしいでしょうか?」


「ああ、案内までさせて申し訳ないのですが私は客では無いのです。本日オーナーと約束があってお伺いさせていただきました。」


「オーナー…ですか?ただいま確認して参りますので暫しお待ち下さい。」


執事風の男性は怪訝な顔を浮かべながらそう言うと、確認の為奥へと入っていった。絶世の美女達の中に一人取り残された俺は場違いな場所に紛れ込んだ仔犬の様な心細さを感じながら待っていると奥からレイモンさん自ら迎えにやって来た。


「わさわさ起こしいただき申し訳ありませんでした。首を長くして心待ちにしておりましたよ、早速私の部屋へと行きましょう。」


レイモンさんに連れられ絢爛豪華な空間から以前も伺った質素で実務的な執務室へと場所を移す、こちらの方が落ち着いてしまう自分の貧乏性が悲しくなってくる。


「色々と報告が入って来ておりますがこの1週間大分精力的に活動されていた様ですね。私どものお店もご利用いただいた様でありがとうございました、お気に召して頂いた者もいらっしゃる様で。」


上手いこと目立た無い様に変装してたつもりがバレバレだったみたい様だ、しかし色々と報告ね。


俺が機嫌を損ねた事とその理由を正確に察したレイモンさんは弁明する。


「お気を悪くさせて申し訳ない、あくまで方々からの情報集めの際に紛れていた情報を基にしたのであって行動監視をしていたわけでは無いのです。」


「そうですか、まあそう言うことにしておきましょう。ただ、お店にお伺いさせていただいたのはゲラール商会さんの通常サービスを調査する為であってあまり穿った見方をされるのは心外ですな。」


2度も行っといて苦しい言い訳だが恥ずかしいのでなんとか誤魔化したい。


「その辺は心得ておりますのでご安心ください、わたしもユーゴさんなら恐らくそうするであろうなと考えておりましたし。ですがその際にお気に召して頂いた者がいた事は喜ばしい限りです、何でしたらその者も今回の報酬へと含め」


「お断りいたします、公私を混同する事などありえません。」


「そっ、そうですな。私とした事が大変申し訳ない。」


「いえ、ご理解頂ければ問題ありませんので。」


確かにソーニャ嬢はとても魅力的な女性だしチーレムメイト候補として身受けできるものならそうしてもいいと思ってる、だがそれとこれとは話が違う。今しているのはビジネスの話である、仕事の対価を俺個人の願望を満たす為のものにしていいわけが無い。


「それでは早速ですが今回ご提案させていただく計画書です。元々のご依頼はお店のプロデュースの計画書という事でしたが、調査の結果それだけでは店の成功はおろかオープンまで漕ぎ着ける事が困難であると判断しました。その為、誠に勝手ながらその前段階の人材の確保方法から建物を建築するまでのプロセスも計画書へと加えさせていただきました。お目通しお願いいたします。」


「開店させる事が困難…ですか、それでは拝見させていただきます。」


レイモンさんは計画書にじっくりと目を通していく。読み進めるにつれて表情は険しくなっていくが次第にその険しさは薄れていき最後にはニヤリとほくそ笑む。


「計画書拝見させていただきました、正直想像をはるかに超える素晴らしい内容だ。現状の調査からそれを受けた上での計画と実行する為の根拠、どんな店にするかだけでは無くどのようにして店を成功させるかという計画がよく練られている。しかも現状の改善まで提案されているとあればもはや脱帽です、この計画書だけでも1,000Zの価値はある。」


「お気に召していただいたなら頑張った甲斐があったというものです。」


「しかし妨害者が商業ギルドの副支部長とエドモン=デュフォンとは、これは本当なのですか?」


「この二人の名で生産ギルドへと協力依頼があった以上間違い無いでしょう。商業ギルドの副支部長はともかくもう一人もご存知で?」


「ええ、ハルトムートの商人ならみんな知っていますよ。この街の商人は非常に保守的です。新規参入による成り上がりや独占的な商売での成功が非常に難しい、簡単に言ってしまえば出る杭は打たれるといった風習がまだ根強く残っています。そしてその杭を打つのはいつでもエドモン=デュフォンなのです。たんなる都市伝説の類いと思っていましたが、まさか自分がそのターゲットとなるとは。」


「確かに今回のやり方は非常に巧妙で狡猾なものですね。計画を割高ながらも進めさせて、引くに引けなくなったところで一気に潰しをかけるというかなりエグいやり方だ。そのエドモンド=デュフォンですか?富の配分者を気取っているようですが気にいりませんね、所詮は状況を理解できない老害だ。現にハルムートの宿屋業界は大手に乗っ取られてしまったじゃないですか、それなのになんの手も打てていない。各業種の大手は急成長中のこの街へと参入する機会を虎視眈々と狙っている筈です。もはや足の引っ張り合いをやっている場合では無いところまで来ている、そんな状況にも関わらずやっている事は既得権益を守る為の弱い者イジメだけとは。すでに生産ギルドは自浄作用を働かせ既に生まれ変わり貪欲に新しい技術を取り込もうと必死になっています。今後その生産ギルドとの強い結びつきが切れてしまった商業区が、餌食となるのは目に見えている。そしてレイモンさん、私は次に狙われるのは正にこの業界だと踏んでいます。だからこそ今のうちに大手と戦えるだけのノウハウや武器を準備し強い資金力を得ておかなければならないのです。」


そう、俺は元の世界でこの様なケースを腐るほど見てきている。大手企業の参入により潰れていく地元の中小企業や死んでゆく商店街に町工場。相当上手くやらなければあっという間に食い尽くされる。


「そうです、その通りなのです。このタイミングで新店舗の計画に踏み切ったのはその危機感があったからこそなのです。ただ、お恥ずかしい話しですが私にはそこまで明確な分析ができてはいませんでした。この計画書を拝見して、その危機感の原因が明確に分かり目からウロコが落ちる思いです。それにしてもここに記されている人材獲得方法や建物の建築は本当に可能なのですか?」


「その為の手は既に打ってありますのでご心配なく。実は私、今度工房を設ける事になりましたので資材の確保はギルドから直接行えます。また、建築方法もその工房建築をテストケースとしてスタートさせております。人材確保はその為のプロと業務提携を結び、既に潜りこむ為の下準備をさせています。成功の確約はできかねますがその為の準備は着々と進めておりますので。」


「工房を設ける!?」


「ええ、まあ。ちょっと生産ギルドと取引する事になりまして、それに伴い工房が必要になったものですから。まあそのおかげで生産ギルド側の情報が入り妨害者が誰なのか判明したわけですけど。」


「それに協力会社まで…」


「そちらは他所の街から流れてきた奴隷商の新規事業立ち上げを請けおう事になりましたのものですからその縁もあって。」


「よくもまあこの短期間でそこまでの事を、ユーゴさんに仕事をお願いして良かったと心から思いますよ。」


「まあ運が良かっただけですから。それよりまだ計画書の内容の半分も進んでいなません、打合せを進めましょう。」


「そうですね、続いて店のコンセプトは以前お話しいただいた『手が届きそうな理想の家庭』と言う事ですね。」


「はい、それもリアリティには徹底的に拘りたいですね。ですので働いていただく女性の容姿は、お姫様の様な絶世の美女ではなく街の店の看板娘ぐらいが望ましいかと。また、学や教養なども一般的なレベルがあれば十分でしょう。ただ何より重要なのはその性格です、優しく穏やかな娘か明るく元気な娘などが理想ですね。そこは協力者の腕の見せ所です。」


「その協力者の方の能力は本当に大丈夫なのですか?」


「大丈夫です、そういった事には滅法向いている優れた人物ですよ。いずれ折をみてご紹介いたしますので。」


「そうですか、まあわかりました。人材はそんなところですかね。それで次のシステムですが.初めての方にはサービスの前にアンケート?を記入してもらうとありますが?」


「はい、奥さんになんと呼ばれたいかや職業などを記入していただきます。まあ本当の事を書く必要はなくあくまでもシチュエーションを設定して頂くのです。そしてその設定を基にサービスを提供します。他にも趣味嗜好なども知っておきたいですね、そうした情報を紐付けた会員カードを発行します。次回来店時にはそのカードを提示していただき、その情報を基にサービスの提供ができます。また、会員カードをご提示のお客様には特典として食事をサービスします。」


「なるほど、理にかなったシステムです。」


「建物ですが特別豪華にする必要はありませんし立派な装飾もいりません、店舗の雰囲気は集合住宅に近いものが望ましいでしょう。また、部屋も一般的なレベルの住居より少し高級な程度で十分です。ただ住居を模す以上それなりの広さを確保する必要はあるでしょうが。ですので多層型の建物になると思います。待合室は板で区切って個室にしお客様同士が顔をあわせる事がない様にします。サービス提供の準備が整ったら鍵をそっとお渡しし、部屋へはお客様自身で向かっていただくことで家へ帰宅するのだと言う雰囲気を演出しましょう。」


「先ほどのシステムもそうでしたが細かいところまで本当によく考えられていますね。それに人材といい建物といい普通に準備できるのであれば大分予算が抑えられる。」


「その普通に準備できる様に計画を進めていますのでご案内ください。また、サービスマニュアルのプロットは計画書内に記載しましたが建物が完成した際にシミュレーションを行い改めて作成いたします。この店はそれが全てとなりますので教育には相当力を入れなければなりませんよ。」


「我々も一般的なサービスの為の教育ならば自身があるのですが…、正直この店に関してはどうしてもつかみきれません。当初の契約とは違ってしまいますがそれも含めてお願いする事はできますか?」


「もちろん最後までフォローさせていただきます、ここまでくれば私自身にも思い入れがございますし中途半端で投げ出すわけにはまいりませんので。」


「そうですか、それは良かった。是非ともお願いしますね。」


さあ、新規店舗に関する提案はここまでだ。ここからは大金がかかった大口の営業だ。俺は気を引き締めなおして売り込みモードのギアをあげる。

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