2-19 テンプレ君の性病治療
毎々お読みいただき誠にありがとうございます。
昨日、序章と第1章の文章を校正の上改訂させていただきました。
基本的な内容に変更はございませんが設定を一部変更させていただいた箇所がございます。
詳しくは活動報告をご参照ください。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
ゲラール紹介へ提出する為の計画書に細かい修正を加え最終チェックが終わる頃ファビオとマリカの冒険者パーティ五名がやって来た。
「待っていたぞ、約束通りちゃんと来たな。」
「ああ、何とかかんとかな。それより本当に大丈夫なんだろうな?」
「なにがだ?」
「いろいろだよ、薬の事もそうだけど宿の事もだ。正直パーティメンバーはかなり難色を見せていたのをなんとか頼み込んで移って貰ったんだ。あんまり酷いと下手すりゃ解散の危機だ。」
「ふん、人が泊まっている宿に対して失礼な奴だ。お前達がどんな宿に泊まっていたのか知らんが少なくとも俺は今のこの宿からそんな所に金貰っても移りたくはないがな。」
「本当かよ?ぶっちゃけ悪い噂があってな、有名な宿ってわけじゃないから知ってる奴はそんなにいないけどよ。ただ悪いことにメンバーの中でそれを耳にした事がある奴がいたもんだからかなり苦労したんだ。」
「ふうん、…悪い噂ねぇ。まぁ噂は噂だ、心配すんな。大船に乗ったつもりでいろ。それよりお前もさっさと部屋に荷物を置いてこい。その後設備の説明があるだろうからそれが終わったら治療を始めるぞ、薬はもう出来てるからな。」
「本当か?わかった、すぐに済ましてくるよ。」
そう言ってファビオは自分の部屋へと向かって行った、しかし悪い噂か。まだ諦めてないみたいだな、敵の正体がわからない以上こちらから何か出来る訳じゃ無いしこれまで通り様子を見ていくしかないな。
部屋へ治療の為の道具を取りに行き戻ってくるとどうやら説明もちょうど終わったところみたいで冒険者の面々はなにやら興奮している様だった。そのままフロントで風呂用の小物を購入し早速女性から入浴する様だ。そこから別れてファビオとマリカがやって来た。
「あんたの言った通りこの宿凄えな、風呂も便所も綺麗な上に見た事ねえ作りだがかなり使い勝手がよさそうだった。しかし何よりもあの寝具はとんでもねぇ、部屋はこれといって広い訳でも豪華な訳でも無いけどよ。あんな寝具で寝れんのかと思うと夜が楽しみだ。」
「当たり前だ、俺は嘘をつかん。それよりマリカさん、貴女は先に仲間の方と一緒にお風呂に入ってきなさい。その間にこのアホを治療しておきますので。」
「おいおい、このアホは無いだろう。しかしこいつも病気なんだ、さすがに風呂はまずいんじゃねえのか?」
「心配するな、風呂ぐらいじゃそうそう移らん。それよりも石鹸で綺麗に洗って清潔にしといた方がいい。」
「そうなのか?二人とも他の人に移しちまうじゃないかと思ってずっと風呂は我慢してたんだ。」
マリカさんは嬉しそうに仲間の女性の後を追って風呂へと向かって行った。
そうして早速ファビオの治療を開始する。
「一つ言っておく、この針を刺して体内に直接投薬をする。しかし俺は方法を知ってはいるが実際にはやったことが無い、だからまずお前で練習するから覚悟しておけ。」
「ハアッ!?マジかよ!あんだけ自信満々に治療するって言っておいて初めてなのかよっ!」
「俺は治療をした事があるなんて一言も言ってない、薬の作り方を知っていると言っただけのはずだ。そして薬が出来た、だからお前で練習する。」
「だからなんで俺なんだよ!?」
「お前に頼まれて作った薬だからだよ、それにお前ならいくら失敗しても特に問題無いだろ?それともお前の大事な人に痛い思いをさせたいのか?」
「問題大アリだろうが!ハァ、しかしそういう事ならしょうがないのか。どうかお手柔らかに頼むよ。」
そしてファビオに右腕を出させる。駆血帯を巻き血管を浮き上がらせ肘の内側をアルコールで消毒すると早速注射を試みる、勿論失敗した。どうやら血管を貫通してしまったらしい、再び別の血管で試すが今度は上手く刺さらなかった。あれやこれやと試したが、結局右腕では足らず左腕への5射目でようやく成功する。合計十数回試したが実は何度か成功したかなと思える事はあった、だが感覚が今ひとつ掴めなかった為失敗という事にしといたのは秘密だ。ファビオの両肘の内側は失敗した注射痕で痛々しい事になっている、まぁファビオだからいいか。
そんな事をしていたらマリカが風呂から上がってやって来た、ファビオはそのままここにいて治療を見守るらしい。
マリカにも右腕を出させると駆血帯を巻きアルコール消毒の後注射をする。今度は一発で成功した、上手くコツをつかめた様だ。自信がついたところでコレットさんを呼びコレットさんにも投薬をしてしまう、その後みんなに今後の治療について説明をしていく。
「これから毎日この様な投薬を朝晩の2回行います。投薬期間の目安はファビオとマリカさんは1〜2ヶ月、コレットさんは2〜3ヶ月となります。投薬後には発熱・倦怠感・悪寒・頭痛・筋肉痛・腹痛・下痢・発疹などの症状が出る事があります。おそらく今晩から数日はそれらの症状が出るのではないかと思われます。それは薬が体の中の病気の原因となっているものを破壊している為におこる諸症状であって悪化ではありません。それから毎投薬後は薬の副作用でお腹が痛くなったり、緩くなったりすると思います。一応それに対応した飲み薬を服用していただきますが効果は保証できませんのであしからず。」
そう言って用意していた整腸剤を渡す。
「その他にも体調や病状で不安な事があったらどんな事でも構いませんので相談して下さい。投薬は基本的に私が行いますが、私がいない場合は別の人間にまかせます。という事でファビオ、また頼むぞ。」
その言葉にファビオはゲンナリとした表情を見せる。
「それからファビオ、今日は風呂無しな。基本注射前なら風呂は普通に入ってもらって構わないのですが注射の後は禁止です、また、飲酒や性行為及びそれに類似する行為も勿論禁止です。以上何かご質問は?」
「おい、俺だけ今日は風呂無しか?」
「そうだけど?まあ男なんだから細かい事は気にすんな。」
あからさまにがっかりした顔のファビオは置いといて他の二人を見るが特に質問は無いようなので今日の治療はこれで終了とする。
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今夜はゲラール商会へ計画書の提出に行かなければいけない、部屋へと戻り細部の最終確認と準備をしていると部屋の扉をノックされる。
扉を開け来訪者を確認すると先ほど治療を終えたファビオが立っていた。
「どうした?具合が悪くなってきたのか?」
「イヤ、体調は大丈夫だ。ただ大事な話が抜けちまってたから話しがしたくてな。」
「そうか、まあ立ち話もなんだ中へ入れ。」
部屋の中へファビオを迎え入れると改めて話を始める。
「それで、大事な事ってなんだ?」
「ああ、その前にちゃんとお礼を言わせてくれ。俺とマリカ、二人の命を救ってもらって本当にありがとうございました。」
「なんだ?どうした?あの薬には人格を治すなんそんな素晴らしい効果はなかったはずだがな。」
「人が改まって真面目にしてるっていうのに…ふっ、あんたは本当にブレねえな。」
「悪い悪い、何だかお前は反応がいいからイジリがいがあるもんでな。治療の事はまあ気にすんな、これも縁だ。」
「イジリがいって…もういいや、なんにせよ助かったよ。それで大事な話っていうのは報酬の事だ。いくら払えばいいんだ?」
報酬か、まったく考えてなかった。そもそもがファビオへの同情と性病憎しの思い入れから始めた事だ、どうしようかな。
「そもそもお前いくら支払えんだ?」
「ぶっちゃけそこまで余裕があるわけじゃない、金で支払うならせいぜい500Zがいいとこだ。」
「以外と持ってんだな、冒険者なんてのは宵越しの金は持たないもんだと思っていたが。ただそれを払ってしまったら今後の冒険者としての活動に支障が出るんだろ?」
「まあな、冒険者ランクが上がって引き受ける依頼の難易度も上がってきている。それに対応する為に装備を整えなきゃってんで貯めてたかねだからな。それでも命には変えられるもんじゃない。」
「そうか、ただお前には悪いがその程度の端金をもらおうとは思わん。だからこうしようじゃないか、お前は今後定期的に冒険者ギルドならびに冒険者たちの情報を持ってこい。ウチにも冒険者がいるがまだ見習いでな、それに情報収集はお前の得意とするところだろ?」
そう、鑑定してみると意外な事にこいつはこんな性格のくせに斥候タイプの冒険者だ。反対にマリカはあんな小柄ななりしてハンマー振り回すパワータイプの冒険者だったりする。したがってファビオはマリカにぶん殴られたら一発でKOされてしまう、浮気なんてできないね。
「まあそうだがよく知ってんな?しかし情報ってどんなのが必要なんだ?」
「どんな情報でも構わない、情報の取捨選択はこちらでする。どんな些細な事でも構わないから入ってきた情報は全てよこせ。」
「そうか、分かった。しかし本当にそれだけでいいのか?」
「それだけってお前は本当に馬鹿だな、今俺は期間を言ったか?今の話の条件そのままならお前は一生俺に情報提供し続けなきゃならんのだぞ。それにパーティの方針で拠点を移すなんてことになった場合も、俺がここにいる限りお前はよその街には行けなくなるわけだからパーティを抜けなきゃならなくなる。」
「なっ!?」
「心配するな、今のはものの例えだ。そんな無碍な事を言うつもりはないしパーティとの兼ね合いはそっち優先で構わない。当面の間お前が個人で出来る限りの情報を持ってきてくれればそれでいい。しかしお前は情報を集めるのは得意みたいだがそれの取り扱いがなっていない。それじゃあいずれ行き詰ることになる、その辺自覚しておかなあと下手すりゃ死ぬぞ。」
「あっ、ああ…分かった。」
「話しはそれだけか?俺は今夜、重要な商談があってその準備をしなきゃならんのだ。」
「話しはそれだけだ、手間取らせちまって悪かったな。」
「ああそれからさっきも言ったが今夜二人ともまず間違いなく具合が悪くなる。冒険者の活動に支障が出ることだからあらかじめ話しておくべきだった、悪かったな。」
「いや、そいつはしょうがない。治療できるってだけでも儲けもんな話しだからな。」
そう言って改めて礼をするとファビオは自分の部屋へと戻っていった、俺は引き続き今夜の準備を進めた。




