2-16 テンプレ君の風呂場建設
「ユーゴ様、お客様です。ファビオさんとマリカさんがいらしています。」
セシールの声で俺は仮眠から目を覚ます、どれぐらい寝ていたんだろう。窓を開けて外を確認するとまだ陽は高い、眠ったのは2〜3時間ってところかな。
俺は気だるい身体を引きずって食堂へとおりていった。
「おおっ、待ってたぜ。宿に戻ったらすぐに来いって伝言があったから飛んできたんだ。今日は早めに切り上げて正解だったぜ、それで薬ができたのか?」
「うるさいやつだ。薬はまだだ、ただ明日には完成出来るから治療を始めるぞ。それにあたっておまえらパーティごとここに移ってこい、じゃないと治療が面倒だ。」
「パーティごとか、自分だけの話じゃないから即答出来ねえよ。」
「別にずっとってわけじゃない、治療の期間だけだ。適当に言い含めろ。治療が終わって気に入らなきゃまた移ればいいだろうが。」
「言い含めるってあんた、俺はあんまり口が上手い方じゃないからな。」
「全く面倒くさい奴だな、おまえらの泊まってる宿ってどんなだ?」
「俺達のパーティはこれでも結構稼いでんだ、大手の宿でもミドルクラスの部屋を個人部屋で借りている。まあ宿には風呂もあるし飯もなかなか美味いよ。」
「ふーん、んでいくらなんだ?」
「宿泊は月額100Z、飯はメニューによってピンキリだけど俺たちは日によって300Rから3Zってところかな。」
「ならやっぱおまえら移ってきた方がいいわ、まあ設備的に劣る部分はあるかもしれんがトータルでは間違いなく満足出来るから。まあ騙されたと思って移ってこい。」
「わかったよ、なんとか説得してみるよ。」
そう言って2人は帰って行った。マットレスを含めた寝具は既に相当数作ってあったから問題ないが風呂だけは至急作らんといかんな、俺もそろそろ本気で風呂に入りたいし。工房作りの余った材料を使ってさっさと作ってしまおう。それからトイレもなんとかしないと不味いな、一昨日の夜みたいな間違いがおこっちゃいかん。
風呂を作る許可を得る為、主人に相談する事した。
「ガストンさんすいません、少し相談があるのですが今お時間よろしいですか?」
「ん?どうした?」
「明日から例の冒険者パーティを治療の関係もあってここに移らせようと思うのですが、受け入れるにあたって風呂を作りたいんです。裏庭を潰してしまう形になりますが作ってしまってよろしいでしょうか?」
「作るってオイ、先日そんな話はしてたが随分と急だな。裏庭は別に潰したって構いやしないが予算の問題だってある、そんなに簡単じゃねえだろうが。」
「工房建築の余った資材を使おうと思ってます、作業は私一人で行いますので費用はほとんどかかりませんよ。」
「いやいやそういう問題じゃないだろ、余った材料ってのはもともとお前が買ったもんだしお前の作業費だってある。タダって訳にはいかねえよ。」
「そう言われてもあくまで仮設のつもりですし、それで費用を貰うというのはちょっと。どうしましょうか、仮設…仮設か…。そうだ、では組立式の風呂場にしますのでそれを借りて下さい。費用はそうですね、月額150Zでどうでしょうか?」
「組立式の風呂場?聞いた事ねえな。まあお前の言う事にそれは今更か、もうそれでいいよ。」
「まあその辺の細かい契約等は後ほどあらためて詰めましょう、そろそろ今後の計画についても打ち合わせが必要でしたしね。」
「ああ、わかったよ。」
「それからトイレも併せて建築したいのですがそれは是が非でもこちらの負担でやらせて下さい。故郷の形式のトイレにしたいのですがそれが受け入れられるかテストしたいので。」
「わかったわかった、もうお前に任せるから好きにしろ。」
了承を得た俺は早速風呂作りに取り掛かる。話の流れで組立式の風呂場という事になったので1.6m×1.6m×2.4mの軽量鉄骨のユニットを6個連結して作ろう。浴槽・洗い場・脱衣所をそれぞれ2ユニットにして風呂場になるようにすればいいだろう。
どうせ仮設の風呂だから居住性なんて気にする事はないしユニットの外壁・天井の全てをアルミ合金で仕上げ、天井付近の壁は30cmほど開けて湿気が籠らない様にしよう。
内装は浴室の内壁はアルミ合金と直床で、脱衣所の天井と内壁は木毛コンクリートで床は木材で仕上げる。
トイレは0.8m×1.6m×2.4mのユニットを6つ繋げ男女それぞれ3つづつ使用、上に風呂と兼用する大型貯水タンクを置きたいのでユニットを刻み強度を取りたい。
内装は天井と内壁は脱衣所と同じ木毛コンクリートで床は直床。
方式はもちろん洋式水洗で大・小便器は既に作ってある、ウォシュレットにしたかったがさすがに無理だった。
大型貯水タンクへの給水方法は井戸からステンレスで作った深井戸用の手押しポンプをタンクよりも上部に設置し汲み上げる、ただ給水の為にいちいち登るのは危険だし面倒なので地上から簡単に行えるようにするか。
ただここで井戸を独占してしまうと宿の営業に支障が出てしまうだろうな、なので新たな井戸も一本掘ってしまおう。宿用の手押しポンプも作っておいたからついでに設置してしまいたい。
大まかな建築方法は決まったので大きな幌を四方に貼り外から中が見えないようにする。
それから建物を置く予定の場所の地面を昨夜の要領で固める。
まずは井戸を掘ってしまう、しかしさすがに4m掘った程度では水が出ないのでハシゴで下に降り一旦ここでアイテムボックスから砂利を出しその砂利を井戸の壁を覆うように固めていく。それが終わると更に4m掘り下げると水が湧き出した。また砂利を出して壁を覆って井戸の完成だ。
それから建物の設置場所でも大量の砂利を出してそのまま基礎に加え浴室とトイレの床に湯舟までを固めた石で作ってしまう、大勢の人の目に触れるわけじゃないしあくまで短期使用の仮設なので説明できないような不自然な技術が使われていても構わんだろう。ただもしもの為に一応石を組んだような模様だけは入れておこう。
基礎の上に軽量鉄骨のフレームを組んでいきブレースを入れユニットを作るとそこにアルミ合金の外壁を貼り付けていく。天井は波型にしたアルミ合金を貼っていきユニットの継ぎ目にはフッ素樹脂のパッキンを入れる。
「ユーゴ兄さん、中にいるの?」
大まかな建物の外側が出来た頃不意に声を掛けられる、気付ば辺りは既に大分薄暗くなっていた。
幌の外に出るとエディとデボラが呆れた顔で立っている。
「やあ、おかえり。」
「おかえりはいいけどこんな巨大な陣幕を貼って一体なにをしているの?」
「なにって、風呂を作っていたんだ。明日からは毎日風呂に入れるぞ。」
「突然何を始めたのかと思ったらお風呂?しかも明日からって普通1日でできるものじゃないよね?」
「故郷の知識と秘密の技術を使えば出来てしまうのだよ、そこは深く突っ込まないで欲しいなあ。」
「いくら何でも常識ってものをもう少し考えてよ。ていうかさ、前から思ってたんだけどユーゴ兄さん魔法使えるよね?しかも普通じゃない変な奴。」
ドキィィィ!なんてこった、バレかけとるやないかい。
「まっ、魔法じゃないよ。魔法なんて原理はおろか使い方すらわからないし、どんな物なのかさえっぱりわからない。」
「ふーん、じゃあ置いてあった大量の物が消えたりいきなり物が出てきたりするのは一体なんなの?みんなもううっすら気付いてるよ、敢えて口には出してないけど。」
ふぅ、バレてる。確かに普通に考えれば不自然な事をかなりやってはいる、ロータスには魔法があるから魔法でしょってなるらしい。決して魔法ではないけど面倒くさいからもうそれでいい様な気もする、バレてるのはアイテムボックスだけみたいだし。ただこの世界の魔法ってものがどんなんなのか分かってない以上、怪しまれてても誤魔化せる限り誤魔化しといたほうがいいのかな。
「こっ、故郷の秘術を使った特殊な収納術だよ。それが魔法だと言われれば魔法なのかもしれないがよくわからない、何せ本当に魔法を見た事すらないからね。故郷には魔法なんてもの使える人がいなかったんだから。ただ秘術である以上人前でおおっぴらには使えないし軽々しくその存在を口にするわけにはいかない、だから詳しくは話せないんだ。」
「まあそういう事にしておこうか、ユーゴ兄さんの非常識はそれに限った事じゃないし。ところで今晩パーティするんでしょ?もう大分準備出来てるみたいだよ。」
「おおっ、そうか。ちょうどキリのいいところまで終わったところだし今日はここで終わりにしてしまおう。」
そうしてみんなで食堂へと向かう。
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活動報告へも記載させていただきましたが、誠に勝手ながら今後は毎日掲載から火・木・土曜日の各日での掲載へと変更させていただきます。
今後ともどうぞ宜しくお願い申し上げます。




