2-10 テンプレ君のペニシリン作り
俺は今賢者へと無事にクラスチェンジを遂げている。きっと今なら、奥さんのラッキースケベにすら冷静に対応出来る…と良いな。
しかし、このラビリンスはなかなか攻略困難なダンジョンだったぜ。まさかこの歳になって我を忘れて5回もバズーカをぶっ放す事になるなんて夢にも思わなかった、しかも5回目の発射と共に本当に昇天させらるとは…。
「ああ、お客さん目さましはったん。随分溜め込んではったんやねぇ、出しても出してもすぐに元気になりはるからウチも久しぶりに頑張りがいがあったわ。」
「恐縮です。」
「ふふ、あんだけ無茶苦茶しといてまだ緊張しとるん?ホンマ可愛いわぁ。」
ソーニャ嬢はそう言って俺の顔を抱きかかえる、すると豊満な果実に顔が埋まり賢者になれたと思ったのは錯覚だったと自覚させられる。
「あらあら?お客さんホンマ元気やなぁ、せやけどもう時間やねん。名残惜しいけどまた来てや、約束やで。」
そんな事を言いながらソーニャ嬢は熱いベーゼをくれた。
もう答えはYES!しかある訳がない。
その後案内されて店を出ると陽の出寸前といった頃だった、さあてみんなになんて言い訳しよう。
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いつもの服に着替えて木漏れ日亭に戻ると主人はすでに起きて仕入れに出かける準備をしていた。
「おかえり、スッキリした顔して朝帰りとはユーゴもやるなあ。」
ニヤニヤしながらそう声をかけてきた。
「まあボチボチですね、仕事だったんですけどね。思いの外時間がかかって疲れが溜まっていたのかそのまま眠ってしまったようです。」
「素直じゃねえな、男同士なんだから気にする事ねえのに。まあ無理だけすんなよ、そんじゃ俺はちょっと出かけてくるからよ。」
「いや本当仕事ですからっ!今日は部屋でゆっくりしますよ。それじゃいってらっしゃい。」
主人はオウと手を振り仕入れに出かけていった。そこに丁度奥さんも起きてきた。
「おはようございます、戻ってらっしゃったんですね。」
「はい、今しがた戻りまして。思いの外仕事が長引いてそのまま眠ってしまったようです。」
「まあ、お身体大丈夫なんですか?無理だけはなさらないでくださいね。」
「今さっきガストンさんにも同じ事を言われましたよ、今日は部屋でゆっくりする予定ですから。」
「ふふ、そうですか。ユーゴさんは働き過ぎです、毎日朝早くから夜中まで働いてらっしゃるんですもの。心配にもなりますよ。」
ううっ、ガストンさんみたいにあからさまに解ってるみたいな顔されるのもキツイが、真剣に心配されるとそれはそれで心が痛い。俺は逃げるように部屋に戻った。
部屋に戻りマットレスへダイブする、そしてそのまま今後の事を改めて考え案件を一つずつ整理しながら考えをまとめていく。
まず木漏れ日亭、今のままだとこのままリニューアルオープンしても我々が占拠してる部分は新規の客を入れられない。更にうちとしても何時迄も食堂で打ち合わせをさせてもらう訳にもいかないし公私の区別もつけづらい、部屋割りや設備も必要だしやはりリフォームもしくは建て替えに踏み切るべきだろう。
幸い工房の建築も始まるしそちらが成功したらそのままこちらに手をかけたい。その際には建築費を一部負担する代わりグランディールとしての拠点を作らせてもらえるよう相談してみよう。それが済み次第リニューアルオープンだな。
次にゲラール商会、提案する計画を作成する為の情報収集や実行する為の根拠の確保は着々と進んでいるがまだ計画には穴があり計画書を完成させられないでいる状況だ。敵対勢力も判明したしかなり難しい案件だ、敵の姿をもう少し見定める必要があるな。
しかし案件が案件だからと俺の動きを秘匿にしておいて良かった、相手に把握されてしまえば自由に動くなんて出来なくなってしまう。これは今後も気を付けないとな、となると打ち合わせ場所もよく考えた方がいい。客でもない俺がムーランへ出入りするのは不自然だからな、内部に虫がいる可能性も高いしそこも含めて提案する事にしよう。
最後にデュルケーム商会、正直同情だけであんな提案をした訳じゃない。色々考えた結果、最後のピースがようやく揃うという打算があったのだ。提案をどの程度受け入れてくれるかはまだわからないが、もし受け入れてくれるならバンジャマンさんには相当働いてもらう事になる。正直ゲラール商会の案件を一人でやるにはかなりキツイものがあった、あれだけの能力の人の力を借りれるならかなり助かる。
バンジャマンさんさえ口説き落とせればゲラール商会の計画書をようやく完成させる事が出来る。
そんな事を考えてウダウダとしてるとセシールが朝食の準備が整ったと呼びに来た。
食堂に降りるとみんな席に着いて待っていたので挨拶をして俺も席に着く。
「みんなおはよう、連日帰りが遅くなって申し訳ないね。」
「ユーゴ兄さんおはよう、昨夜も帰るのかなり遅かったの?身体壊しちゃうじゃない?」
ううっ、そんなピュアな瞳で心配そうな眼差しを向けられたら如何わしいダンジョン攻略に勤しんでいた身としては非常に辛い。罪悪感を力づくでフォールして曖昧に誤魔化しておく。
「だっ、大丈夫。今日は部屋でゆっくりするし心配いらないよ。それより折角の料理が冷めてしまう、早速いただいてしまおう。」
強引に話しを打ち切り食事を始める。クソっ、ガストンさんのニヤニヤ笑いが止まらない。
食事を終えてそのまま今日の打ち合わせを始める。
「さて、今日も昨日の報告を聞こうか。またセシールから頼むよ。」
「昨日は暇を見て奥様に計算を教えさせていただきましたが、基礎の基礎からのスタートとなっておりますので時間がかかると思われます。それにしてもいただいたペンと紙は一体なんなのですか?おかげで始めたばかりとはいえかなり捗りましたので。」
「ああ、故郷の一般的な筆記具だよ。別に貴重な物でもない、足りなくなったらいくらでも渡すから。まあ計算を一から覚えるには時間がかかる、焦らなくていいからじっくり教えてあげてくれないか?今日も昨日に引き続きの業務で頼むよ。」
「かしこまりました。」
「じゃあ次はデボラ、報告を頼むよ。」
「はい、昨日は採取依頼を受けてみましたが慣れないせいか思いの外手間取ってしまいました。決して難しい難易度ではないのですがやはり慣れが必要そうです。」
「そうか、そちらにはサポートも考えている。出来ればさっさと階級を上げて初級くらいにはなって貰いたいからね、だからと言って決して焦らなくていいからね。安全かつ確実に慣れてくれればいい、取り敢えず今日も一人で依頼をこなしてみてくれ。」
「はっ、わかりました。」
「次にエディ君、昨日は1日宿の業務を見てみてどうだった?」
「うん、思っていたより細かい業務が多くて驚いたよ。それにガストンさんの料理は本当にすごいね、まるで魔法みたいだったよ。」
「そうだろう、そうやっていろんな事を実際に見聞きして勉強して欲しいんだ。必ず成長の役に立つから。」
「うん、わかった。」
「あっ、そういえばデホラ。冒険者ギルドにおける奴隷の取扱いがどうなっているのか調べて来てくれないか?」
「奴隷ですか?わかりました、ご購入を検討でもされておられるのですか?」
「いや、今回はそういう事じゃないんだ。ちょっと気になる事があってね、まあ頼んだよ。」
「わかりました。」
「最後に私からも報告しよう。まず工房の建築予定地が決まった、明日には建築用の資材が集まるので建材の製造に取り掛かる。それから人材派遣業の事業立上げのコンサルタント業務を提案したので決まればそちらのコンサルタントを開始する事になると思う。結果はそんなに時間がかからず得られると思うよ。そしてもしコンサルタントする事が決まったら、それと同時にその人材派遣会社と業務提携する事になるから。」
「うん、もうね僕にはユーゴ兄さんが何言ってるのかよくわからないよ。」
「毎日毎日よくもまあ、なんにせよお仕事が増えるかもしれないという事ですね。」
「本当に凄いですね、流石ユーゴ殿です。」
「因みに今日はゆっくり休みながら計画書の作成をする予定なので部屋に篭るよ。ユーゴ君は引き続きセシールと一緒に宿の手伝いで頼むね。それじゃ今日も頑張りましょう。」
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打合せを終え俺は昨日髭もじゃ達が持ってきた材料のところに行きそっとアイテムボックスにしまう。そのまま部屋に戻りペニシリン作成に着手する。
某大ヒットしたタイムスリップDr.は涙流しながら仲間達と必死に作っていたが俺には神の手があるので実はそんなに大変な作業ではない。製造方法や手順はあの作品が大ヒットした際ペニシリンに関する情報も世に溢れ、興味があった俺はなんとなく調べたりして覚えているんだよね。やたら梅毒に詳しいのもペニシリンを調べたのも、デリバリーエンジェルのプレゼントを貰った直後に見て性病に関する事に敏感だったからではないけどな。嘘じゃない、知的好奇心を満たすという欲求をだな…まあいいじゃないか。
取り敢えず動物の骨からゼラチンを取り出す、本当は寒天の方がいいんだけど海藻は手に入りそうに無かったからしょうがない。それから芋類と米から培地の元になるものを作り出し、それの3分の1にゼラチンを混ぜて個体培地にし残りはそのまま液体培地として使用する。
土を使って作った滅菌されたシャーレと壺を取り出し個体培地はシャーレに、液体培地は壺に入れていく。更にトウモロコシを加工してコーンスターチとコーンスティープリカーを作り出しコンスティープリカーを培地に添加していく。これは某タイムスリップDr.はやっていなかったがグーグル先生曰くやると効果の高いペニシリンが沢山出来るらしい。
今度は腐った柑橘類やブルーチーズから青カビだけを抽出し作ったそれぞれの培地に入れていく、その後出来上がった培地に結界を張り雑菌が入らないようにする。
それらを培養用に温度と湿度を固定した専用のアイテムボックスに入れて後は培養するまで待てばいい、培養が終わったものからペニシリンを抽出すればかなり強力で質のいいペニシリンが出来るはずだ。
何気にかなりの量がある、あいつら相当気合い入れてきたな。この分ならかなりの量のペニシリンができそうだ。
残ったゴミは神の手で水分を取り熱を加えて減量化と衛生化を行いゴミ用アイテムボックスに入れておく。
サクサクと能力を使って製作を進め終えたが実は結界とアイテムボックスは今回の為にちょっとづつ試していて色々と新発見をしていたのだ。
まず結界だが結界によって進入を禁じるものはイメージ次第でかなり自由に設定出来る。俺は菌や微生物が存在する事を知っているのでそういったものまで進入禁止対象として設定出来る様だ。ただ魔力使用量の節約の為かなり弱い結界にしたので簡単な衝撃でも壊れてしまう、だがすぐにアイテムボックスに入れてしまうので関係ない。
次にアイテムボックスだが元々生物は入れられないと聞いていたが入れておいたパンにカビが生えたことから知能のない様な菌や微生物、粘菌といったものは入れられることがわかった。
また食品が痛むのを防止する為に温度や湿度の設定ができないかを試したらなんとこれもできたのだ、しかも空気の量まで設定出来た。つまり俺は真空保管庫・冷蔵庫・冷凍庫・加温庫のアイテムボックスを作って持てたのだ、これでいつでもどこでも冷たい飲み物が飲めるし食品を冷凍保存及び解凍が出来る様になったのだ。
ただやはり時間を止めたり早めたりといった操作する様なことは不可能だった、まあ真空状態を作れるだけで御の字だ。真空状態なら物の保管に関しては相当好条件となるし問題無いだろう。
一通りの作業を終え冷たい麦茶を飲み一息いれると今度は計画書の作成に手を付ける。提出期限はまだ先だが、明日も予定が立て込んでいるし見込みでも構わないからある程度まとめておかなければ間に合わなくなってしまう。変更しなければならないところはそこだけ修正していけばいいだろう。




