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2-7 テンプレ君キャッチセールスにつかまる

呼ばれた店員は期待に満ちた様子でやってきた。はぁ、断りにくい事この上ないな。


「今回はこちらの要望を聞き受け柔軟なご対応いただきありがとうございございました。しかしながら今回はご紹介いただいた中から選びきることが難しいと判断し購入を見送らせて頂きたいと思います。」


驚愕と落胆の表情を浮かべながらも従業員は食い下がる。


「なっ、なぜですか?今回はかなり条件のいい商品もございましたし相場が上昇傾向の中ですが勉強もさせていただいております。お客様のご要望に対して合致するであろう商品をご紹介できたと自負しております。」


「それは充分に理解しております、私の曖昧な要望に合わせ選びやすい様にと幅広く紹介していただき本当にありがとうございます。理由はあくまでも私自身の浅はかさ故の問題によりものであり、改めて購入にあたっての準備や心構えを整え出直させて頂きたい。もし次回訪問への保証金もしくは手付金が必要と言われるのであればお支払いはさせていただきます。」


そう話すと店員は暫く何事か考えやがて口を開いた。


「ふっ、次回来店の約束など必要ありませんよ。あなたが奴隷という物を初めて買おうとしている事は解っていましたし。まあ、よくあることです。ただ先程申し上げた様に現在相場は上昇傾向にあります。もしいつかまたご来店される事があっても、今回と同様のご呈示はお約束できませんのでご了承下さい。」


そう話す店員の柔らかな笑みの裏に嘲りが伺える。この店の客として相応しくない程度の人間とでも思われたのだろうか、何に対する嘲りなのかハッキリとはわからないがそれに見合う事を俺自身してしまったのだからしょうがない。


「それは理解しています、全ては私の勉強不足と浅慮のいたすところですので。」


店員の嘲笑を受け止め一礼すると娼館を後にした。





今回の失敗のツケが他人の人生に影響を及ぼす様なものではなく俺の恥程度で済んで良かったと思おう。そもそも奴隷を買うという事はその人間の人生を丸ごと背負うという事だ、だからこそ俺は軽々に買うような事はせず慎重に考えていたはずだ。なのに下半身の暴走に身を任せこんな事になってしまうなんて、我ながら本当に情けない。


それじゃあ俺は一体何を求めて奴隷が必要としたのだろう。ただ欲求の捌け口が欲しかったのか?確かにそれはかなり重要な事ではある。今回の失敗の発端は下半身の欲求を制御しきれず精神状態が不安定になってしまった為だ。元々そういった状態の対処は大人のメンタルヘルスクリニックでピンクのナースさんにお願いしていた、それがロータスへと来てからはそれすらままならない為に症状が悪化し風俗感覚で奴隷を買おうなんて馬鹿な発想に至った訳だ。


そもそも俺が目指していたのはチーレムのはずだ。テンプレみたいにいろんな女の子と夢のイチャラブ生活を送りたい、そのチーレムメイトとして絶対に裏切られないんじゃないかと奴隷を求めていたんじゃなかったのか?互いに互いを求め合い支え合える、そんな関係が欲しかったんじゃなかったのか?決して命令だからと仕方なく抱かれている様なダッチワイフが欲しかったんじゃないはずだ。


結局あの店で俺が選びきれなかった理由、それは恐怖だったのかもしれない。あの店で見せてもらった娘達の仮面のような表情と瞳の奥の暗い闇、そんな中から選んで購入を決めた子が命令だからと抱かれるだけで俺なんかの事を求めてくれるのかという恐怖。大体にして普通の女性とすらうまいことできてないのにそんな娘達とうまくやれる自信があったら風俗王になんかなってない訳だし。


…あれ?つまり奴隷でチーレムっていうのはかなり難しくないか?おいおい、大前提がゆらいじゃってるぞ。テンプレだとどうやっていたんだっけ?



Case1. 病気や怪我で弱っているのを買って治してあげる事により信頼を得てイチャラブ。


Case2. ワァーオ❤すると能力が上がるよと言ってイチャラブ。


Case3. 問答無用でワァーオ❤したにも関わらずいつの間にかイチャラブ。


Case2は不可能、俺にそんな力は無い。Case3も無理、意味がわからない。となるとCase1を目指す訳か、これならば状況次第でなんとかできるかもしれない。そうなると最初からあの店に入った事自体間違いだった訳だ、少し考えれば行くべき店も買うべき奴隷も漠然と見えてくるじゃないか。やはり下半身の暴走に身を任せたらロクな事にならないな、奴隷の購入はもっとよく考えてからにするべきだろう。


そんな事を一人悶々と考えながらあてどなく歩いていると不意に声を掛けられた。


「奴隷をお探しですか?」


声のした方へ振り返ると小柄で童顔の男が立っていた、誰だこいつ?


「突然お声がけしてしまい大変申し訳ございません、私奴隷の行商を行っておりますバンジャマン=デュルケームと申します。この辺を歩いてらっしゃるという事は奴隷を探してらっしゃるのかと思いつい声を掛けていまいました。」


奴隷の行商?なんだそれ。結局なんらかの問題があるから流しで商売をしているのだろう。関わら無い方がいい、そう判断しやんわりと断り退散を試みるがこの男中々にしつこい。


「お願いします!どうか助けると思って見るだけ見てもらえませんか?」


やけに必死だな、なんか事情でもあるのか?まあどうせロクでもない事だろうが。


「あなたは何をそんなに焦ってらっしゃるのですか?」


「…病気の者がおりまして。恥ずかしい話し薬を用意する余裕どころかまともに食べさせてやる余裕もありません。」


失敗した、またも厄介事の匂いがプンプンする。前の世界ではそれなりに上手くやれてたつもりだがロータスでは俺はどうもよくトラブルに巻き込まれる。主人公体質ってやつだったか?そんなとこばっかりテンプレじゃ困るよ、恨むぜセルフィーネ様。


そうこうしてるうちに男は聞いてもいないのに身の上をペラペラと喋り出してしまった。


「元々私は別の街で奴隷商を営んでおりました。ところが街の有力者と販売した奴隷の件で揉めてしまいまして、その後徐々に孤立していき最終的にその街では商売を続けることが困難になりました。私は拠点を移すしか無いと思い奴隷の大多数を懇意にして頂いてた得意先に特価で引き取っていただき街を出たのです。しかし私の考えはあまかった、別の街でもまともに商売をする事が出来なかったのです。なんと付近の街には有力者とその息がかかった奴隷商により既に有る事無い事書かれた回状が回されていたのです。そのまま流れ流れてこの街に辿り着いたのですが奴隷の中に病に罹ってしまった者が出てしまいまして、資金も大分目減りし高額な治療費の捻出どころか日々の暮らしすら困難な状況です。皆との話し合いの結果どなたかに誰かをご購入頂き、取り敢えず当面の薬代と生活費を得ようという結論に至ったのです。」


やはりトラブル満載の話しだなオイ、こんな話しに関わらない碌な事にならない。さっさと逃げ出そう。


「申し訳ないが当方も多忙ですので別を当たって頂ければ。」

そう言い残し立ち去ろうとするも男は縋るように腰に抱きつき懇願を続ける。


「もう散々断られてきました、病の進行は早く一刻の猶予もございません。何なら私が奴隷になってもいい、どうかお願いします。」


その言葉に俺のハートはキュンとしてしまった、別にアーッ!な意味では無いので誤解はしないで欲しい。


彼はさっきから奴隷を人扱いし、さらには奴隷の為に自分すら投げ出そうとしているのだ。現代日本からやってきた為、人を物扱いするという事が頭ではそういものだと理解出来るが割り切れないという思いのある俺ですら下半身の暴走に負けてしまったと言うのに。まあそれは現在猛省中な訳だが… そんな中でこの男の懇願は中々胸にくるものがあった

「取り敢えず話しは解りました、それでその病に罹った方はどういった方なのですか?貴方にとっても特別な方なのでしょう?」


「はい、皆の母であり姉であり私にとっても大切な者です。」


「そうですか、それでその方の病名は?」


「…梅毒です。」


「梅毒、ですか。その焦り方から見るに再発されたという事ですか。」


「…はい。」


「それが何を意味しているかもご存じですね。」


「…ですがだからと言ってこのまま諦める事は出来ません。」


はあ、また梅毒か。ロータスでもそんなに流行ってんのか?それとも一向に感染する様な行為に至れない俺への嫌がらせか?まあこの人が移した訳ではないだし何やら事情がありそうだけどさあ。どうせ薬は作る予定だしもしかしたら求めているものと出会えるかもしれないから見るだけ見てみるか。


「解りました、奴隷を引き取るという約束は出来ませんが取り敢えず拝見させていただきましょうか。」


「ほっ、本当ですか?よろしくお願いいたします。」


俺は男について街の外れまで連れられていく、そこには馬車と2張のテントが張ってあった。


おいおい、こんなところに勝手にテントを張って野営してもいいのか?


「おい皆んな出てこい、お客様をお連れしたぞ。」


その声に応じ5名の男女がテントから出てくる、種族も年齢もバラバラだが一様に薄汚れ痩せていた。幾ら何でもこれで判断するのは難しいだろう。


「申し訳ございません、見た目こそ良くありませんが皆良く気がつく働き者ばかりです。どうぞよろしくお願いいたします。」


「んー、いや申し訳ない。これではちょっと選ぶ以前です、ちょっとテントを一つお借りして構いませんか?全員に身を清めていただきたいので。」


「ええ構いません、それでは右側のテントをお使いください。」


「それからバンジャマンさんちょっとこれで食べ物を買って来て貰えませんか?」


そう言って銀貨5枚を手渡す。


「そんな!?そんな事いけません!」


「しかし今のままでは申し訳ありませんが選びようもない、構いませんから早くお願いします。」


そう言うとバンジャマンさんは渋々ながら買い物に出掛けた。


「では失礼しますね。」


そう言ってテントに入り大き目の桶を2つ用意しそこに湯を注ぐ。アイテムボックスの中の水を神の手で加温したものだ。それから急いで簡単な衣類を6着とタオルを作成し用意した。


あれっ?神の手使って思い出したけど、そういえば今日の午後って生産ギルドに行く約束してたじゃないか?やばい奴隷の事に夢中になって忘れてた、下半身の暴走がこんなところまで影響するとは。こんな事で約束をぶっちする訳にもいかないしちょっと中抜けして生産ギルドに行ってくるか。


「皆さん中へどうぞ。」


そう言って皆をテントに招き入れる。


「このお湯と石鹸で身を清めこの布で水気を拭き取ったのちこの衣服に着替えてください。」


「「「「「!?」」」」」


「それから大変申し訳ないのですが私は諸用を思い出したのでちょっと済ませてきます。また夕方には戻りますのでバンジャマンさんにはよろしくお伝えください、それじゃまた後ほどお会いしましょう。」


そうお願いしてテントを出ると急いで生産ギルドへ向かった。

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