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1-15 テンプレ君起業する

 その後主人はさすがに疲れが出たのか休むとの事、奥さんにも一緒に休む様に勧めたが日課通りの掃除を元気に始めた。


 俺は部屋で今後販売を開始予定の石鹸作りに勤しんでいると奥さんが来客を知らせに来てくれた。


 下へおりると食堂には予想通りの3人の顔があった。


「いらっしゃい、よく来てくれたね。」


「昨日は本当にありがとうございました。あの後僕たちは三人でよく話し合う事ができました。」


「昨日は本当に失礼をした、私はエディ様の事を何もわかっていなかった様だ。貴殿のおかげでエディ様の想いを知る事ができたし自分がいかに浅はかだったか知る事ができた、あらためて礼を言う。」


「私も考えが甘かった事を痛感させられました、エディ様のためと思っていた事は自分勝手な願望でしか無かったなんて考えてもみなかった。気づかせてくださってお礼を申し上げます。」


「そうか、まあそれぞれがそれに気づいて考える事ができ始めたのならそれは立派な成長と言えるんじゃないか? 何にせよこれからそれを忘れず互いの想いをしっかり共有して成長し合えばいいだろう、まだまだ若いんだから今後どうやってどんな大人になっていくかが大事なんだ。それで現実直面している問題はどうする事にしたんだ?」


「やはりとりあえず当面は、僕の持ち物を売却して当面の現金を用立てようと思うんだ。その後僕とセシールは人頭税を支払い、働き口を探す事になると思っています。デボラは当初の予定通り冒険者になりたいそうです。」


「エディ様の想いは十分にわかったつもりだがオーリック家再興は私自身の悲願でもある。無理強いする事はできないがもし今後エディ様がそれを願うのならお力となれる様準備をしておきたい。そのためにもやはり冒険者となってしっかりと蓄えを作っておきたいし当面の暮らしも支えられればと考えている。」


「うん、それでいいと思う。エディ君のためなんて詭弁を言わず自分のためと言えるなら大丈夫、君は君の想いを我慢する必要は無いよ。ただ冒険者の収入は決して安定などしていないし常に命の危険と隣り合わせの仕事だ、そこはしっかり理解した方がいい。」


「私はやはりエディ様のおそばでお世話がしたい、だから街で働きながらエディ様におつかえしようと思います。ただ働き口は今から探すので当面はエディ様とデボラの世話になる形になるのですけど。」


「そうだね、ただ君なら元メイドという事もあってある程度技能もあるだろうし貴族に使えていただけあって教養もある。すぐにいい働き口が見つかるだろう、エディ君のためじゃなく自分のためって想いがあるならきっと上手くいくよ。」


「僕は正直まだ如何したら良いのか考えがまとまってないんだ。二人と違って年齢的にも働き口はなかなか見つからないだろうし。」


「エディ君はゆっくりこれからの事を考えればいいよ、焦せる必要なんてどこにも無い。いろんな事を経験して成長していこう。その中で自分のできることがきっと見つかるよ。」


 取り敢えず三人の考えを聞くことができた。それぞれがキチンと考え成長できた事を確認できて喜ばしい。


「君たちの考えは分った。それを受けて私から君たちに新たな道を提案しよう。私はこの度新たな会社を立ち上げる事にした、業務内容は製品の製造販売とコンサルタント業務だ。先程この木漏れ日亭さんと両方の業務に伴う契約を取り交わしたところだ。当面の仕事は石鹸の販売とこの木漏れ日亭さんの経営コンサルタント及び営業サポートだ。さて君たち、全員この会社に就職しないか? 入社にあたっての条件は支度金にそれぞれ50Z、日々の給与は当面出来高払いとなるが税金と衣食住は会社で保証しよう。」


「「「はあ?」」」


「条件は悪く無いと思うんだけどな。正直昨日までの君たちなら雇おうなんてこれっぽっちも思いはしなかったけど、今日話を聞いて成長のあとも伺えるし今後にも期待できそうだからね。」


「しかし私は冒険者として身を立てると決めたばかりだ。」


「うん、その気持ちはわかるよ。けど、多分君が今から冒険者として活動を始めたとしてまともな暮らしをできるようになるのに最低三カ月はかかるんじゃないかな。その後二人を養えるだけ稼げる様になるのに大体一年間、能力的な面を見てその辺が無難なところだと思うよ。」


「なっ、そんなに?」


「考え方は成長できたみたいだけど現状把握や計画性はそう簡単に変わるものじゃないからね、さらに時間も無かったからしょうがないんだけど君たちの計画は正直まだまだあまい。今のままだと早々に行き詰まるだろうから腰を据えてしっかり学ぶべきだと思うんだ。本来であれば守ってくれる家が無い以上会社が君たちを守り成長をサポートする、その対価に君たちは会社に労働力を提供してもらう。さて、如何だろうか?」


「僕もいいの? できる事なんて何も無いけど雇ってくれるの?」


「エディ君できる事が無いなんてそんな事は決して無い、むしろ君の力が必要なんだ。それに今でき無い事はこれからできるようになれば良い、それをサポートするのも会社の役割だ。」


「じゃあみんなと、お兄さんともこれから一緒にいられるんだね。」


「そうだね、もしみんなが入社してくれるなら寮はこの木漏れ日亭にしようと思っているから一緒に暮らす事になるね。」


「やった、ねえみんなお兄さんの会社に入ろう。」


「エディ君、自分の考えを他人に押し付けちゃいかんよ。」


「いえ構いませんわ、私にとってもその申し出は願っても無いものですから。私からもお願いしたいくらいですわ。」


「私もその申し出を受けようと思う。ぜひとも貴殿の元で学ばせていただきたい。」


「そうか、皆を歓迎する。これからよろしく頼む、みんなで一緒に成長していこう。それじゃああらためて自己紹介をしよう、私はユーゴ=ヨシムラ。ニホンという辺境からやって来た、正直辺境育ちのためこの国の常識にかける部分はあるがみんな協力してくれ。」


「僕はエディ=オーリック、ユーゴ兄さんよろしくお願いします。」


「私はデボラ=サンティニ、オーリック家に仕えていた騎士のサンティニ家の長女で元騎士見習いだ。ユーゴ殿よろしく頼む。」


「私はセシール=ヤンヌ、エディ様付きのメイドでした。歳はデボラの一つ下で17歳です。ユーゴ様よろしくお願いいたしますわ。」


「ではさっそく雇用契約を結ぼう、契約書の内容をよく確認してサインしてくれ。」


 そうして三人と雇用契約を終えた所に奥さんがやって来た。


「ユーゴさん、会社? を初めるのですか。なんていうお名前なの?」


 そういや会社を立ち上げたはいいものの名前なんて全く考えていなかった。どうすっかな、元の世界では起業しようなんて考えた事も無かったしまさか異世界転生してなんちゃってとは言え起業するなんて夢にも思わなかったよ。何にしようかな、これから長い事使う事になるだろうし適当ってわけにはいかないよな。ここは集まった皆の目標に因むか。


「そうですね……、グランディール。私の故郷では成長という意味を持つ言葉です。」


「グランディールですか、素敵なお名前ですね。」


 会社名も決まり三人には早速宿を移る準備をするように指示する。ついでに昼食も食べてくるように銀貨を渡し見送ると主人が起きてきた。


「おはようございます、もう大丈夫ですか?」


「ああ、おかげさんで久しぶりに心からゆっくり休めた。」


「それは良かった、起き抜けの所もうし訳無いのですがお願いがあるんです。実は先程三人ほど人を雇う事になりましてこの宿に泊まらせようと思っています。つきましては今夜歓迎のパーティーを催そうかと思いまして今夜は貸し切りにしたいんです。それに加えて料理とお酒もご用意お願いできませんか? 併せてこの宿の再出発も祝いましょう。」


 そう言って金貨3枚を渡す。


「相変わらず豪気な奴だ、確かにパーティーは賛成だ。今日はみんなで盛大に祝おう、腕によりをかけさせてもらうよ。ただ金はいらん、こいつはケジメだからなウチでまかなわしてもらう。」


「そうですか、それではよろしくお願いします。」


 俺は主人の希望に沿い金貨を引っ込めた。その後主人と奥さんと三人で昼食を取り午後からはパーティーの準備に取り掛かった。





 三人は陽が暮れる前位に三人分とは思えないほどの大荷物抱えてやって来た、遅いと思っていたらこんなに荷物があるとは。


 早速荷物を運び込ませ荷を解かせる、ちなみに部屋は二部屋だ。エディは個人部屋でデボラとセシールは二人部屋。さすがに年頃の少年と女性を一緒の部屋にする訳にはいかない、断じて間違いが起きてはならないのだ。大人としての配慮でありやましい気持ちなど欠片もない、先にハーレムつくられたら立ち直れないなんて決して思っていない。幸い荷物の多くがエディの物のため配分としてはバランスが取れた。


 ある程度荷解きが終わり食堂に皆が集まると早速パーティーを始める、今夜は皆これまでの苦労から解放された喜びと明日への希望に胸を膨らませ大いに盛り上がった。


 主人も奥さんもデボラもセシールも酒を飲みホロ酔い加減になっている。エディの野郎身の上を聞いた奥さんに抱きしめられて胸に顔を埋めてやがる、なんてうらやま……けしからん。その後デボラとセシールにも抱きつかれモテモテである。クソっなんてこった、懸念していたことが現実に目の前で見せつけられるとは。子供に嫉妬するなんて大人気ないだって? 子供に嫉妬する大人がいてもいいじゃないか……人間だもの。


 宴もたけなわとなり場もお開きとなる。それぞれが自室に戻り俺はベッドで一人今夜の屈辱を爆発させた。


 賢者となった俺は後始末をしながらしみじみとこれまでの事を考える、テンプレチーレムを目指していたはずなのにどうしてこうなったのだろうか。


 これからどうなるかわからないからと奴隷を買うのを控えていたのに何故か避けようとしていた厄介ごとの全てに引っかかり会社を立ち上げ三人もの人間の面倒をみる事になってしまった。あれだけ偉そうなことのたまっておいて今更奴隷買ってきましたなんて言えなくなってないか? 自由気ままなテンプレチーレムはどこに行った? 本当に人生ままならない事の方が多いな。


 ただ夢は決して諦めない、チーレムを諦める訳にはいかないんだ。絶対に会社を成功させてこの夢叶えてみせる、そう一人誓い直すと飲みすぎたのか爆発の名残なのか催してきた。


 下におりて用を足し終え部屋に戻ろうとすると微かに嬌声が聞こえてくる、そう言えば奥さんエディを抱きしめながら子供が欲しいなどと色っぽくおねだりしていたな。今まで心にも家計にもそんな余裕はなかった訳だが今夜からは違う、解放された二人は酔いの勢いに任せてか随分と燃え上がっておりボルテージがぐんぐん上がっていく様が聞き取れる。


 リアルで知り合いをデバガメするなんてもってのほかだ、そう思いながらも足がすくんで動けない。


 そうこうしているうちに奥さんがひときわ高い声と共に天国の門に到達したようだ、同時に俺の利かん棒も先程爆発させてやったにも関わらず勝手に暴発しやがった。


 激しい自己嫌悪を引きずりながら部屋に戻ると後始末を終えベッドに横になり枕を濡らしながら明日は必ずムーランにルージュしに行く事を心に決める。

たくさんの方にお読みいただき誠に有難うございます。


取り急ぎ第1章までを投稿させていただきました。


投稿して見て気付いたのですが、ご指摘も頂戴した様に非常に読みにくくなっておりました。


少しでも読みやすくなる様に頭から手直しをさせて頂きつつ、書き溜めた分は直しを入れてから投稿させて頂こうと考えております。


また、明日より基本的に1話ずつ投稿していく予定でおります。


今後ともお引き立て頂けます様宜しくお願い申し上げます。


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