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桜狐奇戰録-spring impact-

作者: Cherry-Sound

目を開けると、ただ暗い空間が広がっている。

やけに広く、この世のどんな闇よりも黒く、

何も聞こえず、上も下もない空間。

仮に此処に光があるとすれば、それは

“自分”であるといっても過言ではないだろう。

ずっと眺めていると、まるで自分がどんどん“黒“に

溶け込んでいくように思える。

それが嫌で目を閉じる。しかしまた開ける。

景色が変わらずに“黒”だから。

しかしまた、自分がこの闇しかない空間に溶け込んで

ゆくように思え、目を閉じる。また目を開ける。

景色が全く変わらないから。

目を開ける。目を閉じる。

開ける。


閉じる。


開ける。


閉じる。


ただひたすら、この動作を一定の間隔で繰り返す。

次第に何も考えなくなる。

此処に来て当初は、この自分を染めようと

する“黒”に打ち勝とうと努力した。

ひたすら叫んだ。


身体を動かした。


助けを求めた。


“黒”に挑発した。


染まらないように目を閉じた。


なにも変わらなかったから、目を開けた。


再び閉じた。


開けた。


閉じた。


開けた。


いつしか、この動作がこの闇に打ち勝つ

唯一の抵抗になっていった。

叫んでも誰にも届かない。

身体を動かしても、感覚がない。

助けを求めても誰にも届かない。

だから、ただひたすら目を開閉する。

次第に自分の心は、この“黒”に溶けていった。

もう何百、何千、何万とこれを繰り返したのだろうか。

ここから出たい、そんな考えはもう消えていた。

そして、新しい感情が生まれた。

この黒しかない世界で生まれた、黒になった自分に

生まれた、ちっぽけな欲求。


ボクをこんな目にあわせた奴をミツケテ、

同じように黒くしてやる・・・・!

どうして、どうしてボクが、こんな目に。

許さない。

許さない。

許さない!

許さない!

許さない!




    

緑色のペンキで塗られたベンチに横たわり、

ハルは思い切り伸びをした。

すると気持ちの良い風が、疲れた体を優しく撫でた。

隣には満開の桜の大木があり、風でそよそよと

頭上の枝が揺れる。強い風が吹くと桜吹雪が舞う。

「風流だな~・・・」

ハルは小声で囁いた。

今日は、新学期最初の学校だった。

言うまでもない、始業式だ。

ハルはもう高校二年生になっていた。

しかしいくつになっても新学期の空気には、

慣れない。

ほんの一か月前には当たり前だった高校生活が、

春休みという期間を経て一変する。

新しい教室、新しいクラスメイト、新しい学年、

新しい生活。

何もかもが新しくなりすぎて、正直嫌になる。

しかし、今日は良いことが二つあった。

親友が二人とも、同じクラスだったことだ。

これでしばらく、知りもしない子に声をかけ、

親睦を深めるという苦労をしないで済む。

何故だか自分は、周りに知り合いが一人もいなく

なると妙に心細くなり、必死に自分を紹介し、

新たな友達を作ろうと努力する。

しかし、反射的にしていることなので、

すごく疲れる。おまけにアピールポイント

が酷すぎるので、いつも赤面してしまう。

去年なんて、自分の幼稚園時代に男子六人から告白

されたなどという自慢話を、一人の女子に

延々面と向かって話しており、両者ともに顔を真っ赤にした。

だが今年は、そんな愚行をしないで済むと思うとホッとする。

それともう一つは、“自分は女として一歩成長した”

と思えるようになったことである。

豊満な胸にやや高い身長、整った顔立ち。

この数週間で、自分は劇的に変わったと心底思える。

つい最近まで自分は、なんて子供っぽいんだろうと

ばかり考えており、その度に落胆していた。

だが、ある朝洗面所の鏡で自分の姿を見たとき、

その可憐な姿に仰天し、高揚した。

更には今日、教室で友達に、

「ハルさんさ〜、なんか大人っぽくなったじゃない?」

と言われたときは、謙遜していたが心の中は、

ほくほくしていた。

「やだあたしってば、いつの間に大人な女になったのかしらぁ」

あの時言われたことを思い出し、誰もいない

神社のベンチで、自分の顔に両手をあてにんまりとした。

そう、今日の始業式はハルにとって珍しく、

いいこと尽くしの一日だったのだ。

下校中、何気に丘の上にある神社の桜の木に目が留まった。

その凛としながらも、迫力ある佇まい、

そして咲き乱れた満開の桜に魅了され、

今現在、自分は一人花見を楽しんでいる。

家に帰っても、両親は仕事の都合上

戻ってこないので、今日一日中家に、一人。

だから何時間でも、ここにいることができる。

やがて緊張の開放からか、睡魔が襲い、まぶたが重くなる。

しかし、自分はそれに身を委ね、ゆっくりと目を閉じる。

周りには誰もおらず、ただ桜のそよぐ音だけが聞こえてくる。

徐々に自分の意識が、心の深淵に沈んでいくように感じられた。

すると誰かが、自分の頬を指でつついてきた。

(んん~、何ぃ・・・?)

ハルは微睡んだ意識で、その姿を確認しようと目を開けた。

しかしそこには誰もおらず、目の前には

風でゆらゆらと揺れている桜の木が写った。

起き上がり、目をこすってもう一度辺りを確認した。

やはり誰もおらず、ただ古い本堂が建つ神社の

光景が広がっていた。

「あれ?」

ハルは小首を傾げ、一体“何”が自分の頬に

触れたのか不思議に思った。

どこからか本堂の裏へと駆けていく

足音が聞こえてきた。

急いでそれを追いかけ、本堂の裏へと

回り込んだ。

すると、そこには・・・・・・

「・・・・ルさん?ハルさん?

お~い、はるさ~ん!」

「は、何⁉」

気が付くと自分は、教室の机に突っ伏し寝ていた。

目の前には、長い髪をポニーテールで結び、

顔立ちの整った清楚な感じの少女が立っていた。

「あれ、弥生?」

「もー授業終わったよ」

どうやら自分は、授業の最中に寝てしまい、

そのまま休み時間に突入したらしい。

しかし、さっきまで自分は“学校の教室”

ではなく、“神社のベンチ”で寝ていたはず。

「ハルちゃん、こないだの遊園地の

写真出来上がったよ」

後ろから背が低く、見るからに

小学生といった感じのショートヘアの少女が、

可愛らしい声で話かけてきた。

「えっ、七海ちゃん?」

「お、どれどれぇ」

七海はハルの机に、先日の日曜日に行った

遊園地の写真を何枚か出した。

「ハルさんホントに大丈夫?さっきから

ボーッとしてるけど」

「えっ、う、うん」

ハルは不安なさげに返事した。

「ハルちゃんなんか、朝から元気なかったよ」

朝から。そうだ、自分は最初から学校にいたんだ。

ただ昨日の出来事を夢で見ていた。それだけ。

段々とその時のことが思い出してくる。

「別になんでもないって!」

ハルは満面の笑みで返事をし、

(ホントになんでもなかったら、

どんなによかったか・・・・)

ハルたちは、机にばら撒かれた写真を、一枚一枚

見ていった。

「あららぁ、ハルさん目ぇつぶっちゃってるよ」

「弥生ちゃん、どれ?あ、ほんとだ。

ハルちゃん写真写り良いのに、勿体ない」

『そうかぁ、わしはこれがハルの元々の

顔のように思えるぞ』

「もぉみんなひどいよぉ・・・・ってえぇえぇぇ~⁉」

ハルは豪快に驚き、椅子から転げ落ちた。

「ど、どうしたの⁉」

「ハルちゃん、大丈夫?」

「あはは、大丈夫大丈夫。ごめん、

あたしちょっとトイレ行ってくる」

「なんだぁ、生理かぁ?」

弥生のからかいを無視し、ハルは足早に走って

行った。

「珍しいね、いつもはちゃんと反論するのに」

七海は不思議に思い首を傾げた。

「もしかして・・・・」

「もしかして?」

「ホントに生理なんじゃ・・・・」

「七海、あんた意外に天然だね」

ハルはトイレへ行くと言ったが、その足は

裏庭へと向かった。ここは、滅多に

人が来ないからだ。

「なんなんじゃあ?こんなところに連れてきて」

「はぁ、はぁ、あんた、何でここにいんの⁉」

「なんでって、だから朝にもゆうたじゃろう。

学校とやらにわしも行きたいと」

「大人しく留守番しててっていったじゃん!」

「お主、神に門番させる気か?」

ハルは怒りに加え、一種の後悔のようなものが

湧き上がってきた。

(昨日お花見なんかしなけりゃ・・・・)

あの日、ハルが本堂の裏手に回り込んだ時、

ハルは、一人の少女に出会っていた。

とゆうより、見つけた。

彼女は本堂の裏手で倒れこみ、苦しそうな

うめき声をあげていた。

最初ハルは、何か大変なことが起き、それで

自分に助けを求めたのだと思った。

「大丈夫⁉」

仰向けにして呼びかけたが、反応は無かった。

「えっと、えっと、救急車、救急車!」

ハルは携帯を取り出し、通報しようとした。

しかし初めての経験からか、上手いこと

ボタンが押せない。

やっと119を押し終え、発信ボタンを

押そうとした時、

「ぐぎゅぐるるるるるる・・・・」

自分が膝枕しているその子の腹から、

それは確かに聞こえてきた。

(まさか・・・・!)

そう、彼女は空腹のあまり、行き倒れていた

だけだったようだ。

「みゅうう~」

「えーっと・・・・あ、ちょっと待ってて」

ハルは少女を側の木にもたれるように座らせ、

自分の鞄から今日の帰りにコンビニで

買った『牛肉そぼろ稲荷寿司』を取り出し、

差し出した。

「はい」

少女はハルの持っていた稲荷寿司をひったくり、

目をぎらつかせながら貪りだした。

「もっと落ち着いて食べなよ~」

ハルは少女の姿を今一度見直した。

つり気味の瞳に子供ながらも整った顔立ち、

長い黒髪に白い肌、頭に生えている狐のような

尖った耳。今時には珍しく、巫女装束の恰好を

している。

(ここの巫女さんかなぁ?にしても・・・

何で猫耳?)

少女はハルの買った稲荷寿司、五個入りパックを

全て完食した。

「ふぃ~、お腹いっぱいじゃあ。助かったぞ、娘」

「ふふ、どういたしましてっ」

(あたしよりもずっとこの子の方が娘、

なんだけどなぁ)

「お主、名をなんと申す」

「桜咲、遥です。みんなからは、

ハルって呼ばれてます」

ハルは少女の独特な口調に、少し違和感を

感じた。

「ハルか。わしはみぃ子という者じゃ」

ハルは少女の名が、変わっていると思った。

そう、まるでペットにつける様な名だと。

「は、はぁ。ヨロシクね、みぃ・・・」

しかし、少女がなぜこれほどまでに

上から目線なのか、訳がわからなかった。

少女はそんなハルの気持ちを察したのか、

「まさか、お主わしのこと知らんのか⁉」

「え~っと、ちょっと、わかんない、かな」

ハルは無理に苦笑いをして答えた。

すると“みぃ子”は大変驚いたらしく、

目を見開いて固まっていた。

「じゃあ、なぜわしを助けたんじゃ⁉」

「いや、お腹空いてそうでかわいそ~

だなぁって思って」

「わしが、神様だからじゃなくて・・・」

「神様? ああ~」

ハルはその時、やっと状況が理解できた。

そう、今この子は、神様ごっこをしているのだ。

(それで巫女に猫耳かぁ)

「ううん、もちろん知ってましたよ」

「やっぱり知っておったか!」

みぃ子は満面の笑みで笑った。

どうやら、自分を“神様”と認識してもらえたことが相当

嬉しかったらしい。

「しかし、わしのことが今だにこの町の者に認知

されているとは、感激じゃ!」

みぃ子はぽろぽろと泣きはじめ、ぐしぐしと

涙を拭った。

(凄い・・・・)

ハルはこの少女の演技に、関心するばかりだった。

「ねえねえ、その耳って・・・」

「ん、これか?これは単なる飾りみたいな

もんじゃ。ほれ、ここにちゃんとした

人間の耳だってあるし、しかしどうだこの狐耳、かわいかろう?」

そう自慢げに言いながらみぃ子は、髪を分け

自分の人間の耳を見せた。

「あ、じゃあやっぱりそれじゃなんも

聞こえないんだ」

「いや、これは“人間の声”じゃなく、

“人ならざるモノ”の声を聞くためのもんでもあるんじゃ!」

「ふう~ん」

ハルは子供ながらに複雑な設定で遊んでいることに、

少々感心した。

「ねえねえ、それ、あたしにも貸して」

「ふぇ?」

「ちょっとだけだからさ~お願い!」

「いや、なにをじゃ?」

「その耳に決まってるじゃん。

ちょっとだけちょっとだけ!」

ハルはみぃ子の猫耳を外そうとした。すると、

「ちょ、痛い!やめんか!」

猫耳はみぃ子の頭にしっかりとくっついて

外れない。いや、“外れない”と言うよりは、

「まさか・・・・ホンモノ?」

「当たり前じゃ!」

みぃ子は腰に拳を当て、背中を反らしながら言い放った。

よく見てみると狐耳は、微かだがひくひく動いている。

「ひゃあ!」

ハルは猫耳から手を離して、後ずさった。

「あ、あなた一体・・・⁉」

「だからわしは、“この街の狐神”じゃと・・・・

知っておったのではないのか?」

みぃ子はまだ痛むのか、耳をさすりながら言った。

「いや、だって・・・・」

そのとき、ハルの脳裏に昔祖父から聞かされた

伝承が過った。

かつてこの地は、『妖者(ヨウジャ)』と呼ばれる人間の欲の化身が

人々に憑き、彼らを欲望のままに暴れさせた。

それによりこの地は荒れ果て、いつ滅んでもおかしく

状態だった。

しかし、北方より化け狐が来たり、この地の僧侶と協力し妖者を

鬼獄キゴク』と呼ばれる牢獄をこの世と地獄の境に造り、

総て封じ込んだ。お陰でこの地は再び安寧を取り戻したそうだ。

そして、人々はこの地を救った化け狐を神格化し、奉ったそうだ。

その場所こそ、今ハルたちがいるこの『聖狐神社』なのだ。

そして、その狐神は、今自分の目の前にいる。

「うそ・・・・」

ハルの頭は、今おきている現実に対する整理がつかず、

徐々に真っ白になっていく。

ハルはみぃ子に背を向け、急いでここから立ち去ろうと

走り出した。

「あ、これ待て!」

(面倒なことに巻き込まれんのは、絶対にイヤ!)

しかし、いくら走っても追ってくる気配はなかった。

ハルが後ろを振り返ると、みぃ子は片膝をついて、

自分の踝をさすっていた。

「いたた、草履の鼻緒が切れてしもうた」

ハルはその光景を見て、不思議な気持ちになった。

祖父から聞いた当初は、その化け狐に対し、

少し怖いと思いながらも、どこか尊敬の念の

ものを抱いた。

しかし、今自分の背後にいるこの化け狐は、

空腹で行き倒れたり、ドジってこけたり、

どこか“子供らしい”と思えた。

容姿もパッと見は、普通の子供だし。

ハルはしゃがんでいるみぃ子に、

手を差し伸べた。みぃ子には、その

姿が夕日に照らされ、妙に神々しく見えた。

「大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃ!これしきのこと」

そう言うとみぃ子は、袴を叩きながら立ち上がった。

よく見るとみぃ子の服は泥で汚れ、白い生地には

黒いシミができていた。

「なぁ、ハル」

「何?」

「わしを騙したことは、今回は特別に不問にしてやっても

よいぞ。じゃが、そのかわり・・・・」

「その代わり?」

「今晩、わしをお主の家に泊めてはくれぬか?」

唐突なお願いにハルは、少し戸惑った。

「え、だってあなたの御家は・・・」

そう言いながら神社に目を向けた。

「・・・・から入れん」

「ん、何?」

「か、鍵がかかってるから入れん!」

「・・・・・・ぷっ、あっはっはっはっはっはっ!」

頬を赤らめ叫んだその言葉は、あまりにも子供らしく、

神様なのに魔法かなにかで鍵を

開けられないというみぃ子の告白に、

可笑しすぎてハルは腹を抱えて笑った。

「うん、いいよ!」

「あ、有り難う。しかし、何で笑った?」

「いやちょっと、かわいかったから」

「なんじゃそら」

そしてハルは家路についた。

この町の、可愛らしい神様を連れて。

そう、彼女は本当に“かわいかった”。

しかし、それからは、地獄が待っていた。。

家に着くなりみぃ子は、よほどハルの部屋に

あるものが目新しかったのか、楽しそうに燥ぎだした。

お陰で部屋が散らかり、ハル一人で掃除する羽目になった。

一緒に風呂に入った時も、ハルが髪を洗ってあげたときは

大人しくしていたが、浴槽に浸かって暫くすると、急に

クラクラし始め、ハルが大丈夫かと聞くと、大丈夫とみぃ子は

顔を赤くして答えた。しかし、意味の分からない言動を

呟いていたので、ハルは全然大丈夫ではないと確信し、

急いで風呂から上げた。聞くとみぃ子は、湯浴みは

好きだが弱く、よく湯渡りをしてしまうらしい。

ハルはこの日のうちで、ボロボロだった。

肉体的にも精神的にも。

(この子と違う神様、どうか私に安息を・・・・)

挙句の果て、みぃ子は今朝、玄関で“学校へ行きたい”と

愚図りだし、ハルはそれを何とかなだめた、

かに思えた。だが実際は・・・・

「みぃさん、どーやってきたの⁉」

「どーやってって・・・・」

「まさか、家開けっ放しで来たの⁉」

「失礼な!ちゃんとしめてきたわい」

「どーやって?」

「ハルの持ってた鍵を拝借して、それで閉めた」

みぃ子は体を大きく反らせて自慢げに言った。

(どーりで朝、鍵が見つからなかったわけだ・・・・)

ハルはみぃ子の好奇心と狡猾さに、呆れて声も出なかった。

すると校内にチャイムが鳴り響き、授業の開始を告げた。

「兎に角、今日は一日、大人しくしてて!」

みぃ子の姿は、今のところハルにしか見えないが、

喋れば多少の声は聞こえるし、物にも触れることができる。

だからみぃ子が燥げば、それだけで大騒ぎになる。

(想像しただけでゾッとしてくる・・・・・・)

「大丈夫、わしも大人じゃ。だから安心して授業を受けい」

(昨日から全然大人っぽいところ見てないん

だけどなぁ~・・・)

ハルとみぃ子が教室へ戻るために廊下を

歩いてると、数人の教師が二人を追い越して行った。

「何かあったんじゃろうか』

「ホント、どうしたんだろ・・・」

「まさか、みぃさんのことバレたんじゃ・・・・」

ハルは横目でみぃ子を睨んだ。

『な、なんじゃその目は!』

すると何やら、言い争うような声と、それを宥める女性

教諭の怒鳴り声、女生徒の悲鳴やガラスの割れる音が

聞こえてきた。

「お前が僕を無視してたんだろぉがあ‼」

「さっきから何言って言ってんのか訳わかんねえん

だよ!」

ハルは怯えている七海に駆け寄り、

「何があったの⁉」

「わかんない、急に速水君が男子たちに掴み

掛かって・・・・」

ハルは、体格の良い男子に掴みかかっている小柄な

男子に目が行った。普段彼は大人しく、

喧嘩なんて絶対しない。

「じゃあ、なんで・・・・」

すると、男子教諭が数人走って来、暴れている彼を取り押さえた。

「放せ!お前等も僕を、僕をおぉおぉ‼」

彼の眼は瞳孔が開き、涎を垂らしながら教師に怒鳴り散らている。

明らかにハルの知っている“速水君”ではなかった。

「・・・・・・‼」

すると彼は焦点の合っていない二つの眼でハルを睨んだ、

ような気がした。

彼はあっさり教師たちに拘束され、どこかへと連れていかれた。

「みぃさん、これ・・・」

みぃ子はそんな彼を、ただ黙ってみていた。

しかし、その目はどこか、危機感を抱いている様に思えた。

その後のHRでは彼について、担任は何も言わずに終わった。

帰宅し、部屋で宿題をしているハルはみぃ子に聞いてみた。

「ねぇ、どうしてみぃさんはその、速水君のこと見てたの?」

「ハル、書道具はもっておるか?」

「うん、持ってるけど、どうし・・・」

「急いで持って来い‼」

その剣幕にハルはたじろき、恐怖すら覚え、怯えた。

急いでクローゼットの棚から小学生の時以来使っていない

習字セットを取り出し、みぃ子に渡した。

みぃ子はベッドを上でそれを広げ、墨汁を鑢に注ぎだした。

「すごーいみぃさん、使い方わかるんだ」

そのとき二階から電話の呼び鈴が聞こえ、

ハルは二階へと降りていった。電話に出てみると、

『ハルぅ~』

(げ、その声は・・・・)

紛れもなく、それは母親の声だった。

「どーしたの?」

『お母さんの仕事ねぇ、欠勤だった人が来て手伝って

くれたから、今日中に帰れることになってねぇ』

「ええ⁉」

『なあに?母親がかえってくるのそんなに嫌?』

「いや別に、嫌じゃ、ないけど」

みぃ子のことを、母になんて説明したらよいか

まだ考えていなかった。

「ああそーだ、お母さん、今日のおやつまだ

買ってなかったから帰るついでに買ってきて!」

『ええ~やだよお。だって・・・・』

そのとき玄関のドアの開く音が、聞こえた気がした。

(まさか・・・・)

「だってもお着いちゃってるも~ん!」

ハルは急いで玄関へと駆け下りた。そこには

高校生の母親とは思えない、若若しく、背の高い女性が、

旅行鞄をさげて立っていた。

「もう、だからそのドッキリはやめてって言ってるでしょお!」

「あら珍しい、いつもはそんなに怒らないのに。

はいお土産」

いつもならまだしも、今は、説明しずらい事態が起きている。

「あ、パパも今日帰ってくるから」

「ええ⁉」

マズい、マズすぎる。ハルはそう思い、頭が混乱してくる。

「お~い」

「おっ、噂をすれば」

(どうしよどうしよ、とりあえず今日は、かくれんぼだって

言って押し入れにみぃさん隠して、あとは・・・・」

「鍵忘れちゃってさ~、悪いけど開けてくれない?」

「ふふ、あわてん坊さんねぇ」

ハルの母親は、微笑みながら玄関のドアを開けようとした。

すると、

「開けるな!」

みぃ子が慌てて、階段から下りてき、彼女を一喝した。

(ええ~なんで下りてくんのぉ~‼)

「あれ、ハル、この子は?」

「ええっとこの子はその、七海の妹で、猫耳は趣味で・・・」

どう言い訳した良いかわからず、ハルは一人あたふたとした。

「ちょ、みぃさん!なんでおりてくんのよお!」

ハルは小声でみぃ子に注意した。するとみぃ子は、

「お前、誰だ?」

ハルを無視し、唐突に父親に尋ねた。

「ええ、何いってんだよ。ふざけてないであけてよぉ」

「今から二三質問をする。それにすべて答えたら開けてやる」

「ちょ、勝手に何言って・・・・」

ハルはみぃ子の訳の分からい言動に、苛立ちを覚えていた。

「まあまあ、面白そ~じゃん。

パパぁ~頑張れ~」

「このド天然・・・・!」

「仕方ないなぁ、早くしてくれよぉ、寒いんだからさぁ」

そう言うと、みぃ子の不可解な質問が始まった。

「この家の家族は何人?」

「三人。なあ早くしてくれよお」

父親の言葉を無視し、みぃ子は間髪入れずに質問を

続ける。

「それは、両親に娘一人か?」

「当たり前だろぉ、なあいい加減・・・」

「ほら、遊んでないでさっさと・・・」

ハルが開けようと、ドアノブに手をかけると、

「じゃあ・・・・・私はその内の誰?」

「・・・・・・・・・」

「答えられんのか?」

「・・・・・・・ハルぅ、イジワルしてないで、

早く開けてよ~」

その瞬間、ドアの向こうからドス黒い

空気がドアの隙間から染み出てくる様な感じがし、

ハルと母親は、不快感と恐怖で膝をつきそうになった。

今、ドアのガラス越しに見える人間のシルエットは

、紛れもなく父親の物だ。

しかし、その微かにゆらゆらと揺れているそれは、

ハルにはどこか不気味に捉えられた。

「あなた・・・・誰?」

最初に口を開いたのは、母親だった。

声をしぼりあげる様に言った後、

ハルもまるで怪物でも見るかの様に、父親の影を一瞥した。

「・・・・っ!ふせい‼︎」

みぃ子は跳んで二人の首根っこを掴み、絨毯の

敷いてある玄関の床に伏せさせた。

その瞬間、金属製のドアが、まるで何かに弾かれた

みたいに、二人めがけて飛んできた。

しかしドアは二人の頭上を通過し、背後にあった

靴箱に、激しく音を立ててぶち当たった。

三人が飛んできたドアをどけ、玄関に目をやると、

ハルの見覚えのある人物が立っていた。

不敵な笑みを浮かべ、周囲にドス黒いオーラ

を漂わせながら立っている詰め入りの制服を着た小柄な男性。

「速水、君?」

「やあ、桜咲さん」

「速水君、どうして・・・・」

続きを言おうとしたその時、ハルはある事実を確信した。

これは、速水君じゃない。父のフリをし、家に入ろうとした

“何か”は未だ正体を明かさず、速水君のフリをして、

こちらに話しかけている。

「いい加減素顔を明したらどうじゃ?」

みぃ子が“何か“を鋭く睨みながら言った。

すると、先ほどまで浮かべていた、不敵に満ちた

笑みが彼から消え、まるで石ころでも眺めるように

みぃ子を見下し、

『威勢がいいな、子狐』

その声は憎悪と欲望に満ちた、とても禍々しい、

低い男の声だった。

『どうした、御前の力で俺をもう一度鬼獄に堕としてみろ』

そういいながら“何か”は両手を広げて見せた。

「くっ・・・・・!」

みぃ子はそれを、悔しそうに歯を食いしばり、

更に目をつり上げて睨みつける。

『なんだ、できないのか?だったら・・・・』

「だったら?」

『代わりに俺がお前の心を黒く染め上げてやる‼』

ハルはその“何か”の怒りの形相に恐怖で震え、

全身から冷や汗が噴き出すのがはっきりとわかった。

「やれるもんなら、やってみい‼」

みぃ子は彼の顔めがけて、札のようなものを

投げつけた。

それが彼の顔に張り付き、燃えるように青く光りだした。

『あっ、あァぁアァああア‼』

“何か”は顔を押さえ、悲鳴とも叫びともとれない声を

あげ、苦しみだした。

ハルは反射的にみぃ子の腕を掴み、彼を押し倒し

外へと走り出した。

空には星が疎らに輝き、金色の月明かりでアスファルトの

地面が照らされ、疾走する二人の影がくっきりと

浮かび出している。

「ちょ、なんで逃げるんじゃ⁉」

「いや逃げないと絶対に殺されるって!大体、あいつ一体何なの⁉」

ハルが尋ねると、みぃ子は暗い表情になり、語り出した。

「奴の名は『喰独クドク』。人と関わりの乏しい人間に取り憑き、

無理やり疎外感や劣等感を引き出し喰らう、妖者じゃ」

ハルは“妖者”という単語を聞いて、ドキッとした。

「妖者って確か、みぃさんが封印した・・・・そいつが

なんで速水君に取りついてるの⁉」

「恐らく、弱まっていた封印を自力で解いたんじゃろ。

そして速水とやらに取りついた。じゃが、其処に偶然、

自分を封印した仇敵を見つけた。即ち、このわしじゃ」

その時、ハルは何故かあの時速水君は自分ではなく、

傍にいたみぃ子を睨んでいたのだと、直感した。

すると背後から、なにかが迫ってくのがわかった。

気配というよりは、周りの空気の震えから。

ハルが走りながら振り返ると、黒いボロボロの甲冑を

纏い、両腕が異常に長い骸骨が、四つん這いで金切り声

をあげながら猛スピードで迫ってくる。片方しかない

赤い肉眼を、窪んだ目の穴からぎらつかせながら。

『キィギァあぁああぁあ!』

「ぎゃああああああ‼」

ハルはみぃ子の腕を掴み、両足に渾身の力を込め、全力で走り出した。

「完全に覚醒しとるな・・・・」

「みぃさん、ホントにあんなバケモンに勝てんの⁉」

するとみぃ子は自信気にニヤリと笑い、

「まぁ見とれ」

そしてどこからか札を一枚取り出し、喰独に向かって投げた。

すると後ろから、ドンッという爆発音が響き、奴の周りを

黒煙が包み込んだ。

「見たか!これがわしの『爆砕滅沈符(バクサイメッシンフ)』の威力・・・・・」

『効かぬぞぉぉぉ子狐ぇええぇえ‼』

みぃ子の言葉を遮り、喰独が黒煙の中から叫んだ。

「全然効いてないじゃん‼」

「なら今度は、たらふく喰らえい!」

そう言ってみぃ子は、大量の呪符を、奴目がけて投げつけた。

それらは奴の体に当たる度に爆裂したが、奴はその全てをもろとも

せずに二人との距離を少しずつ縮めていく。

「ちょっとぉ!みぃさんのお札、さっきからまるでダメじゃん‼」

ハルが怒鳴るとみぃ子はすねたように、

「う~ん、ハルの習字具では、威力が半減するようじゃ」

「なにあたしのせい⁉」

(・・・じゃが、このままではいずれ詰まれる。おまけに

わしの自慢の呪符も、奴には効かん。となると・・・・・)

そしてみぃ子は、一つの決断を下した。

「ハル、わしが時間を稼ぐ。その隙に、神社に向かって

死ぬ気で走れ」

「もぉ、さっきから逃げて、死にそう、なんですけど・・・」

そう言うと、みぃ子は呆れたように顔をしかめ、

「なら、走ったその先でくたばっとけ‼」

みぃ子は襟を掴んでいるハルの手を振りほどき、大きく跳躍した。

そして指で挟んだ一枚の呪符を、喰独ではなく、地面へと叩きつけた。

するとそこから白煙が巻き上がり、みぃ子と喰独の周りを

包み込んだ。その瞬間、ハルは持てる力すべてを両足に注ぎ、

丘にある神社に向かって走り出した。

(みぃさん、ゴメン。でも・・・・しっかりおとりやってね‼)

丘を駆け上がり神社に着くと、其処には誰もおらず、

大きな桜の木がまるでハルを待っていたかのように、

悠然と立っていた。

周りからは虫の音が聞こえ、此処には自分一人である

ことをより一層強調させる。

下の家々には明かりが灯り、先ほどの騒動が

嘘のように思える程に、静かで平穏だった。

ハルはそんな町を眺め、小さくため息をついた。

すると石段から、何かが足音を立てて上がって来るのが

聞こえてきた。

心臓の鼓動は急激に高鳴り、額を汗が伝い、冷えた地面へと

ポタポタと落ちてゆく。視界が緊張と恐怖で次第に霞んでいく。

そしてハルの目に、最後の石段に手をつき、這い上がってくる

モノの、小さな片方の手が写った。

「ひぃっ!」

すると・・・・・みぃ子が顔を真っ赤にし、ハアハアと荒い息遣いを

しながら、石段を這い上がってきた。

「みぃさん⁉」

みぃ子は石段を最後まで登り切ったが、そのすぐ側で

へたれこんでしまった。

「ちょっと、大丈夫⁉」

ハルがみぃ子の所に駆け寄り、手を貸すと、彼女は

フラフラと立ち上がり、

「酷いぞハル!ホントに置いていく奴があるか‼」

両腕を天高く突き上げ、ハルに向かって怒鳴った。

「ごめんごめん。で、これからどーするの?」

突然みぃ子は、険しい表情になり、

「それを決めるのは、お主自身じゃ」

ハルは、なぜこれからすることを自分が決めるのか、

分からなかった。

「まぁ、考える時間は幾らでもある。奴に結界を

張ってきた。暫くは抜けれんじゃろ」

みぃ子が自信気に言うので、ハルはなんとなく、

「それってどれくらいもつの?」

「長く持って、二分くらいかのぉ」

「ちなみに、結界張ってどれくらい経つ?」

「そうじゃなぁ、そろそろ・・・二分かな」

「じゃああと一秒もないじゃん‼」

「落ち着けハル。そんなことわしだって分かって・・・・・・

ホントじゃ!どどど、どーしよぉぉぉぉ‼」

みぃ子はあたふたとし、その場を駆けずり回った。

「それは、こっちのセリフだって!ホントどうすのよぉ⁉」

なんとかみぃ子は平静を取り戻した後、ハルに尋ねた。

「単刀直入に聞く。お主、わしのことが好きか?」

「は?」

ハルは質問の意味が、全く分からなかった。

「どしたの、急に」

「あぁ、済まない、順を追って説明した方が良いな。実は、

わしは長い間、この神社に封印されており、神としての力が極端に、

弱くなってしもうた。奴の封印が解けたのもそのせいじゃろう。

じゃがわしが再び、神に返り咲く為には、『信奉者』が必要なんじゃ。

さあ!選べ、桜咲遥!わしを神として崇め奉るか、否か‼」

みぃ子はハルを指さし、言い放った。その姿は、先程までの

『子供じみた神様』ではなく、『聖狐町の主神』の名に

相応しい、凛としたいで立ちであった。ハルはその選択に・・・・・

「ちょっと、考えたい、かな?」

「えぇ‼なんでじゃ⁉」

「だってそんなこと急に言われたって・・・・」

その言葉に、みぃ子は苛立ったようで、

「だあもぉ!こうゆうのは黙って首を縦に振るのが筋ってもんじゃ!」

ハルはそう言ったみぃ子に対しカチンとき、

「なんでお願いしてる相手に対してそんなこと言えるのかなぁ!」

「しょうがないじゃろ!それしか方法がないんだから!」

「大体みぃさんはそーゆうとこが・・・・」

言いかけたその時、ハルは何だか馬鹿馬鹿しくなり、

「だあもお、分かったよ!」

「え?いやそんな、簡単に決めなくても・・・・」

するとハルはみぃ子に、

「簡単じゃないよ。すっご~~く悩んで決めましたっ!」

しかしみぃ子には、ハルが悩んで決めたと、どうしても思えなかった。

そんな彼女をよそに、ハルは微笑み、話を続ける。

「元々みぃさんが選べって言ったんじゃん。

大体、それしか助かる方法がないんなら、他に選択肢なんか

無いんじゃない?」

「まぁ、それはそうなんじゃが・・・・」

みぃ子は少し困ったように言ったが、すぐに表情を

パアッと明るくし、拳を手のひらに押し当てながらニヤリと笑い、

「そうか!わしもそう言ってくれて、こんなに心強いことはないぞ。よおし、

そうとなれば、さっそく反撃開始じゃ!」

しかしハルは、みぃ子はまだ何もしていないのに戦うのかと

思い、彼女に聞いた。

「え?みぃさんもう、戦って大丈夫なの?」

するとみぃ子はキョトンとし、

「ん? 何がじゃ?」

「だって、みぃさんまだ神様の力取り戻すおまじいみたいなの

、あたしに全然してないから」

するとみぃ子は笑いながら、

「ああ、それはもう済んでおるぞ」

「ええ⁉みぃさん、あたしになんかした⁉」

ハルは自分の体を確認したが、別段、どこも変わった様子はなかった。

「ムフフ、ハルがわしを“神”として受け入れるとわしに言った時点で、

この、『交魂の儀』はお終いじゃ。喜べハル!これでお主は晴れて、

わしと心を交わす、『絆信者キシンモノ』じゃ!」

「・・・・・・・・」

みぃ子の言葉に、ハルはなんて簡単な儀式だと少し呆れた。

そんなハルの気持ちをよそに、みぃ子は一人境内の入り口へと歩いて行き、

扉の前に立った。ハルはみぃ子が取り戻した力で扉を開けると思い、

(あ、この前中に入れなかったのはやっぱり、力が衰えたから

だったんだ)

しかし、よく見てみるとみぃ子の右手には、小ぶりの石が握られていた。

みぃ子はそれでガラスを割り、内側から鍵を開けて入っていった。

(まさかみぃさん、ハナからそんな力持って無いんじゃ・・・・)

みぃ子が中から出てくると、手には何やら沢山の物で溢れていた。

みぃ子はそれらをフラフラと、危なったかしく持っている。

「さぁ、準備するぞ。ハル、お主も手伝わんか!」

(明らかに神社から祭具盗む、ただの盗賊・・・・にしか見えない)

みぃ子の言われた通りにし、一通り準備が完了すると、

背後の空気が黒くなっていくのが、肌で感じられ、振り返ると、

喰独が呻き声を上げ、一歩一歩石段を上がってきた。

しかしその姿は、ハルがいつも学校で見ている、速水君だった。

『なんだ、何もしてないのか。小細工はお前ら狐のよく使う手だろ?』

速水君の声に、呻く様な低い声がダブり、ハルにはそれが禍々しく

聞こえた。しかし、ハルは怯まずに、

「うるさい!速水君を、返せ!」

喰独はそれをあざ笑うように、

『なにを言っている?そもそも俺を呼んだのは、こいつだ。

いつも一人、誰にも相手にされない。他人に関わるのが苦痛な筈なのに、

それを渇望していた。その心の声が俺を呼び寄せ、そして受け入れたんだ』

「嘘だ‼速水君がそんなこと・・・・」

しかし喰独はそれを遮り、

「ひどいよ、桜咲さん。桜咲さんだけは、僕の味方だと思ってた。

でも、高校に入ってクラスが変わった途端に、僕を相手にしなくなった。

そうだよね、こんな暗くて、殆どしゃべらない奴、苦手だよね?

桜咲さんの気持ちに気づかずに、すがったりなんかして、ごめん。

でもどうして、僕を相手にしなくなったの?どうして?どうして?」

「・・・・・・」

ハルは俯き、目の前にいる彼の顔を直視できなくなった。

それが喰独が、速水君の声でそんなことを言わせているからなのか、

それとも、彼に何もできない、罪悪感からなのかは、

ハルには分からなかった。

だが自分の心が、彼の言葉で黒く染まっていくように思うと同時に、

自分はどれだけ非力で、ひどい人間だと思え、疎外感で徐々に

精神が蝕まれていく感じがした。

「やめろ!ハルの心まで喰らおうとするな‼」

みぃ子はハルを庇う様な素振りをし、さらに目をつり上げ

喰独に向かって怒鳴った。

『はっ!なにを吐かすか。自分の町に、民に捨てられたくせに』

ハルはぼんやりとした意識の中で聞いた言葉の意味が分からなかった。

喰独は言葉を続ける。

『お前は本当にこの町の民に愛され、崇められていた。それこそ、俺たち

妖者が嫉妬するほどな。だがお前は、そんな優しくて欲深い人間に、

裏切られた。何が主神か!聞いてあきれる!お前は勝手に愛され、

勝手に裏切られた!だがもうお前を知っている者など、この町の

何処にもおらんわ!弱く、哀れで、愚かな子狐め。

貴様は最早、誰からも必要とされていないぞ‼

はは、ははははははは!』

「ははは、そうじゃな。確かにわしは、愚かだ。勝手にこの町に来て、

親切にされて、馬鹿みたいに盛り上がって、この町を、

貴様らみたいな薄汚い欲の塊から守ってやりたくて、主神に

なった。だが、時がたつに連れ、わしは次第に忘れられ、

挙句の果てには、貴様らに取りつかれたのではなく、

自らの欲望に喰われ、自分たちの神である筈の、

このわしを閉じ込めた。暗い、狭い、何も聞こえない空間に。

とんだ助け損だ!貴様ら妖者より、ここに住まう生者のほうが、

よっぽど醜く恐ろしい!」

みぃ子は泣きながら、自分の心の悲痛を搾り出す様に叫んだ。

しかし、みぃ子はニカッと笑いながら、

「じゃが、凄く楽しかったぞ!この町の子供らと遊ぶのは」

『貴様ぁ‼』

その言葉に喰独は憤慨し、顔は怒りで醜く歪んだ。

奴にはそれが、開き直りとも、自慢とも取れたからだ。

だがみぃ子は怯まず続ける。

「それに、そんな弱く、哀れで、泣き虫な子狐に、

お主は負けるんじゃ!」

そしてみぃ子は、右手を喰独にかざした。

すると奴が立っている地面が青く光りだし、

周りを燃え盛る沢山の呪符が囲った。

『なっ、これは・・・・!』

「『妖魔不動符』。予め相手の足元に仕掛け、術者の

合図で起動する結界符じゃ。観念せい、それは

さっき、お主に張った結界より、ずっとずう~っと

強固じゃぞ!」

『がぁぁああぁぁ!』

喰独は叫び声をあげながら、激しく呪符の壁にぶつかる。

だが、燃え盛る呪符の壁はビクともしない。

するとみぃ子は、横でうなだれているハルを見、

「ハル、わしの声が聞こえるか⁉本当にお主が、

あの青年を助けたいと思うのなら、わしを支えい!」

ハルはどす黒い意識の中で、みぃ子の声を確かに聞いた。

そして、目の前に、明るく笑う少年の顔が浮かんだ。

速水君の顔だ。まだ幼いが、今の面影が微かにある。

もう、自分も忘れていた、ずっとずっと前の記憶だ。

どうして、こんななんでもなかった日々の断片を思い出すのか。

だけど今、彼は、こんな風に笑わない。そう思うと、

頬を涙が伝った。そして、一つの決心をした。

何も聞こえない、何も見えない空間で生まれた、ちっぽけな欲求だ。

“速水君を、今彼を支配している闇から、救い出したい!”

「う、うん!」

ハルは黒い意識の中で返事をした。すると突然、

目の前の視界が晴れ、先程の景色が浮かんだ。

だが、どこか違う。喰独は無数の呪符に囲まれ、暴れている。

見上げるとみぃ子が目を尖らせ、自分を見下げている。

ハルはみぃ子の後ろに回り込み、彼女の腰に両腕をまわし、

抱きつく様な恰好で体を支えた。

「いいよ‼」

みぃ子は何やら、縁が金色の神鏡の様なものを

持っており、月明かりで銀色の鏡が煌いた。

するとみぃ子は、すぅーっと息を吸い込んで、

「神聖にして偉大な聖天海キヨアマノウミよ。

我は聖狐の主神、みぃ子である。我、八十八いる主神の

名において、そなたにかしこみ申す。

囚われた生者の魂を救い給え。狡猾な欲の塊を祓い給え。

開き給え、鬼門鏡!」

みぃ子がそう叫んだ刹那、神鏡が白く光り出した。

それはとても綺麗で、優しくも、恐ろしい光だった。

すると、鏡を向けられた喰独が怯えたように叫び出し、

『嫌だ・・・‼あそこにはもう戻りたくない!』

奴の周りを囲んでいた呪符が鏡の中に吸い込まれ、

その姿が露わになった。さっきまでの余裕に満ちた顔は

なく、絶望と恐怖で歪んだ顔をしていた。

突然、神鏡から突風と金属音がし、喰独が速水君の身体から

ブチブチと音を立てて、切り離されていく。

そして、少しずつ鏡の中へと吸い込まれていく。

喰独は何とか阻止しようと、必死に彼の体にしがみつき、

「桜咲さん・・・・タスケテ・・・・!」

しかしハルは、それに耳を貸さず、

「速水君、帰ってきて‼」

『あぁあああぁぁぁ‼』

喰独が力尽き手を離すと、一気に神鏡に吸い込まれていく。

突風と吸い込まれていく反動で、二人はじりじりと後ろへ

追い立てられていく。気を抜けば、すぐに飛ばされてしまいそうな

程の風と衝撃が、二人の体を貫いた。

しかし、ハルはみぃ子の体を支え続けた。もう彼を、見捨てたくないから。

喰独の体が全て吸い込まれると、先程までの衝撃が嘘の様に消え、

辺りを静寂が包み込んだ。だがハルにはそれはどこか安心できる

静けさだった。

「ミッション、コンプリートだ。じゃ」

みぃ子は疲れているにも関わらず、無理に笑ってピースサインを

作りながら言った。

「みぃさんそんな言葉どこで覚えたの?」

みぃ子は息を絶え絶えとし、持っていた神鏡を地面へと落とした。

「みぃさん、これ何?」

「それは鬼門鏡キモンキョウといってな。本来存在しない鬼獄の

入り口を作るための神鏡じゃ。まぁ、実際は鬼獄の中を覗くための

ものなんじゃがな」

ハルは地面に仰向けになって横たわっている、鬼門鏡を見てみた。

見た目は普通の鏡で、変わった様子は感じられない。

「ねぇ、みぃさんは力を取り戻したから、この鏡を使えたんだよねぇ?」

「そうじゃが、何か気になるのか?」

「もし、あたしがNOって言った時、みぃさんはどーするつもりだったの?」

するとみぃ子は笑いながら、

「あぁなんだそんなことか。この神社には昔武士が使ってた槍やら弓やらがあるから、ハルがダメだったら白兵戦で奴に挑むつもりじゃった。ま、

勝算は殆どないがの!」

(マジかよ・・・・!)

もしかしたらあの時、自分が絆信者にならなかったら、そのままみぃ子と

一緒に白兵戦に突入していたかもしれない。

そう思うと、何だか首筋の辺りが涼しくなっていった。

「あ、そうだ、速水君!」

ハルが速水君の基へ駆け寄ると、彼は地面に倒れこんでいた。

「みぃさん、速水君大丈夫だよねぇ⁉」

「安心せい、気絶しているだけじゃ。じゃが・・・・」

「え、何⁉」

ハルの心を、不安感が徐々に満たされていく。

「妖者から解放されたとしても、そのときした行為と感情は、記憶に

残る。だから、こやつがその時友人にしたことを悔い、元の暮らしに

戻れるかどうかは、他の誰でもない、こやつ次第じゃ」

みぃ子の言葉を聞き、ハルはすぐに安心できた。

「大丈夫、速水君ならきっと、戻ってこれるよ!」

今は、信じるしかない。だが、もしその過程で、彼が壁にぶち当たったら、

自分も、力を貸して彼と一緒に乗り越えようと、硬く決心した。

「うん、そうじゃな!」

ハルは眠っている様に気絶している速水君の顔を見つめた。

すると、彼の横に何か落ちており、

拾い上げ見てみると、それは小さな鎧兜のフィギュアだった。

といっても、所々欠けており、少し力を入れれば崩れ落ちてしまいそうな

ほど、年数が経過し腐敗していた。それでも、まるで自分の存在を誇示するように、月明かりで着ている武士の顔がキラキラと輝いている。

「みぃさん、これ何?」

「ああ、恐らく喰独の持っていた玩具じゃろう」

「え、これ速水君のじゃないの⁉」

ハルはてっきり、フィギュアは速水君の宝物で、ポケットに入れていたのが

転げ落ちたとばかり思っていた。

「ハル、どうして喰独というモノが生まれたか、知っておるか?」

ハルは黙って首を横に振った。

するとみぃ子は少し、考えるように黙りこくり、静かに語り出した。

「昔、といっても、四十年かそこら前、一人の少年がおった。

彼は、人と関わるのが苦手で、自分の気持ちを上手く伝えられず、

しょっちゅう喧嘩が絶えなかった。本当は、色んな人間とおしゃべりしたり、

楽しく遊びたいのに、自分の伝え下手のせいで、全部ダメになってしまう。

ある日、学校の帰り道を一人歩いていると、曲がり角から自転車が飛び出してきて・・・・・・・」

みぃ子はそこで話をやめ、苦しそうに胸を押さえた。

「そのとき、その子の手には、誰かから貰った、

勇ましい甲冑の玩具が、握りしめていたそうじゃ。

しかし、今まで彼が抱えていた、“どうして、僕が

こんな目に、どうしてみんな、簡単に楽しくおしゃべり

できるの?羨ましい。悔しい。憎い。壊したい。

そんな想いが増幅し、彼から切り離されて生まれたのが

、喰独じゃ」

ハルは黙って、みぃ子の話を聞いていた。

しかし、目には大粒の涙が溜まり、頬を伝い流れ落ちていく。

するとみぃ子は、金づちで神鏡を割ろうとしていた。

「みぃさん、何、してるの?」

「こやつが二度と出られないように、出入り口を断つんじゃ」

みぃ子が金づちを振り上げると、

「みぃさん待って!」

みぃ子は驚き振り下した手を止めた。金づちは鏡に

当たるか当たらないかの所でピタッと止まった。

「みぃさん、割らないで」

「ハル、こやつは・・・・」

ハルはみぃ子の言葉を遮り、

「うん、分ってる。でもこの子も、速水君と同じ、

なんだと思う。だから、この子も助けたい・・・!」

だが、みぃ子は俯きながら、

「・・・・・だめじゃ。ここで破壊しなかったら、

また封印をこじ開け、人に取り憑き、欲望を貪る

じゃろう。だから、そうなる前に・・・」

するとハルはむくれ、みぃ子の耳を思い切り強く引っ張り、

「いいから、あたしが助けるって言ってるから助けるの!」

「イイ痛い痛い!分かった、分かったから止めんか!」

「さ、早くして!」

(この娘はっ・・・・・!)

みぃ子は渋々鏡を持ち上げ、側にあったベンチに置いた。

「じゃあ、錬獄行きで、良いか?」

「レンゴク?」

「罪を犯した魂が、その原因を克服するために鍛え、

もう一度この世に生まれ出るための、言わば

刑務所のような所じゃ」

ハルは、“刑務所”という単語が引っ掛かった。

「もっといいとこないのぉ?」

「無茶言うな!これだけの大罪、これでもだいぶ減刑した方じゃ!」

みぃ子はぶすっとしながら言った。ハルは最後に、どうしても気になることを

、みぃ子に尋ねた。

「良く、なるの?」

みぃ子は鏡を眺めながら、

「それも、かれ次第じゃ」

「・・・・・・分かった。やって!」

ハルは確信していた。彼も速水君と同じように、深い闇を抜け出せるのを。

「よし、じゃあ始めるぞ」

そう言うと、みぃ子は手を鏡の上にのせ、目を閉じた。

すると、鏡は青と白が混じったような光に包まれた。

そして、中から何かが抜け、星が輝く空へと、昇っていく気がした。

風もないのに、満開になった桜の枝が揺れた。まるで、再出発を祝福するように。

ハルは黙って、空を見上げた。そのとき、誰かの声が聞こえるような気がした。

男か女か分からない、幼い子供の声だ。その声は泣いている様に、微笑んでいる様に、囁いた。

『ありがとう・・・・・・』

やがて光は徐々に弱まり、再び、暗くなった。

辺りを照らすのは、浮かぶ月明かりと、まばらに輝く星の光だけ。

とても弱くて、儚い光だ。だが、どこか安心できる光だ。

するとみぃ子は、深いため息をつきながら、ベンチにもたれかかった。

「大丈夫?」

「全然大丈夫じゃないわぁ、一日のうちに大きな術を二回も行ったんじゃぞ。

さすがにヘトヘトじゃ」

「じゃあさっさと帰ろ。あたしも疲れちゃった」

ハルは疲れたみぃ子を置いて、歩き出した。

「ハル」

「ん?」

ハルが振り返ると、

「おんぶ」

「はぁ~、今日だけだよ」

そう言うとハルは、みぃ子に背中を向けたまま屈んだ。

みぃ子は黙って、ハルの背中に飛び乗った。

ハルが立ち上がると、重いような軽いよな

みぃ子の体重が、背中にのしかかってきた。

「あ、速水君!」

辺りを見わたすと、そこに彼の姿は無かった。

「みぃさん、はやみく・・・」

みぃ子はすーすーと寝息を立てて、ハルの背中で眠っていた。

「ま、いっか」

ハルは、恐らく速水君は意識を取り戻し、どうして自分がここに

いるのか理解できず、そのまま裏から帰ったのだと思った。

だが、みぃ子の姿は彼からは見えないので、明日学校で騒動になる

こともないので、特に気には留めなかった。

そして二人は、ゆっくりと帰路についた。

「全く、みぃさんといると退屈しないで済むよ」

ハルが呆れたように呟くと、みぃ子は寝ぼけて寝言を言うように、

「ムフフ・・・良かったじゃろう・・・」

ハルはみぃ子の言葉に、微笑みながらため息をついた。

二人が家につくと、ハルの母親が壊れた玄関の前で何とか扉を

取り付けようと右往左往していた。すると彼女は、

歩いてきた二人を見つけて、

「あ、ハルぅ~どこ行ってたの?あたし凄い怖かったん

だからぁ~」

「うん、ごめんごめん」

しかしハルには、彼女が怖がっているようには見えなかった。

すると、母は娘がおぶっている少女に目が行った。

「ところでハル、その子は?」

みぃ子はもうとっくに起きており、ハルから降りて

彼女の背中に隠れた。

「ちょっとみぃさんどーゆうこと⁉お母さん視えてんじゃん!」

ハルが小声で言うと、みぃ子が困ったように、

「多分、封印が解けて力が戻ってきたから、じゃな♪」

「はぁ~⁉」

「ねえハルぅ、その子だぁれ?」

「えっと・・・みぃ子さん、この町の、神様、です」

みぃ子はハルの背中から、母の顔を覗き込んだ。

すると、彼女は隠れているみぃ子に駆け寄り、強く抱きしめた。

「やだぁ~、カッワイイ!この町の神様ぁ⁉

あ、だから頭に猫耳つけてるんだぁ!ああんカワイイ、

かわいすぎるぅ~‼」

みぃ子は彼女の腕の中で、迷惑そうにハルを見上げた。

(さすが、ド天然)

「ねえねえ、みぃ子ちゃんずっとうちにいるのぉ⁉」

ハルは、返答に困ったが、苦笑いを浮かべ、

「うん、いると思うよ」

すると、彼女の表情がパァーっと明るくなり、

「じゃあ早速、みぃ子ちゃんの歓迎パーティーしなくちゃね!

今日はお母さん、頑張っちゃうぞ~♪ほらハル、あんたも

手伝って!」

そう言うと、母はみぃ子を抱き抱えたまま、中へと入って行った。

(わしは、この家でうまくやっていけるのか・・・・)

みぃ子はこれからの生活に、先が思いやられた。

空には、金色の月が浮かび、彼らの“帰る場所”を照らし続けていた。

翌日、学校で速水君が、喧嘩をした男子たちに頭を下げて謝っていた。

ハルはそれを見て、心から安心できた。そして、彼はハルに、

「ねえ、昨日桜咲さん、神社にいなかった?なんか

猫耳つけた女の子と一緒に」

「え、何のこと、かしら?」




















あとがきー桜狐奇戦録ー

どうも、Cherry・Soundです。

桜狐奇戰録、いかがだったでしょうか。

自分は高校二年で、受験勉強、部活と同時進行で、ハードなスケジュールに正直

死にそうでした(涙)。それでも、無事にこの、

みぃ子とハルの冒険を完結できてよかったです。

元々、「神様がカワイイ姿で、日常にいたら面白いんじゃないか?」

という思いから書きはじめ、短編のつもりが話が長くなって

一から書き直したり、部活動や塾で一日に数ページしか書けなかったりと、

苦難の連続でした。

みぃ子「それでも、二か月はかかりすぎじゃろう・・・・」

え、やっぱりそうかなぁ・・・・。

みぃ子「お陰でわしの、華々しい活躍が世に出すのが遅れたじゃろう」

ハル「なんかあたし、この物語の高校生Bみたいな扱いになってない?

みぃさん・・・・」

みぃ子「そんなことないぞ!ハルも、このわしの話でそこそこ活躍したぞ」

ハル「あ~っ!やっぱりあたし脇役みたいになってんじゃん‼」

ち、ちょっと二人とも、今あとがき書いてるんですけど・・・・。

みぃ子「あ、すまんすまん。続けてくれ」

くっ・・・・・!

この、桜狐奇戰録―spring impact―は、ここで終了です。

しかし、この神様と高校生のデコボココンビの日常(又は非日常?)は

これからも、違う形で書き続けたいと思います。最後までご覧頂き、

有り難うございました。

そして、この物語を作るのに協力してもらった、双子の

弟に心から感謝します。


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  「燥ぐ」が読めなかったので、ルビを振ってほしかったです。多分、“はしゃ-ぐ”と読むのだとは思いますが。  みぃ子様がハルさんの書道セットを使う場面で、「鑢」と出てきましたが、墨を入れ…
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