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おっさん、夫婦問題を語る



 その日の夕方、ゼロスはアドやエロムラと共にソリステア公爵家の別邸に訪れた。

 ツヴェイトとセレスティーナにせっつかれて家庭教師の真似事を始め、ついでとばかりに夕食を頂いた後のひとときの時間に、それは起こった。


「「「「 ゼ、ゼロスさん(先生・師匠)が婚約したですとぉ!? 」」」」


 本日めでたくルーセリスとジャーネ二人と正式《?》に婚約したことを、うっかりナチュラルに漏らしてしまったおっさんは、なぜかもの凄く驚かれてしまった。

 それもアドやエロムラだけでなく、その場にいたリサやシャクティにもだ。

 さすがに失礼ではないかとゼロスは思う。


「その、先生……おめでとうございます」

「今後ゼロスさんとは家族ぐるみのお付き合いになりそうですね」

「うん、素直にお祝いしてくれるのは君達二人だけだなんだねぇ。そんなに意外かなぁ~……」


 セレスティーナとユイは即座にお祝いの言葉をかけてくれたが、他の面々はなぜかこの世の終わりみたいな顔をしている。

 ツヴェイトの複雑そうな表情だが、これはかつてルーセリスに一目惚れしていた経緯があり、洗脳魔法の影響下で俺様な態度をとってしまったことで見事に振られている。

 重度なのはエロムラで、『なんでこんなおっさんに……。絶望した! 昨今の婚活事情に絶望したぁ!!』などと喚いていた。


「女性二人と同時に婚約、それも年下なんて……」

「最低ね、ゼロスさん……」

「うん、二人がそういう冷た~い視線を向けてくる理由はわかる。自覚しているんだから改めて言わないで欲しい。凄く傷つくからね」


 リサとシャクティは転生者であり、彼女達の常識は当然ながら地球でのものになる。

 たとえ重婚が認められたこの世界であっても彼女達の考えにブレることはなかったが、まさか身近な知り合いが重婚約するなどとは思いもせず、地球での良識で生きてる二人が向ける視線は実に冷ややかだ。


「ツヴェイト君は少し動揺していたけど、意外と落ち着いているねぇ。君が一番気にすると思っていたんだが」

「まぁ、俺は過去にやらかしたからな。思うところはあるが嫉妬するほどじゃない」

「う~ん、大人な考え方だねぇ」

「違うんだよぉ、ゼロスさん! 同志は……同志はもう彼女がいるんだぁ、裏切り者なんだよぉ!!」

「えっ、そうなの?」

「お答えしましょう、お相手の名を~!」

「「「 うおわぁ!? 」」」


 神出鬼没、クールでお茶目。素敵に無敵。

 知的に見えて実はかなりいい性格をしているデキるメイドのミスカさんが、何の前触れもなく突然背後に現れては、誰でも驚くものである。


「ミスカ……その突然現れる真似、やめてくんねぇか?」

「お断りします。普通に現れていったい何が楽しいというのですか。物語というのは唐突にドラマティックに、ドメステックかつバイオレンスだからこそ面白いのではないでしょうか?」

「意味わかんねぇよ。お前は何を目指してやがんだ……」

「普通に楽しいことですが、何か? そこに自分がと入りますが」

「自分が楽しむためだけに人をおちょくるのかよ」

「いけませんか?」


 全く悪びれる様子もなく言い切った。

 このときの彼女は実に威風堂々としたものだった。


「さて、それではツヴェイト様の意中のお相手を、ここで声高らかに発表させていただきたいと思います。皆様も覚悟はよろしいですか?」

「「「「 名前を聞くだけなのに、覚悟を決めなくちゃならんほどの相手なん? 」」」」

「いえ、普通に貴族の御令嬢ですが、何か問題が?」

「「「「 勿体ぶる必要がおありで? 」」」」


 仮にも貴族家に仕えるメイドとは思えない態度。

 相変わらずである。


「やめろぉ、なに人のプライバシーを勝手に暴露しようとしてやがんだ! そもそも正式に決まっているわけじゃねぇんだぞ。仮にも公爵家に雇われているメイドが勝手な判断していいわけあるか、情報漏洩じゃねぇか!」

「チクっちゃ駄目ですかね?」

「なぜに聞く、普通に駄目だろうが!」

「………チッ」

「舌打ちすんな。なんでそんなに態度がデカいんだよ、お前は……」

『『『『 ほんと、なんでなんだろうね…… 』』』』


 ミスカの態度はおかしいと誰もが思う。

 しかし彼女は仕事を完璧にこなし、その正確で確かな仕事ぶりは現公爵でもあるデルサシスも認めているもので、大抵の無礼は見逃されていたりする。

 ソリステア公爵家は実に懐が広く深いようだ。


「仕方がありませんね。別のことをチクるとしましょうか」

「いや、今ツヴェイト君はチクるの駄目だと言ったばかりですよねぇ。なぜに再度同じことを繰り返すんです」

「俺、この人苦手なんだよな……」

「アドさんもか。俺もちょっと苦手」

『『『 良く分かります 』』』


 男衆がミスカに対して苦手意識を持つことに女性陣は理解を示すも口には出さない。

 なぜなら後で報復を受けるからだ。

 それもさりげなく行われるのだから対処のしようがない。

 この場にいる誰もが心の中で溜息を吐く中、ミスカはどこからともなく紙の束を取り出し、かけた眼鏡をあやしく輝かせる。


「これはお嬢様が書いた最新作の原稿。今ここで公表したいと思います」

「なぁ!? なぜそれをミスカが……。分からないように隠していたのに」

「甘いですよ、お嬢様。私はお嬢様が何かを隠す場所など、既に1863通りのパターンほど熟知しています」

「そんなにあるんですかぁ!? 私も驚きです――って、駄目ですから! それを公表しないでください!」

「私もまだ内容を確認していませんので、実に楽しみでしかたがありません。では、さっそく確認してみま、しょう…………えっ?」


 嬉々として原稿をめくっていたミスカは、書かれている内容を確認した瞬間、全身が硬直した。

 突然に動きを止めたミスカに誰もが怪訝そうな表情を浮かべたが、不思議と誰も声を掛けることができず、時間だけが静かに過ぎていく。

 静まり返って部屋の中に、時計が時を刻む音だけが流れる。


「……そ、そんな。まさか、こんな事って」

『『『『 あっ、動き出した 』』』』


 我に返ったミスカは恐るべき読破力で原稿を読み進め、よほど信じられない内容のものを読んでいるのか、原稿を見ては何度も頭を振りながらも視線だけは幾度となくセレスティーナに向ける。

 やがて諦めたかのように深い溜息を吐くと、眼鏡を片手で押さえながら天井を仰ぎ見た。


「………お嬢様は、遠くへ行ってしまわれました」

「「「「 な、なにが? 」」」」

「だから、駄目だって言ったのに……」

「新たな境地といいますか、予想外ですよ。ここから先は私の口からはちょっと……」

「返してください!」


 原稿をミスカから奪い返したセレスティーナ。

 本来であればミスカは何かを奪われるような隙は無いのだが、彼女は書かれた内容によほど動揺していたのか、あっさりと原稿を取り返されてしまう。

 ただ、そんなことよりもこの場にいる一同は原稿の内容が気になって仕方がない。


『な、なぁ……ゼロスさん。アレになにが書かれていたと思う?』

『さぁ? ただ、ミスカさんが現実逃避するほどのショッキングな内容だということは確かだろうねぇ』

『あれ? ティーナちゃんって確か、隠れ腐の伝道者だったんじゃ……』

『えっ?』

『あっ……』


 アドにとっては初耳だが、おっさんはエロムラの一言で全てを理解した。

 そう、ゼロスが思い当たったように、原稿はそっち系の小説だ。

 その内容は、セレスティーナが以前まで書いていた薔薇世界でありながらも文学的な価値のあるものではなく、ただ欲望に溺れた王が破滅するだけの小説だった。

 しかも主人公はファラオネェがモデルだ。

 最後のページには一言、『同好の士である王に捧ぐ』と書かれていたりする。

 セレスティーナにとっては追悼の意味を込めて書いた友情の作品であった。

 まぁ、この手の本は始まりがメーティス聖法神国の出版部なので、ストーリー性の無さはある意味では原点回帰したと言えなくもない。


「申し訳ありません、お嬢様……。それは、決して世に出してはならないものでした。不用意に見てしまったことを心よりお詫び申し上げます」

『『『『 素直に謝罪するほどヤベー内容だったの!? 』』』』


 あのミスカが謝罪をするほど常人では到底理解できない、かなり危険物のようであった。

 男衆としてはそんなものなど読みたくもないのだが女性陣だけは違うようで、特にリサとユイが興味津々な目をセレスティーナ――正確には彼女の手にした原稿に向けている。


「な、なんですか? 私は読ませませんよ? これは未完成ですし、世に出すつもりもありませんから」

「その……セレスティーナ様。ちょっとだけでも」

「そうです! 私もそっち系の漫画は読んだことはありますし、お嬢様に参考意見くらいだせると思います」

「リサ、あなたってそっち系の趣味もあったのね。知らなかったわ。まぁ、私も漫画の方は女性週刊誌で読んだことがあるけど、小説はまだないわね」


 ユイ、リサ、シャクティの三人は、この異世界に来てからというもの娯楽に飢えていた。

 地球でのエンタメが恋しくなり、その欲求が満たせるのであれば盗作――あるいは倒錯漫画でも構わない。例えそれが薔薇の華を咲き散らかすそっち系の話でもだ。

『暇なら書店で本でも買ってくればいいんじゃね?』と思うかもしれないが、ユイ達は公爵家の居候で雇われ労働者でもあり、世間に出回っているストーリー性皆無な教育上よろしくない書籍を公爵家所有の別邸に持ち込むわけにもいかない。

 正確には国中の貴族家から有害書籍の持ち込み規制命令が出ているのだが、まさか住人が創作活動するという盲点があったとは夢にも思うまい。

何しろ作家が公爵家の御令嬢なのだから、持ち込みでないので家主に逆らっているわけでもなく、処罰の対象にならないのが厄介だ。


「お願いします。ミスカさんのコレクションは既に焚書にされてしまいましたし、この飢えをセレスティーナ様の作品で満たしてください。辛いんです」

「えっと……」

「内容がどんなに変態的でもいいですから、私達に娯楽という救いの手を……お慈悲をぉおおおおっ!」

「えぇっ!?」

「もう、私達を救えるのはお嬢様しかいないわ。まぁ、私は興味本位なだけで、別に二人のように飢えているわけではないわよ? えぇ……飢えていませんとも」

「シャクティさん? そう言いながら私との間合いを少しずつ詰めてきているのは、逃がす気はないからでは?」

『『『『 ようするに、何でもいいから娯楽をよこせってことじゃね? 』』』』


 男衆は心の中で突っ込みつつ、決して彼女達の会話に踏み込もうとしなかった。

 団体競技のスポーツ選手顔負けのアイコンタクトで意思疎通を行いながら、傍観を決め込んでいた。

 その理由だが、『なんか、めんどくさそう』と直感が働いたからである。


『女性同士の会話に男がしゃしゃり出ると、碌な目に遭わないからなぁ~』


 ゼロスからしてこうである。

 つまりセレスティーナを助ける者はここにはいない。


「うふふ、いったいどのような内容なんでしょうね。楽しみです」

「さぁ、その原稿をこちらにplease。隅から隅まで余すことなく読んであげますよぉ~」

「お嬢様、もう諦めた方がいいわ。潔くその原稿を渡してくれると面倒事は避けられるんだけど」

「そう言われて素直に渡せるわけないじゃないですかぁ! 私は全力で死守させていただきます」

「「「 逃げられるとでも? 」」」

「全力で逃げ切ってみせます! 御爺様の名に懸けて」

『『『『 爺さんの名を勝手に使うなや、たぶん情けなくて号泣すると思うぞ。いや、もしかしたら喜ぶかも…… 』』』』


 男達の心のツッコミを背に、恥や外聞を捨て全力で逃げだしたセレスティーナを、目に異様な輝きを湛えた娯楽に飢えるハンター達が追跡する。

 

「東方の島国では、女三人寄れば姦しいと言いますが……本当のようですね」

「「「「 原因を作ったアンタが何をいう 」」」」

「アド様、奥様がお子様を放置して部屋から出ていかれましたが、面倒を見なくてよろしいのですか?」

「おっと、そうだな。んじゃゼロスさん、俺はかのんを連れて部屋に戻るわ」

「逃走劇を繰り広げている彼女達とぶつからないようにねぇ」

「そこまで見境が無くなっていないことを願うわ」


 娘を抱きながら部屋を退室していくアドを、『そのうちベビーカーでも用意してあげようかねぇ』と考えつつ見送るおっさん。

 この世界のベビー用品はいまだに開発が遅れている。


「いいよなぁ~、既婚者って。勝ち組じゃん」

「エロムラはいつも他人を羨んでばかりだな」

「アド君は家族を養うために働かなきゃならんし、ユイさんも実際のところ子育てであまり寝てないんじゃないかい? 結構大変なんだよぉ~、既婚者っていうのはねぇ」

『『 独身者がなに語ってんだ…… 』』


 ツヴェイトとエロムラの心のツッコミにも一理はある。

 だが、ゼロスは彼らよりも長い人生経験があり、残業で夜遅くまで働いたのに家に帰れば子供の夜泣きで眠れず、翌日満身創痍となった部下や同僚の姿を何度も見てきた。

 既婚経験者の苦労する姿を見てはフォローしていたので、その苦労がどれほどキツイのかを充分に理解していた。家庭の相談にも乗ったこともあった。


「結婚するとさぁ~、夫婦間での相互理解が重要になってくるんだよ。特に男の場合は子育てを疎かにしやすい。いや、心のどこかで子育ては女性の役割と思っているところがあって、仕事を理由に協力しない場合がよくある。それで奥さんにブチギレられたって話を何度も聞いたねぇ」

「えっ、それって当たり前のことじゃないの?」

「貴族の場合は乳母がいる家が多いから、そんな話はあまり聞かないな。まぁ、親子関係がギスギスしている貴族家はあるけどな」

「それは親子のコミュニケーション不足だよ。あまり子供と関わらなかったから、いざ親として振舞おうとしても反発される。子供の心を理解していない証拠さ。あそれとエロムラ君、君の考え方は家庭を確実に壊すよ。奥さんを蔑ろにするってことだからね」


 相談に乗っていたからこそ、この手の話には詳しくなった。

 特にゼロスがいた会社は残業が多く、何日も家に帰れないこともよくあり、『家庭の危機だぁ~っ!!』と叫ぶ社員がいたほどだ。

 そんな彼らを纏め相談に乗っていたゼロスはいい上司だったのかもしれない。


「特に女性の場合いは、妊娠してから子供がある程度育つまで気が抜けないからねぇ、旦那のフォローがないと鬱になりやすくなるんだよ。エロムラ君の考え方だと、育児を含む家庭のことは全部女性に任せきりということでしょ? 無責任すぎる」

「確かに……。結婚したらそれで終わりってわけじゃないよな。俺も親父とはギスギスしてたし、もしかしたら似た環境を作っちまうかも……」

「貴族の話でも、親の悪行を子が繰り返すって話をよく聞くな。つか、エロムラは親子関係うまくいってなかったのか……」

「有力な貴族なら子育てに外部から人を雇えるし、公爵家ともなると高度な教育を受けられるから教育自体は問題ない。まぁ、多少は育児をすることになるだろうけどねぇ」

「そういう意味では、アドさんはいい父親ってことになるんスか?」

「エロムラ、その結論は早すぎるだろ。普通に考えて育児は成人するまでは気が抜けないと思うぞ。子供には教えることがたくさんあるからな」


 家庭は違えども、子供は親の教育を基礎とした家庭環境内で成長する。

 ツヴェイトは貴族としての教育を幼い頃から受けており、将来は領地を治めるに必要な知識だけでなく、物事の良し悪しを判断できるように一定の自由を与えられながら責任というものを学び、周囲から厳しく躾けられてきた。

 放任主義に見えるデルサシスも陰でいろいろと手を回しており、家庭教師も選び抜かれた精鋭をツヴェイト達に雇い、教育を確実に行っていた。

対してエロムラだが、親から一方的な期待を押し付けられ自分のやりたいことを全て『くだらない』の一言で一蹴された結果、反発して家出した経緯がある。

ツヴェイトは肯定も否定もされてはいないが自分の考えを持つよう促され育ち、エロムラは自由すら否定された結果、何もかもを捨て逃げるという暴挙に出た。

この二人が受けた教育は対極にある。


「子どもが親の愛情を理解できていれば、それはいい環境で育ったってことじゃないのかねぇ」

「親の愛情か……俺は母親から愛情らしいものは受けた覚えはないな。昔から公爵家の跡取りという認識しかしてなかったから、とても親とは思えなかった。親父は厳しいところがあるが、しっかりと釘を刺すべきところは刺してくる。これが愛情なのか疑問に思えるものはあるが……」

「公爵様は無駄にダンディズム値が高いからなぁ~、愛情なのか、計算ずくめなのか分かんないけど。俺ちゃんとしては後者だと思う」

「デルサシス殿は、その辺り考えていると思うけどねぇ。全て計算通りに動かしていると思えるところが怖いところだけどねぇ」


 普通に生活しても個人によって家庭の在り様は異なる。

 子育児とは子供の感受性を理解し、興味を持ったものを親が受け入れ、飽きさせることなく引き伸ばし、その上で苦手とするものを克服させるのが理想的だ。

 危ない真似をした時にはしっかりと叱ればよい。

 全てをうまくやろうとするのは無理だが、最低でも一般常識を理解させられれば充分だろう。そこから何らかの才能が育つかは別問題だ。

 故に過度の期待を押し付けるなど悪手である。

 先は子供のやる気をどれだけ引き出せるかが重要だ。否定ばかりしては子供が反発し、甘やかすと他人に迷惑を掛けることを何とも思わない傲慢さが育つ可能性が高くなりかねず、匙加減次第で性格が大きく歪んでしまうこともある。

 まして兄弟間で差別するのも間違いだ。


「親となった者はねぇ、子供に対する責任が大きいんだよ。アド君の苦労はこれからなのさ。子供がどのように育つかはアド君とユイさん次第で、僕らは相談に乗ることしかできない」

「なるほど……」

「同志はまだ結婚してないだろ。子育てを考えるのは早すぎない?」

「ツヴェイト君は歴史ある貴族家の跡取りだからねぇ、後継者は早めに作っておく必要があるんだよ。たとえ仕事疲れで今にもぶっ倒れそうになりながらも、無理してでも子供は作らなきゃならない。これは義務なんだよね」

「期待が大きすぎるぅ~。ストレスで子供ができなかったらどうすんの……」

「嫌な話だが、そういう時に使うのが媚薬だ。跡取り問題は何よりも重要視されるからな」

「「 本当に嫌な話だ 」」


 無理しても子供を作る。

 政治にかかわる貴族家は、不正などを起こさない限り基本的に役職も世襲制で、職務を後継者が継ぐことが多い。

 無能者に跡を継がせるわけにもいかず、多くの跡継ぎから後継者の選定を行うために重婚し、薬を使用してでも強引に子供を作ろうとする。

 当然だが、嫁に対する姑の跡継ぎ催促の小言はつきもので、ストレスからくる奥さんのノイローゼ問題はどうしても付きまとう。


「夫婦どちらかが不妊体質だったらどうするんだろ……」

「不妊体質? なんだ、それ」

「ツヴェイト君には馴染みのない言葉だが、夫婦どちらかが子供を作れない体質のことを指す医学的な言葉だよ。子供ができなくてよく女性が責められる場合が多いけど、男の方にも問題があることがあるんだ」

「そんな体質があるのか!?」

「「 あるんだよ 」」


 医療技術の発達していないこの世界において、子供ができないと女性が責められることが多い。医療知識がないのに子供ができないと、責任を女性ばかりに向けられてしまう常識がまかり通っており、不思議と男性側に原因があるとは思われない。

 この傾向はソリステア魔法王国のみならず、周辺国でも似通った状況である。

 おそらくは、他家から入ってきた者に原因があると思った方が家名に傷がつかないからだろうが、医学的見地からするとただの言いがかりに過ぎず、その言いがかりが通用してしまうほどに文明水準が低いことが問題だった。

 

「変に期待をかけすぎて、精神的な疲労から子供ができないこともあるぞ? これは男女両方に当てはまるねぇ」

「……貴族の中でなかなか子供ができない原因って、大半がそれじゃねぇのか?」

「同志……貴族ってそんなにストレスが溜まるもんなのか?」

「溜まる。特に跡継ぎの子供は、親戚関係になった家との仲を取り持つ役割もあるからな、嫁や婿養子は過度の期待を背負うんだ。全部が全部というわけではないが、生まれた子供も跡継ぎとしての期待を背負うから、重圧で潰れる奴も少なからずいるんだ。貴族でこれだぞ。王族となればその重圧もハンパなものじゃない」


 王族を含め貴族達は国の要職についている立場上、後継者問題はかなり重く考えていた。

 まして縁戚関係を築くうえで政略結婚は使い古された手段で、ソリステア魔法王国でもよく行われており、家同士を繋ぐ子供に期待は嫌でも重くのしかかる。

 血縁による派閥を作られるのも困りものではあるが、王族を含め有力貴族は他家と血縁関係になることで権威を高めてきたことも事実で、実際に王族周辺の上位貴族の殆どが親戚関係にある。

 後継者が生まれないか無能者だった場合、継承問題で大いに揉めることだろう。

 民にとってはいい迷惑だ。


「公爵家を継いだら、仕事は大変でも家族を一番に考えた方がいいと思うよ。君の場合、仕事に集中しすぎて家庭を疎かにしそうだから」

「同志は真面目だからなぁ~、それはあり得る」

「いや、家督を継ぐ以上は仕事に忙殺されることは仕方がないだろ。まして嫁に来る女は貴族家だぞ? 公爵家に嫁ぐんだから仕事量が多いことは理解してるはずだ」


 理解していることと現実は別だ。

 上位貴族の仕事量がどれほどのものかは分からないが、貴族とは政治家だ。

 華やかな生活を送る一方で、裏では国を動かすための政務を毎日行っており、その苦労は一般家庭とは比べ物にならないほどハードである。

家族を蔑ろにしてでも領地経営を優先する必要があり、国に対する責任も大きい。

 このように苦労の多い仕事なのは確かだが、それで家庭崩壊しては本末転倒だ。


「甘いね。旦那による家庭崩壊の場合、家庭を顧みない仕事優先が多い。家のことは奥さんに任せきりで、少しでも家庭の様子を気にしていれば防げた事態も、忙しいことを理由に全く取り合おうとしないと最悪な事態になるんだ。一言でも奥さんに対して労いの言葉や家族サービスでもしていればいいんだが、それすらもやらずにいると少しずつ不和を招く。小さなフォローは大事なんだよ。

駄目な夫のパターンだが、残業で深夜に帰宅したとき赤ん坊が夜泣きして必死であやす奥さんに、『さっさと黙らせろ』の一言で一蹴。

休暇の日も子供の面倒は見ず掃除や洗濯すらも手伝わず、一言目には『疲れているから』とパターン化した免罪符を盾に自分だけが遊び、奥さんが体調不良を起こして辛いのに『食事の用意をしろ』と顎で扱き使い、できた料理に『母親の飯の方が美味い』とケチをつけ不満をネチネチとしつこく垂れ流し、それを亭主関白と勘違いして自分が家庭を支えていると息巻いているんだ。

マザコン気質だったらなおタチが悪い。

奥さんを家政婦扱いし、『稼いでいるのは俺だ』とマウントもしてくる。中には『最初の子供は女の子がいいから、男だったら堕ろせよ』とか、『女だったら即離婚ね』とほざく奴もいる。職場でいけすかない同期の奴がそれで離婚した」

「「 長ぇよ…… 」」


 ゼロスは同僚や部下の悩みや愚痴につき合ううちに、客観的な意見を出すためにその手のサイトでいろいろ調べ、相談事の参考にしていた。

 まだスマホがなかった時代で、パソコンや携帯電話の裏表サイト記事の似たケースと相談者の現状を照らし合わせ、多少の修正を入れながら職場の人心掌握を行った。

 そのうちに上司からも相談を受けるようになり、気づいたら職場環境を整える厄介事の相談役な立ち位置となっていた。

出世もしたが面倒事も背負いこんだだけの失敗談だ。

 

「やけに具体的なんですが、それ一般家庭での例だよね? しかも複数のご家庭事情を一纏めにしてね? 全部兼ね備えてたら相当な外道だよ」

「師匠の言う例って、全部男が悪いと言っているように聞こえるんだが……」

「まぁ、一概に男側が悪いとは限らないけどねぇ~。女性の場合は旦那が仕事で留守をいいことに他の男と不倫したり、子育てを実家の両親や友人に無理矢理に任せ、旦那の稼ぎで毎日のように豪遊したり、デキ婚したが実は不倫相手の子でしかも金目当てだったり、親の権威を利用して婿養子の旦那を毎日コケにしたり、友人の旦那を寝取るだけでは飽き足らず、三股・四股した話も聞いたなぁ~。

赤の他人の食事会に勝手に突入して、支払前に金も払わずとんずらとか、遺産目当てで葬式に現れたとか、友人・知人宅の物品を盗み換金してはブランド物の服や貴金属類を買いこみ、それでも我慢できず義実家の金にも手を出すだけにとどまらず、ヤバいところから借金までして最後に離婚されたとか。

他にも友人から金を借りっぱなしで返さないとか……。まぁ、いろいろDQNな例は調べれば出てくるものだよ」

「「 だから、長ぇよ! 」」


 男女の問題は一概にどちらかが一方的に悪いというわけではないのだが、特に問題を起こす者は性格や良識といった一般的な考えに対する感覚が根本から欠如し、自己中心的な判断で場当たり的に行動。他人の良心を利用してでも自分の願望を押し付け叶えることを当たり前と認識しているタイプだろう。

 酷いものだと自分がやっている行為を犯罪だと理解していない場合がある。

 悪いことだという認識があるのであればまだ救いようはあるが、身勝手な自己ルールの上で行動するので常識が通用せず、犯罪であるという事実を知って初めて慌てる。

 ダニか寄生虫のような習性である。


「ゼロスさん……さっきも言ったけど、同志には関係ない話じゃね?」

「エロムラ君はそう思うのかい? 言ったでしょ、夫婦円満な家庭を築くには相互理解が大事だってさぁ~。計画性は特に大切なことなんだよ。特に子作りにおいてはねぇ」

「なぁ、師匠。子供は天からの授かりものだろ? 計画性なんて必要ないと思うんだが……」

「そうでもない。悪い例として、まだ一歳にも満たない乳児がいるのに二人目をこしらえておきながら、生活する金がないという理由から奥さんを無理やり連れだし、『堕すまで帰ってくるな』って吐き捨て医療院(産婦人科)に置き去りにしたって事例がある。

自分の実家や義実家にも相談も連絡すら一切せず、旦那の独断でねぇ。しかも奥さんは妊娠四カ月だった。泣きながら子供を堕胎させた結果、その奥さんは心身病んで自傷行為に陥り、そのストレスで身勝手な旦那も鬱になり、耐えきれず離婚調停を切り出したら奥さんは自殺。

挙句にその旦那は、後から奥さんのことを『金目当てに自分に近づいてきたと思っていた』とかほざいたらしい」

「「 うわぁ~……マジで? 」」


 おっさんはここで一息つくと、いま語った事例の客観的な意見を語りだす。


「普通に考えて、育児には何かと金がかかるもんでしょ。個人差はあるけど生まれたときと半年後では、子供はそれなりに成長するんだからベビー服なんてすぐに買い替える必要も出てくる。数年先のことを踏まえるとお金の計画的な運用は考えるものだ。

そんな心配事を奥さんは旦那や義実家に相談したらしいが、旦那らは一切無視したから当てにできないと思われ、奥さんはますます内向的に思いつめるようになり鬱病が悪化したとか。生活費のことを考えるなら旦那は最初から避妊を心がけるべきでしょ。

二人目をこしらえた時点で金が倍かかるのは一人目で分かり切っているのに。

ここから鑑みるに女性のことを『性欲を満たす』だけ存在と見ているクズ思考か、現実を直視せず問題を棚上げにしていた無責任ぶりが丸わかりで、そこに思いやりなんて言葉は欠片も存在していない。

ね? 計画性がいかに大事だと理解できるだろぉ~?」

「「 つか、長いって言ってんじゃん!! 」」


 おっさんのトークには客観的な意見が含まれているが、所詮は既に結果として判明している後付け意見にすぎない。要は終わった後の難癖だ。

 それでも若者には参考程度にはなる。


「子供を作るというのはねぇ、命が絡む問題なんだよ。猿じゃないんだから理性的に将来設計を立てるべきだ。子育てを手伝うぶん猿の方がマシだよ。避妊は奥さんや恋人に対する思いやりだと僕は思う、わりと本気でねぇ」


 インターネットの発達は、日本全国から様々な情報を得ることを容易にし、参考例を簡単に集めることに凄く役立った一方で、『ネットって……怖いな。知らんうちにこんなところまで調べられているのか』と、勝手に動く第三者の存在に戦慄したほどだ。

 裏表で様々な事件や家庭事情など匿名でサイトにUpされ、個人情報がどこから漏れるか分からず、条件さえ揃えば個人特定もできてしまう。一時期世間を賑わせ忘れられた犯罪事件の全容まで調べている者もいたほどで、犯人が捕まった事例も意外に多い。

SNSの炎上などが最も分かりやすい例だろう。


「貴族のツヴェイト君は金銭的な余裕があるし、育児もサポート万全の状態で育てられるが、その安心感が家庭を疎かにしやすくなるかもね」

「そ、そうなのか?」

「実際の子育てって本当に苦労が多いんだ。夜泣き、おむつ交換、授乳などで深夜に叩き起こされ、夫婦そろって睡眠不足になることが多いし、成長するほど好奇心旺盛になるから、躾や教育が殊更重要になる。物事の分別をつけられるくらいになるまでは安心なんてできないだよ。家庭内だけでも大変なのに、その全部を奥さんに任せきりにするのは酷な話だ」

「マジか……。そんなに子育てって大変なのかよ」

「いや、それよりもさぁ……」


 エロムラは、『独身者のくせに、なぜ闇深い家庭事情や育児に詳しいんだよ……』とツッコミを入れたい。

 そこは家庭の悩みを同僚や部下に聞かされ、少しでも良いアドバイスしようと様々な事例を調べ上げた、おっさんの努力の賜物である。

むしろ相手の話を真面目に聞き、仕事の合間にリサーチまでして相談に乗っていた努力は、大いに褒められるべきだろう。


「ただ、そこまで奥さんに任せきりな家庭だと、逆に旦那の浮気を疑うけどねぇ。実際、僕の部下だった女性の旦那は七人の女性と関係を持っていた。エロムラ君はその旦那と同じ道を進みそうな気がするよ」

「今までの長話が同志に向けてかと思ったら、俺へのダメ出しですとぉ!? よもや、よもやだよ!」

「君、絶対に仕事を言い訳にして育児に協力しないタイプでしょ」

「エロムラは軽薄だからな、逆に女のほうから愛想を尽かされるんじゃないか?」

「相手が相当なDQNな場合も考えられるねぇ。その場合、逆に浮気されてエロムラ君が捨てられるかな?」

「俺が浮気に走るか、逆に浮気されるの二択しかないのぉ!? こう見えて俺ちゃんは一途なのよぉ、結構尽くすタイプだと思うんですがぁ!?」

「「 どこが? 」」


 ツヴェイトに関しては貴族の日常など知らないので、別にゼロスが考えることではない。

相談されれば意見くらい出すが、そもそも人の家庭に口出す権利など誰にもなく、所詮は当事者同士の問題だ。むしろ今はエロムラの方が心配だ。

 モテたいと夢は語るが、そこに現実が伴っていないように思える。

 

「エロムラ君は単純だから、二股掛けられてても気づかないかもねぇ。いいように転がされてお金だけを搾取されたりして」

「そんな女なんて俺はいらない……。優しくて、俺のことを理解してくれて、その上でナイスバディの美人ならなおいい。リア充はみんな敵だよぉ、ちくしょうめ」

「都合のいい願望を言い出したぞ、師匠……」

「こんなエロムラ君と結婚するような女性って、よほどの女傑じゃないと無理じゃね?

尻に敷くレベルを超えて顎で扱き使うような、ガチでメガトン級な超現実主義者の猛者じゃないと」

「そんな女は願い下げだぁ!!」


 涙ながらに絶叫するエロムラ。

 だが、エロムラのようなムラっ気が多い性格だと、尻に敷くような女性の方が相性はいいだろうとゼロスは考えている。

 唯一気がかりなのは、こんな彼のどこに女性が魅力を感じるのかだ。


「エロムラ君で遊ぶのはここまでにしておこうか……。話は変わるがツヴェイト君、学院の方はいいのかい? 戻ってきてから結構日が経つけどさ」

「唐突に変えるなよ……。まぁ、学院に戻る準備はできているぞ。講師達は戻ってきてほしくはなさそうだが」

「そらまた、なんで?」

「成績上位者を教えられる講師がいないんだよ。魔法文字の解読法が判明した今、研究は最初からやり直しになったからな。今いる講師が教えていることは魔法の実戦使用くらいのものだし、それは自主訓練でもできる。いっそクロイサスの奴が講師をやった方が早いとさえ思う」


 おっさんの脳裏に、講義という名目で妙な実験を行い、学生諸共爆発に巻き込むクロイサスの姿が浮かんだ。

 どう考えても講師には向かない。


「それはない。彼は講師をするくらいなら、彼は自分の研究に没頭するさ。むしろ爆発の犠牲者が増えるだけだから止めたほうがいいでしょ」

「クロイサスの事はともかく、俺的には歴史に関する書籍が山ほどある学院の図書館は有用だから、戻って仲間と研究することにした。幸い自由に研究できる立場にいるからな」

「魔法の実戦を目的とした戦術研究だっけ? 学院は歴史的な資料が溢れていて研究がしやすいってことか……。で、いつ頃ここを立つ予定なんだい」

「六日後だな。同じ研究室の仲間には手紙で連絡を取り合っているから、戻ってすぐに研究に執りかかれると思う」

「急だねぇ。そのご友人達は、休み癖がついて全員が学院に戻らなかったりして」

「嫌なこと言わないでくれよ、実際にありそうだ」


 上位成績優秀者は卒院まで講義を受けず自由に研究することが許されている。

 事実上学業を修めたというお墨付きをもらっているようなもので、成績を維持していれば何もしなくても楽に卒院可能な立場だが、ツヴェイトとしてはやはり自分の研究を進めたいと思っていた。

 なにより仲間達と戦略や戦術の話し合いをするのは楽しいく、それができるのも学生という立場があるゆえだ。卒院したらいつ全員揃って会えるか分からない。


「俺としては、今は仲間達といろいろやりたいんだよ。卒院したら二度と会えなくなる奴らもいるからな」

「貴族の立場だと一生会えなくなる友人も出るだろうからねぇ、今の時間を大切に使いたいというわけだ。うんうん、青春あおはるだぁ~」

「そんなんじゃねぇよ。ただ、今だけは貴族という立場の枷が緩いから、自由にできるってだけだ」

「人との出会いは一期一会、人の数だけ人生がある。今は仲間でも近い将来にはそれぞれ別の道を進み、人によっては二度と会うことはないかもしれない。ツヴェイト君の場合は立場的になお難しくなる」


 ゼロスも学生時代の同級生とは卒業後に数えるくらいしか会っていない。

 同窓会にも参加したが、クラスの全員が揃うことなどほとんどなかった。それどころか事故や病気で他界した者もいたほどである。

 時間とは時に残酷な現実を見せてくるものだ。


「まぁ、今は友人達との学院生活を存分に楽しむといいさ。そうした思い出作りも若者の特権だからねぇ。学生時代の友人というのはいいものだよ」

「みんな馬鹿ばかりだけどな」

「仲間と馬鹿やることも、時が経てばいい思い出さ」

「毎日馬鹿やっている奴もいるが?」


 ツヴェイトが指を差した先にはエロムラがいた。

 先ほどまで落ち込んでいたのに、今は『男が女好きで何が悪いんだ。そうだよ、どんなに美形でクールな見た目の紳士でも、男として生まれたからにはみんなドスケベな変態紳士のはずだ。誰もが皆、股間の戦士達なんだ。今こそ本能を解き放ち、原点である裸――ヌーディストへと回帰するべきなんだよぉ!』と意味不明なことを叫んでいた。

 相変わらず立ち直りが早いが、その代わりマイナス方向へと突き進んでいるように思え、見ていて実に痛々しい。


「エロムラ君には恥柱の称号を贈ろうかな。というか落ち込んだ状態から立ち直るたびに、人として大事な何かを周囲の好感度もろとも捨てている気がする」

「それって遠回しに『頭が可哀そうなヤツになっていく』って言ってるよな、師匠……」

「そぉ~んなことは……………………ないよ」

「目を逸らさないで言ってくれないか? 誤魔化し切れてないぞ。エロムラが日に日にヤバイ方面に踏み込んでいってるのは確かだけどよ」


 エロムラに関しては何もかも諦めている二人であった。


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