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仔龍の轍  作者: ぱんつ犬の飼い主
第一章 守護の騎士
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はじめての共同戦線

爆炎が巻き上がる。


放射状に広がる炎の中から、勢いよく何かが飛び出した。


俺だ。


俺が何故戦隊ヒーローのような登場をしたか、その理由を知るならば、時を少し前に(さかのぼ)らなければならない。


俺が妹のクロナと魔法の訓練を終えた後、クロナが駄々をこねた。


それ自体はいつも通りで可愛かったのだが、そこで俺のもう一人の妹にして、クロナの双子の姉ローザが現れた。


ローザは、わがままを言うクロナに説教をした。

そこまではいい。


だがしかし、ローザはその最中にキレた。


まあ、キレたと言っても、怒りとか堪忍袋じゃなくて、俺にあまり構ってもらえてないと思って、寂しさが爆発した感じだな。


いつも大人っぽく振る舞おうと頑張っているローザだったが、まだまだ子供な訳で、臨界点を超えてしまったようだった。


涙目のローザも可愛い。


俺としては、別にローザを(ないがし)ろにしているつもりは無いし、クロナを贔屓している訳でもない。


どっちも可愛いからな。


ただ、年齢にそぐわない落ち着きと、控えめな性格のローザよりも、天真爛漫なクロナの方が手に掛かる。それが、ローザに「自分よりもクロナが」と思わせる原因だったのだろう。

ローザは何でも口に出すクロナと違って、溜め込むタイプだからな。俺の気付かぬうちにストレスを抱え込んでいたのかもしれない。


兄として不甲斐ないな。もっと精進しなければ。


話を戻すと、キレてクロナと喧嘩になったローザを、クロナ共々何とかしてやれないかと悩んだ結果、思い立ったのが、二体一の訓練である。


クロナとローザは正反対の性格から、喧嘩になる事が多いが、結局は双子である。ふとした瞬間の仕草など二人共そっくりだし、息もぴったりだ。

二人の相性は、多分抜群だと思う。


個々人の魔法技能を養うのもいいが、誰かと協力して戦う経験を積ませていても損は無い。


二人を宥めるだけでなく、そんな思惑もあったのだ。


正直、二人を相手にできるか不安はあった。

まだ子供とは言え、体内魔力保有量は底無しだ。精神年齢が格上の俺と比べると、まだ技術こそ拙いが、だからといって弱い訳でもない。


二人で互いを尊重し、助け合えば、それに比例して魔法の技術も上がる。


だが、共同戦線などした事もない姉妹は、最初なら互いに足を引っ張り合うのではないか。それで隙もできるだろうし、自分が負ける事は無いだろう。


そう予想して、この勝負に踏み切った。


結果、予想通り二人は互いの事をまるで意識していなかった。

互いが思い思いに魔法を撃つため、味方同士の魔法がぶつかったり、味方を巻き込んでしまったりもしていた。

クロナの炎がローザを巻き込んだり、ローザの氷がクロナを氷漬けにしたりと。


見ているこっちがハラハラする羽目になった。


挟み撃ちをしようとしたのか、左右から挟み込むようにして迫って来たのだが、簡単に躱され、更に勢いを止められず、互いに顔面からごっつんこ。


その場で喧嘩をし始めた時には思わず深いため息が出てしまった。


そして、癇癪(かんしゃく)を起こしたクロナが放ったのが先ほどの爆炎である。



◆◇◆◇◆



さて、どうしたものか。


さっきから俺を睨みつけて狂ったように炎をぶつけて来るクロナだが、威力が弱い。

散々した俺の講釈は、完全に時空の彼方へ飛んで行ってしまったらしい。


一方のローザはイラつきはしているようだが、クロナよりもずっと冷静に攻撃してくる。

クロナが撒いた爆炎を上手い具合に隠れ(みの)にして、氷の刃を放って来る。

クロナが感情的に無差別に放った魔法さえも利用してやろうという皮肉たっぷりなやり方が実にローザらしい。


体良く利用されているのが悔しいのか、クロナは更に炎圧と量を増やしてくるが、それではローザの思う壺だ。

クロナはそれによって更にストレスを増しているようだ。

もうほとんどヤケクソである。


ローザのやり方は、確かに上手い。

上手い、けど……そうじゃないんだよ。


最初だから少しは仕方ないと思っていたが、ここまで酷いとは思わなかった。

見ている俺も何だかイライラしてきた。


今日はもう終わりにしよう。



◇◆◇◆◇



俺は、無数に向かってくる爆炎と氷の刃を、ひと息に吹き飛ばした。


二人は悔しそうに顔を歪める。

しかし、次の瞬間には、驚愕して目を見開いた。


そりゃ驚くだろう。

さっきまでいた場所から、俺が一瞬でいなくなったのだから。






「終わりだ」


俺は固まっていた二人の間に瞬時に移動し、二人の肩に手を置いて、そう呟いた。

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