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仔龍の轍  作者: ぱんつ犬の飼い主
第一章 守護の騎士
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『魔王』と『勇者』

ええと、前話の若干の修正と、気付かれた方は多いかもしれませんが、章の変更を行いました。

それと、後書きの方に今後の物語についてのかなり重要なお知らせと、お詫びがあります。

今後も読み続けられる方は、確認をよろしくお願いします。

俺はレスティが風呂掃除へ戻った後、何をするでもなく、食卓に突っ伏してモニターを眺めていた。


この世界のモニター、詳しくは『魔昌投影器』は、地球のテレビと違ってチャンネルと言うものがない。

流れているのは、(もっぱ)らニュースである。

『○○国の◎◎公爵家の長男が結婚した』とか『△△地方の□□街道付近で魔物が大量発生した』とか。

個人的にどうでもいい内容ばかりだ。

後者は割と重要そうに聞こえるが、基本家から遠くへ出る事のない俺にとっては、あまり関係が無い。

我が家の近辺は人が立ち入らぬ『禁足地』らしいので、いくら魔物が大量発生しようと、こうゆう『人のため』の情報機関ではそんな人が生活するにあたって関係なさそうな情報は発する事が無いのだ。

万が一魔物が大量発生しても、わざわざ龍の縄張りに進入するような馬鹿な魔物はいないしね。

いたとしても、その時は俺やクロナ達の魔法の餌食になるだけだ。


そういえば、俺は龍になってから、物事への考え方が変わった。

今まで、魔法の練習の時に魔物を実験台にして数多の魔物を塵にしてきたが、その時に命を奪う事に対して躊躇いはなかった。

平和な日本で育った者からしたら、ちょっとおかしい。


地球にいた頃、俺は科学の実験でモルモットなどの動物が実験台として用いられる事に、少なからず嫌悪を覚えていた。

しかし、今はどうだ。

科学の実験なんかよりもっと凄惨な事を平然とやってのける。


魔物の中には、小さな小動物のようなものもいた。

しかし、俺はそれを雷撃で木端微塵(こっぱみじん)にした。

それに対して何の感想も抱かずに。


時々今の自分が怖くなる。

もしかしたら、倫理観の変化は、俺が思ってるよりずっと深刻なんじゃないか?

もしかしたら、俺は人を殺す事を厭わないんじゃないか?

もしかしたら、俺はーーー、




ただの、化け物なんじゃないか?


俺はしばしば、こんな性質の悪い思考の迷路に陥る。


だが、今日の調査派遣部隊の訪問により、その暗い迷路に光が差し込んだ。

俺は、彼らと会話した時、彼らに対して無為な殺意は湧かなかった。

彼らの驚く表情などを見て、笑う事ができた。

俺は、一人の『人』として、彼らと接する事ができたのだ。


彼らが帰ってからその事に気付き、何だか無性に嬉しくなった。

安堵。そして喜び。

龍としての俺だけでなく、転生前の人間としての俺がちゃんと残っている事に、言い知れぬ安心感と喜びを感じた。


これは憶測だが、龍も人間も、物事に対する考え方や感じ方は同じなんじゃないだろうか。

愛しいものと過ごせば楽しいし、それを失えば悲しむ。

楽しい事があれば笑うし、悲しい事があれば泣く。


それはきっと、『心』を持つ者全てに共通する事何だと思う。


もちろん、個々人によって差はあると思うが。

俺や家族のような温厚な龍もいれば、人を殺す事に悦楽を感じるような謎な性癖の人間もいる。


『心』の在り様に、種族は関係ないんだ。

少なくとも俺はそう思う。


そんな思慮に耽っていると、モニターから気になる単語が耳に入った。


『本日、ルヴェリア法国から、忌まわしき『魔王』を打倒すべく、勇敢なる『勇者』が旅立ちました!』


思わずばっと顔を上げた。

ニュースキャスターの若い男が、興奮してやや上ずった声で原稿を読み上げる。


曰く、この世界、《フィア・レーゼ》には、魔物、そして亜人『魔族』を統べる親玉、『魔王』と呼ばれる存在がいるらしい。

『魔王』は体内に膨大な魔力を保有しており、その魔力に長期間当てられた生き物が変質し、魔物になるそうだ。

『魔王』の魔力は《フィア・レーゼ》全体を網羅しており、『魔王』の住む《魔王城グランケイオス》に近ければ近い程、魔物は強くなる傾向にあるらしい。


『魔王』の住む大陸、《ネヴュラス》には、『魔王』の眷属たる『魔族』が住んでいる。

『魔族』は魔法技術に優れ、身体能力も人間の比ではないらしい。


昔から『魔王』は『魔族』を率いて、人間達と度々戦っていたらしい。

『魔王』が人間の住む大陸へ侵攻する理由は語られなかったが。



そして今日、何百年と続く『魔王』との戦いに終止符を打つべく、一人の『勇者』が立ち上がったんだそうだ。


『勇者』は『魔王』に比肩し得る程の魔力を持ち、その剣技は飛竜(ワイバーン)を細切れにしてしまう程らしい。

俺には飛竜を細切れにする事がどれだけ凄い事なのか分からないが、とにかく凄く強いらしい。


そのニュースは、俺にとって正に驚きの連続だった。


この世界に『魔王』や『魔族』なんてのがいるなんて全く知らなかったし、魔物が『魔王』の魔力によって発生するなんて考えもしなかった。

とんでもなく強い『魔王』に匹敵するような強さを、人が持つ事ができる事にも驚いた。


もしかしたら、その『勇者』は龍なんじゃないか。そんな推測が浮かぶが、すぐにそれはないなと思った。

『魔王』を打倒する人類の希望のような人物が、身元の明るい人である事は明白だろう。


俺は人知れずため息をつく。

しかしそれは疲れなどからくるものではなく、感嘆からくる無意識のものだった。


この世界には、まだまだ俺の知らない事で溢れているんだ。

龍や魔法など、その一端にしか過ぎない事を俺は悟った。


途端、胸に何か込み上げて来るものを感じた。

何だかジッとしていられない。

意味もなく体を揺らしてしまう。


ああ、この気持ちは、初めて空を飛んだ時や、魔法を使った時にも感じた。

口元が緩み、無意識に笑みが浮かんでくる。


久しぶりに感じた、純粋な好奇心だった。


いつか、旅に出て世界を知りたい。

俺の心に、また一つ大きな夢が生まれた。




ずっと流れていたニュースが、今度は出立時の勇者の姿を映し出す。

俺も自分の世界から帰還を果たし、再びニュースに気持ちを向けた。


騎馬装備を身に付けた馬に乗り、観衆から声援を送られている『勇者』。

俺はその姿を見て、ぽかーんと固まってしまった。


馬に揺られながら、民達の声援に応え腕を上げるその『勇者』はーーー、






長い金髪の少女だった。


物語の大幅な路線変更とお詫びのお知らせです。

あらすじを読まれた方は気付いたかもしれませんが、あらすじの最後の文を変更してあります。

『日常』から、『旅』へ。

全く正反対ですね。

当初は龍として転生した主人公が家族達との生活を描くつもりで、その合間にある事件を挟むつもりでした。

最初はちょっとしたものにするつもりだったのですが、妄想はどんどん広がり、こうなると「アルバート君を旅に出さなきゃもったいない!」というところまでいってしまい、『日常』から『非日常』へと路線変更する事にしました。


「話が違う」と感じた方も多いでしょう。

アルバート君達のまったりとした日常を期待していただいていた方に対しては、深く謝罪申し上げます。

文句等々甘んじて受け入れる所存です。


最後に、ご不快に感じてしまった皆様に、改めて謝罪申し上げます。


ごめんなさい。

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