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燃えるプライド

作者: D

燦々照らす陽のもとに、若いカメが独りぽつんと。

ぎらぎらとその身を焼く太陽に抵抗してこういいます。

「お天道様よう、とうとうこんなに熱くしちまって、こんどの担当はへたくそだなあ。ゼエゼエハア。」

すると太陽がカメをみとめて怪訝な顔です。

「おや、カメ。いま下手くそと言ったかね。そんなはずあるまい。なにせ私は、銀河太陽訓練学校を首席で卒業したんだぞ。」

カメは息をまいて、遠くのお日様にちゃんと聞こえるように怒鳴ります。

「へん、今年の銀河太陽なんちゃらは、ずいぶんずいぶん出来が悪かったみたいだな!きみみたいなのが首席だなんてね!」

太陽は赤い顔をさらに赤くして、日差しを一層強くして、負けじとします。

「なにおうきさま、わたしはかの太陽さまだぞ!きさまの地球を照らすのをやめてやろうか!」

カメはいきりたってこういいます。

「やめてくれた方がよっぽどいいね!きみみたいなのは早くやめちゃって、田舎に帰って転がってなよ!」

太陽はもっともっと顔を赤くして、とうとう地球はふつふつと煮え始めました。

「ぐぎぎぎ、くそカメ、きさまは間違いなく焼き殺してやるぞ!わたしは首席だ、一番だ!」

老いたカメはもっと熱くなった太陽に、ついにたまらなくなってお願いします。

「わかったわかった、わかったからよう。これ以上暑くされたら死んじまうよ。きみが一番だよ。そうだってば。」

太陽は怒りで聞こえない様子で、まだまだめらめら燃え上がります。

「きさまのようなものはいくらでも死んでしまえ!わたしが太陽だ!首席だぞ!」

がなりたてる太陽を尻目に、カメはもう返事をしませんでした。

ぎらぎらと地球を焦がしていた太陽も少し経ってそれに気がつきました。

「しまった、地球とわたしは1億5千万キロメートルも離れているんだった。」

地球はいつまでも返事をしませんでした。

太陽はとぼけて言いました。

「音の速さはいくらだっけな?」


以降、銀河太陽訓練学校では、他の星と話す時の注意事項が授業で教えられるようになりました。

その第1項はこうです。

1.音の速さは1時間に340m。遠くに届くには時間がかかる。

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