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傍観その5

 散々いじられてしまった訳だが、それでも有意義な時間を過ごせた為比較的上機嫌に教室に戻る。

 頼れる先輩が2人も出来たのは僥倖だと言えるだろう。これは予測なのだが、そのうち間宮は周りに迷惑を掛けるようになるはず。

 今でこそ会長達に振り回されているが、ゲーム通りイベントをしようとすればそれは間違いない。となれば、間違いなくお2人に力を借りる場面も出てくるに違いない。

 そして、特に迷惑を被るのは3人の女性だろうとも用意に想像が付く。同時にその1人が南先輩だと思うと、モヤモヤが湧き上がってしまう。


 ……うん、まだ確信が持てる程ではないが、少なくとも気になっているのだろう。

 その程度俺がどんなに鈍かったとしても分かる。まさかそう言う思考回路がないんじゃと思うようなギャルゲーやラノベの主人公でもあるまいに、ここまで気にしているのに何何の所為だとかそんな寝ぼけた事をほざくつもりはない。


 が、冷静でいられるかは別だ。

 あー、自覚すると尚更気になってきた。

 多分あの申し訳なさそうな顔を見たせいなのだろうな。ならばすぐに行動に移すべきだろう。

 羞恥心も覚えているから先延ばしにしたい気持ちがない訳ではないが、それ以上に先輩に時間がない気がする。

 あんな忍ぶように涙を溢すだなんて……当然ライバルキャラだった先輩にある訳もなかったのだが、どうしても頭から離れない。


「となれば放課後待ち伏せしかないが……」


 呟く側から憂鬱な思いが浮上する。

 そりゃそうだ、1歩間違えればストーカーみたいなものだからな。

 恥を忍ぶつもりではあるが……嫌われたくないとどうしても思うのは止められないからな。

 はぁ、ままならないものだ。

 せめてあの脳内お花畑が現実とゲームの区別さえ出来ていればと思わざるを得ない。




 放課後、校内放送を聞きながら有り得ない光景を目の当たりにする。


「……先輩達は何故あの馬鹿共を選んだりなんかしたのだろう?」


 会議をしますと言う綺麗な声が流れる中、その中心人物であるべき会長に参加すべきであろう風紀委員長まで間宮ハーレムの一員としてどこかに移動していた。

 勿論、少しも関わりたくない俺は見て見ぬふりをしていたのだが、間宮本人や不良の先輩はともかく、2人もバカ教師と同じように白い目で見られ始めている現実に気付いてないのが更に凄い。

 俺なら絶対耐えられないな。あの精神力を買われたのか? ならば納得出来なくもないが、マイナス方向に作用している以上皆の期待を裏切っているには違いないだろう。


 いや、あんなどうでもいい奴らに思考を割いている場合じゃない。

 これから多分南先輩は居るメンバーだけで会議を進めた後あいつらを探す為に学校中を1度は見て回る筈だ。矢部先輩からの情報だから間違いない筈。

 ある意味好都合ではあるが、あんな奴らに心を割く先輩を見なければならぬのかと思えば、寧ろストーカー扱いされていた方が良かったかもしれないな。

 ……どっちもどっちか。はぁ、関わらなくとも迷惑を掛けてくるとか本当に凄い奴らだ。

 実際関わっているが為に迷惑を被っている人達に同情を禁じえない。


 現状も集中しきっている訳ではないが、昼前の授業の時よりマシな精神状態だったので復習をしつつ連絡を待つ。

 マナーモードにして胸ポケットに入れてあるから、来たらすぐに気付けるだろう。

 本当に頼りになる先輩だ。


 2時間弱程経ったくらいか、ようやく携帯が震え知らせが届く。

 見回りの先生にあまり遅くならないように言われた後だった為、これ以上遅くならなくてホッと胸を撫で下ろした。

 無論、引率の先生がいるとは言え未成年をあまり遅くまで残す事は考え難いが、それでも1人で勉強している俺の方が早く帰されるには違いないからな。

 待ち伏せでなく勉強帰りを装えば先輩に無駄に警戒される事もないと思いたい。あの容姿でどれだけモテるか聞かされた後じゃいささか不安ではあるけど。

 少なくとも勉強帰りには違いないのだし、堂々としておくべきだな。後ろめたい事がないのに挙動不審になるのは疑って下さいって伝えているようなものだし。


 緊張しているのだろう、とりとめもなく考え事をしながら片付けを始める。

 どのタイミングで南先輩がこちらに来るかは分からないが、のんびり移動していれば鉢合わせ出来る事だろう。

 無理に移動しすぎて変な場所で会ったら本末転倒だしな。


 結局先輩とは俺が下駄箱に辿り着いたところで出会った。

 正直これだけ色々やったのにまさか会えないかと不安に思ってきていたから、胸を盛大に撫で下ろしてしまったとしても仕方ないだろう。

 幸い先輩はそれには気付かなかったみたいで、キョロキョロ周りを見ているからな。


「南先輩! ……ですよね」


 声をかけるのにこれほど勇気がいったのはいつ以来だろう。不覚にも声が震えてしまった。

 おい、声をかけるだけで情けないぞ俺。

 先輩は突然声を掛けられたからだろうか、訝しげに俺を見つめて口を開く。


「そう……だけど、貴方は……」


「あっ、すみません。自己紹介もしてないのに失礼でしたね。

 僕は田中 雄星と言います。

 あの、覚えてませんか? 先輩がその……泣いてた時すれ違ったんですけど」


 緊張して舞い上がり、上手く喋れない自分にもどかしく思いながらも何とかそれだけ口に出来る。

 ハッと息を飲み気付いた様子の先輩。

 思い出して貰えたようで何より。ならばもう一頑張りだな。


「実はそれがどうしても気になってしまって――」


「貴方には関係ない!」


 突然の強い口調に驚いてしまう。

 なるほど、普段はとても穏やかな人らしいが、最近ピリピリしてしまっていると言うのは本当なのだな。

 間宮関連を見ていれば既に察しは付いていたのだけど、矢部先輩から更に詳しく聞けていた為不快に感じるより違う感情が胸に溢れる。


「あっ……ごめんなさい」


 すぐにあの申し訳なさそうな顔で頭を下げる先輩。

 それが、尚更胸にクル。


「先輩。僕は気にしていませんのでどうか頭を上げて下さい。

 寧ろ不躾に失礼な事を言ってしまってすみませんでした」


 俺が頭を下げればオロオロとしだす先輩。

 ああ、やはり本当は心根の優しい人なんだな。物凄く実感した。


「そんな、私こそ怒鳴る必要なんてなかったのに」


「それじゃぁお互いなかったと言う事にしませんか?」


 わざと明るく言えば、キョトンとした表情になる先輩。

 や、やばい、メッチャ可愛いんだけど。

 と、同時に目の下に隈を見つけてしまい、内心で衝撃を受ける。

 まさかそんなに余裕が無いとは、まるでゲーム状態に近づいていってしまっていると思う。

 そうなれば当然その原因になっただろう人物に怒りが芽生えるのだが、それは今必要な事ではないので必死に表に出ないようにおしとどめる。

 代わりに元々の目的を口にした。


「ではそう言う事で。

 後、先輩を呼び止めた理由ですが、会長達を探していらっしゃったんですよね?」


 そう聞くと、気まずそうな表情で頷く先輩。

 先輩が悪い訳ではないのに、背負い込む必要はないと正直思う。


「実は僕は間宮さんと同じクラスなのですが、その……会長達とどこかに行くのを見かけたもので。

 なので、間違いなく校内には居ないですし、探す必要はないと思いますよ」


 息を飲み肩を落とす先輩に胸が痛む。

 きっと気付いてはいたのだろうけど、それでも信じたいのだろうな。


「そう、ありがとう。それじゃぁ私も帰るわ。

 君も……田中君も気をつけてね」


 どこか寂しそうに言う先輩。

 だからだろうか、当初の予定ではこのまま去るはずだったのに気付いたら口にしていた――。


「先輩、もう遅いですし僕でよろしければ送ります」


 ――と。

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