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傍観その3

 さて、調べるとしてもどうするか。

 間宮の観察とゲームの記憶とで考えれば、最低限のフラグは全部立てた後と見て構わないだろう。

 と、ここで1つ不自然な事に気がつく。


「生徒会長、風紀委員長、ヤンキー、教師。幼馴染はこれから転校してくるから除外して……。やっぱり生徒会書記が足りないよな」


 いや、違和感はだいぶ前からあったんだ。何か足りないと。

 攻略キャラは全部で8人。年上が多いが教師1に先輩4人。同級生枠に幼馴染と隠しに2週目以降で登場する女装した訳ありキャラが1人で年下枠は後輩が1人。

 となれば、女装訳ありキャラも居ない訳だが、隠しだし2週目以降登場だから居なかったとしても違和感はあまり感じなかった筈。

 が、メイン攻略対象の1人でもある生徒会書記が居ないのはげせない。

 ゲームの記憶があって行動しているならまず間違いなく攻略しようとしているはずだ。

 となれば、当たるのはここだな。


 考えをまとめた俺は、早速休み時間に3年の教室へと向かうのだった。



「……考えなし過ぎた」


 ぶっちゃけよう、年下が年上の学年のクラスへ向かうなど早々ある訳もなく、注目は集めるわ緊張するわ。

 いや、逆だったとしても緊張するのだろうけど、同学年同士の何と気楽な事か。友達に会いに行く時とは緊張感が全く違う。


 ええい、来ちまった物は仕方ない。さっさと要件済ませよう。


「すみません、ちょっと良いですか?」


「お、なんだ? 1年が珍しい」


 人の良さそうな男の先輩に声をかければ、どうやら実際人が良いみたいで気さくに反応を返してくれる。

 思わずホッと胸を撫で下ろしつつ、要件を口にする。


「いえ、生徒会書記の先輩に用事があったもので」


「あー、なるほど。先生にでも頼まれたか。そりゃぁ災難だったな。

 ちょっと呼んでくるから待ってろ」


 おお、本当にいい人だ。ニコッと笑う笑顔も爽やかで、こんな先輩になりたいと思わず思う。


 ほどなくメガネを掛けた物腰の柔らかそうな、ゲーム時のイメージ通りの彼を連れてイケメン先輩が戻ってくる。


「ほら、こいつだよ。そんな警戒するなって」


「いや、君の事は信頼してるのだが、彼はまだ信用出来ない。

 それに、1年なんだろう? せめて2年ならまだしもなおさらさ。

 で、何の用?」


 が、誰にでも物腰の柔らかかったゲーム時と違い、明らかに対応が堅い。

 これはと思いたずねてみる事に。


「すみません、実はお聞きしたい事がありまして」


 そう口にしただけで一気に顔をしかめる書記の先輩と、あちゃーっと口にしながら苦笑いを浮かべるイケメン先輩。

 やばい、これは地雷踏んだか?


「やはり彼女の差金か。複数の男子に同時に色香を振りまく様な人はタイプではないと断っただろう。

 構わないでくれと言う申し出を無視するのもいい加減にしてくれないか」


「まぁまぁ、気持ちは分かるが抑えろって。

 君も早く戻りな」


 怒りを顕にする書記の先輩をなだめてくれるイケメン先輩。

 その好意はありがたかったのだが、殴られる事を覚悟で口を開く。

 正直なんでここまで意地になっていたかは分からないが、気付けば口を開いていたのだ。


「すみません、無礼を承知で聞きます。

 間宮 翔子から何かされ迷惑な思いをされたのですね?

 それが何だったのか知りたいんです」


 黙る先輩達。

 イケメン先輩は純粋に俺が逃げずに言葉を吐いたから驚いた故だろう、無論、書記の先輩は怒りが大きすぎてとうかがえる。

 ならば、再起動する前に少しでも言葉を紡ぐのみ。


「実は会長や風紀委員長に不良として名高い先輩に果ては教師まではべらす……と僕は認識しているのですが、彼女が先輩にも声を掛けていたと噂を聞きまして。

 それで、正直彼女とその周りに辟易している僕としては打開策になりうる話を聞けるのではと思って来たんです」


 この言葉は予想外だったのだろう、書記の先輩の表情が困惑に変わる。


「なぁ、佑樹。どうやら今までの相手と違うようだが、どうする?」


 気遣わしげにイケメン先輩が口を開く。

 相当仲が良いみたいだな。いや、この先輩なら誰にでもこんな感じな気がする。そして友達も相当多そうだな。


「……分かった。お昼の時間に話そう。

 そろそろ戻らないと授業に遅れるだろう?

 後、拓哉。一緒に来てくれないか?」


「ああ、お安い御用だよ」


「お2人ともありがとうございます。

 それでは失礼します」


 2人に頭を下げ踵を返す。

 これで情報を色々と集めれそうだな。


「ああ、待ち合わせは食堂で。3年の教室まで来るの大変だろ?」


 さり際にイケメン先輩が告げ、場所も聞かずに去ろうとするとかどれだけ自分がテンパっているのか自覚して思わず赤面してしまう。


「ありがとうございます。それではお昼食堂で」


「ああ、またな」


 にこやかな笑顔に見送られ、ホッと改めて胸を撫で下ろす俺。

 ああ、出来れば2度と3年の教室なんて行きたくないが……場合によっては行かねばなるまい。

 それでも色良い返事を聞かせて貰えた為、足取り軽く自分の教室へ向かうのだった。





 え?





 足早に教室へ向かっていたのだが、ふとすれ違うのは涙を浮かべた南先輩。

 すれ違う直前目があったのだけど、はっと息を飲む俺にごめんなさいとだけ告げて先輩は去っていった。


 いったい何があったんだ?

 悪い予感を胸に、途端に重くなった足取りで再び歩を進めた。

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