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傍観その1

 開き直れた日から彼女とその周りを観察しているのだが、まぁこれは彼女自身がまるでアイドルかと言わんばかりの愛らしい容姿をしていてくれた為、また彼女に惚れた男が増えたか程度の認識で終わったようである。

 うん、別に好きじゃないんだがそう主張しても受け入れてくれるかも分からないし、別にからかわれる訳でもないから流しておくに限るな。


 そんなこんな良い感じに観察する状況を得れた訳だが――。


「もしかしてあいつって俺と同じくゲームの事知ってんじゃねーか?」


 思わず口に出してしまったが、キョロキョロと周りを見れば別に俺を見ている奴なんていなくて、聞かれなくて良かったと胸を撫で下ろす。

 いや、でも本当にそう問いかけたくなるくらい行動が奇妙なんだよな。

 まだ皆気が付いてない様だけど、俺はゲームの事が記憶にあるから分かる。


 あいつ、特定の人物ばかり、つまり攻略キャラや主人公の親友ポジだったキャラに話し掛けているのだ。

 無論、偶々そうなったと言われれば現状否定できる要素はないのだが、聞けばイベントであった生徒会長と中庭で鉢合わせだの、風紀委員長に偶々付けていた校則違反のアクセサリーを見つかってしまうだの、出会い方からして狙ってるだろ? と問いかけたくなるような物が多い。


 ただ、何にしろ頭の方は弱いのだろう。成績自体は優秀らしいが既に女子の一部からは嫌われ始めているし。校内なら人の目があると何故考えないのかな? 容姿がそれだけ良ければ昔から注目集めていただろうに、その自覚がないような気がする。

 ただ見ているだけなのも悪いとか思っていたけど、攻略キャラ全てを攻略しようとする相手だと気付いたらそんな気も失せてしまった。

 逆ハーエンドがあるゲームだったけどさ、ここ現実だぜ? 文字通り現実見ろって思う。

 ちなみに嫌っている女子曰く何もかもが嘘くさいらしい。多分それ正解だよ。

 まぁ、今のところ見ている分にはそれなりに面白いし、迷惑を被っている訳でもないので傍観を続けようと思う。




 絶対あいつはゲームの事を知っている。

 そう確信するのに疑問に思ってからそう時間は必要なかった。


「いや、あれ有り得なくね?」


 隣の席だった男子がそう口にする。

 俺だってそう思うので会話をする事に。


「ああ、俺もそう思うよ。

 あれはあんまりだ」


 突然相槌を打たれ驚いた顔を浮かべるものの、苦笑いを浮かべて会話に乗ってくれる。


「そうだよな。と言うかスゲェわ」


 しみじみと語りつつお互いに視線を会話のネタになっている人物達に向ける。


「えー。先生ったら面白ーい」


「はは、間宮みたいな正直な生徒はやはり好ましいな」


 おいそこのロリコン。教師が女子高校生を休み時間中堂々と口説くな!

 いや、攻略キャラ達も大層な肩書きの割に頭の悪い事してんなー。とか思ってたけど。お前はダメだろ?

 今のご時世ちょっとした事で飛ばされたり下手すりゃ首を切られるんだ。

 ちょっと周りを見渡してドン引きの生徒達に気付けよ。


「いやぁ、ありゃぁ間宮さんが可哀想すぎるわ。

 教師相手だったら下手に逆らえないだろうし」


 同情するように言う隣の男子に、いや、あれは多分同類だと思わず口から出そうになる。

 やばいやばい。俺はもう絶対関わるものかと思っているけど、まだまだクラスでの人気は高いからな。

 入れ代わり立ち代わり校内で有名なイケメン達が彼女の元に通っているのだけど、それも絵になるしまだ概ね寛容されてるっぽいからな。

 あれだ、お前そこ代われって奴? 何にしろ美人ってだけでこれだけ得出来るのかと思わなくもない。


 まぁ、女子には見事に嫌われているけどな。

 親友ポジのキャラの女の子だってお人よしだからお前と話してくれちゃいるが、話し掛けると一瞬困った表情を浮かべている事にそろそろ気付こうか?

 女子の方が見抜く目はあるんだ、もうお前の方から関係を持とうとした事も大概の女子は見抜いてるって。

 そんな軽薄な真似をしている相手と友達になりたいなんて相手少ないだろうからな、奇特な人間もいるから皆無とまでは言わないけど、ただ少なくとも浜田さんはそうじゃなかったみたいだし。お前さんが多分男を落とす為にクラスに居ない間にバッチリ仲の良いグループ作ってるからな。

 今はまだ話し掛ければ相手をして貰っているようだけど、こりゃぁ断られた時が見ものだな。


「やけに熱心に見てるね。やっぱり好きな子が他の男と話していると嫌だもんなぁ」


「はぇ? あ、ああ、そうそう」


 うわーっ、ヤベー。思わず違うよって言いそうになったわ。

 どうやら彼は間宮の事が好きなようだな。まぁまだボロが出るって程じゃないし、となればクラスの可愛い子に惚れるのは普通の事だし、なんだ、ご愁傷様とだけ思っておこう。


「うー、同士よ。そう言えば隣だったのにまだ自己紹介すらしてなかったな。

 俺は林 健だ。よろしくな」


「俺は田中 雄星だ。こっちこそよろしく」


 まぁ、こう言う友情のスタートもありかもしれない。

 ……林が彼女の本性を知ったら色々話そう。とりあえず誤解されているって事実を利用しているだけで事実無根だからな。


 ともかく、2年からの選択授業の教師で、こちらから意識して関係を持とうと思わないと関係を持てない様な奴までこのザマだ。

 確信を持つには十分すぎるだろう。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんで否定しないの? 作者現実で陰キャすぎて自分の反応を参考にしたのかな?笑
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