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プロローグ

 ここからは愛実先輩視点で、主に恋愛面を中心に書いていこうと思っています。

 本編で満足されている方。イメージを崩したくない方。糖分多いの苦手な方等はご注意下さいませ。

 少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

 時々夢に見る事がある。

 忘れもしない私が5歳だった時、幼馴染でもある真宮寺 雅也と出会った時の事。

 真宮寺家主催のパーティーに父の仕事の関係で家族で出席する事となり、精一杯おめかしして上機嫌で参加した事を今でも覚えている。

 凄いお屋敷で、何もかもがキラキラしていて、まるで自分が本当のお姫様になったかのような気持ちになったのだっけ。

 あまりにふわふわした心地になりすぎて、いつの間にか一緒に居たはずのお母さんからはぐれたのにも気付かないほどだった。


「そんな貧相な服でよく僕の家のパーティーなんて出れたよね」


 なんて雅也に言われるまでだけど。


 雅也が口を開くまで、その容姿に王子様が出て来たとドキドキしたものだけど、綺麗な声色で満面の笑みまで浮かべつつそんな事を言われれば、あまりのショックに何も言い返せず呆然としてしまった。

 私自身も蔑まれているようで、何よりお母さんと一緒に一生懸命選んだ服を貶されてとても悲しい思いをしたんだ。


 物凄く悲しかったのだけど、ショックのあまり泣く事も出来ないうちに雅也は大人に呼ばれてどこかに行ってしまう。

 私はそれでようやく金縛りから解けたように体を動かせたのだけど、ここで初めてお父さんもお母さんも見渡しても近くにいなくて、はぐれた事に気付いたの。

 その悲しさと寂しさとで目頭が熱くなり、とうとう泣き声を上げようとしたところで高い声で私に言葉か掛けられた。


「ねぇ、お姉ちゃんどこか痛いの?」


 言われた方を向けば、自分より幼い男の子。

 特別容姿が優れる訳でも、また悪い訳でもない彼は雅也とは違って立派な服を着こなすではなく完全に着られているって感じだったな。

 ただ、素直に自分を心配してくれる眼差しに涙を我慢する事が出来ず、それを零しながら泣いちゃったんだっけ。

 オロオロとしながら心配してくれる男の子に、私の方がお姉さんと言う思いなんかなくてすがり付いちゃったのを覚えている。恥ずかしい。


 私が落ち着くまで一緒にいてくれて物凄く嬉しくて、現金な物ですっかりその子の事が格好良く見えた事を覚えている。

 子供同士で喧嘩しているならいざしらず、片方が慰めているのなら子供同士の事に首を突っ込む人は居なかったようで、また、母もその時は見当違いの場所を必死に探していたようで彼との間を邪魔する人は居なかった。

 泣き止んだ私にその男の子は笑顔で手を引きながら口を開く。


「お姉ちゃん。悲しい時は美味しい物食べると良いんだよー。

 美味しい物沢山あるから食べに行こ!」


「で、でも。私おかしくない?」


 ただ、私は雅也に言われた事が本当にショックで、ついそう聞いてしまう。

 ところが、男の子はキョトンとした後改めて笑顔を浮かべててこう言ってくれた。


「お姉ちゃんはまるでお姫様みたいに綺麗だよ!」


 正直舞い上がって咄嗟に言葉が出なかった。

 つい恥ずかしくて視線を逸らしてありがとうと言ったのだけど、彼は変わらずニコニコ笑って私を引っ張って行ってくれた。

 その後、彼と楽しく歩き回りつつちょこちょこ美味しそうな物を近くに居た人に取ってもらい、それを食べながらお喋りしたのだけど。途中で必死に私を探すお母さんを見つけ、笑顔で呼んだんだっけ。

 物凄い安心された後物凄い怒られた。

 多分周りの人もビックリしたんじゃないかな? 泣きながらごめんなさいと言い続けてたから分からないんだけどね。

 ただ、男の子としっかり手を繋いだままで、一緒に外まで出ちゃったけど。


「本当に心配したのよ、無事で良かったわ。

 次からはちゃんとお母さんの手を離しちゃダメよ。

 それと。ボク、お父さんとお母さんは?」


 ニッコリと微笑みながら目線を合せて喋るお母さんが、男の子に問いかければ男の子は会場の方を指差す。


「多分あそこの中に居るよ。

 まったく、すぐ迷子になるんだから」


 この時は、へー、お父さんとお母さんが迷子なんだと思ったのだけど、今ならお母さんの顔が引きつったのが分かる。

 うん、2人とも迷子だったのよね。

 あちら側のお母さんも必死に探してて、私のお母さんが会場のスタッフにお願いして連れてきてもらったんだっけか。

 後でお母さんに聞いたところ、両方の母親とも子が居ない事にテンパり過ぎて各々1人で探していたらしい。

 もしかすると似た者同士なのかも。


 それで、無事それぞれのお母さんと合流出来たのだけど、別れ難くて私が思い切りぐずったのだったかな。

 どちらのお母さんも困った顔を浮かべる中、彼がこんな約束をしてくれる。


「大丈夫。お姉ちゃん綺麗だからすぐ見つかるよ。

 だから、今度また会ったら一緒に遊ぼうね」


「うん! 約束よ!」


 そう言って指きりげんまんをし、次に会える日をずっと心待ちにしていたのだったかしら。


 その願いは10年以上経って叶う事になるのだけど、今の私があるのは間違いなくその時の男の子のお陰だ。

 彼のように人に優しくなりたいと思ったから、今では自然に人に優しく出来るようになったし、彼と会った時胸を張れる自分で居たいと思ったから何でも頑張れた。

 当時名前を聞きそびれた事は非常に悔やまれるけど、とても大切な私の思い出。


 夢を見た時はいつも焦がれる想いと寂しさとで胸を一杯にするのだけど。それを友達に話したところ、愛実って気持ち悪いくらい一途と言うか乙女だねって言われてしまったっけ。

 うん、正直同意するのだけど……気持ち悪いは流石にないんじゃないかな?

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