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傍観その23

 会長は転校。教師は辞職するらしい。

 いくらテレビで取りざたされたり新聞に載ると言うほど公にならなかったとは言え、生徒の口から事情を聞いた保護者の中には相当頭に来ている人達も多いと言う。

 午前中一杯授業が潰れたりしているのだ、それも当たり前だろう。

 しかも、俺のクラスは居残ってテストを受けるハメになったりと特に被害を被っている訳だし、怒りを覚えて当然だ。

 ならば校長や理事達も責任追及されるだろうし、教師が辞職となったのも当然の結果である。

 まぁ、他は生徒で若く未来があり、百歩譲って今後を見守る事になったとしても、教師で既に成人して何年も経ついい大人ならば責任を取って当たり前だし、その当たり前の責任を取っただけって話だな。


 会長は、居られなくなったのか、それとも親からの強制の転校なのか気になる。

 と口にしたら林がどうやら県外の親族が理事をしている学校に転校して、更には家庭教師も付け心身ともに鍛えなす事になっているらしいと答えた。

 しかも、教師は何だかんだで実家の家業を継ぐらしいとかまで知ってるし、お前本当にどこから情報持ってくるんだよ。


 俺にとってみれば都合がいいのであえて本人には突っ込まなかったのだけど、代わりに他の面々がどうなったのか聞いてみた。


 不良の先輩はあの日以来学校に来ていないらしい。

 ただ、グレているからとかではなく、なんか元々大家族でその関係で学校に来られない日もあったとか。

 おそらくだが多分このまま学校を辞めるだろう。


 風紀委員長はそれはそれは大人しくなったようだ。

 まぁ、誰に話しかけても無視されたようで、当然委員会の集まり等にも一切呼ばれていないらしい。

 未だ風紀委員長と言うのも、もうすぐ代が変わるから今更わざわざ選出しなおす必要もないだろうってだけの話みたいだし。

 まさに自業自得すぎるからそうなんだとしか思わなかったな。

 彼の不幸中の幸いはもうすぐ卒業と言うところだろうか。


 逆に幼馴染の彼はクラスで浮きまくってるし、今後2年半以上も同じ学校に通うのは苦痛かもしれない。

 とは言え、特別な役職に付いていた訳でもないし周りに掛けた迷惑は少ない。今後の生活態度次第では充分挽回出来るとは思う。

 ただ、もう今のクラスメイトはダメだろうな。俺を含め皆関わり合いになろうとしていないし、本人もこちらに関わろうとはしてないからな。

 毎日沈んだ顔でうっとおしいと思うのだけど、下手に周りに撒き散らさない分これはこれで良かったのかもしれない。

 問題は、間宮が学校に復帰した時にどうなるか……これはいささか心配ではあるが、まぁ何かあっても誰も止めない――と言うより関わろうとしない気がする。

 ……最悪俺が助けねばならないかもな。愛実先輩が悲しみそうだし。


 思わず重い溜息を吐き出せば、さっきまで揚々と語っていた林が同調するように口を開く。


「ああ、分かるぜ。ようやく一段落付いてホッとしたもんなぁ。

 これからやっと我がクラスにも平穏が訪れるな」


 能天気な林の言葉に思わずジト目になってしまう。


「おいおい、間宮は停学明けたら戻ってくるんだぞ。

 そしたら幼馴染らしいあいつと揉めるの目に見えてるじゃねーか」


「あー、あんまし騒ぎ過ぎたら皆ブチギレるかもな。

 特に女子は間宮ちゃんを完全に無視するって事で意見はまとまってるみたいだし。

 最初は報復するって流れもあったみたいだから、だいぶ穏便な対応になったようだな。まだそれじゃぁ許せないって言ってる奴らもいるみたいだけど。

 何にしろ間宮ちゃんは南先輩とお前とに感謝するべきだろうな」


 しみじみと言った林に首を傾げる。


「愛実先輩はともかく、なんで俺?」


「は? 気付いてねーの?

 ……天然って事か。じゃぁ良いや、忘れてくれ」


「いやいやいや、気になるし」


 教えろと詰め寄る俺に秘密にしてって言われている事でもあるから、気付いてないなら無理だときっぱり言い切る林。

 まじ何なんだ? くっそー、気になる。



 放課後、いつものように愛実先輩を家に送っていく。

 最近は期末考査も終わった事だし、話題はもっぱら今年の夏は何をするかだ。

 その前に生徒会の選挙があるのだが、現役の矢部先輩からの推挙だしほぼ大丈夫だろうと言う事である。

 夏休みもある程度は引き継ぎ等で時間を取られるだろうが、そこには愛実先輩も居る訳で何ら問題はない。

 色々と予定を立てつつ期待に胸を膨らませる。

 ここまで待ち遠しい夏休みなんて始めてだ。


「そう言えばさ、雄星君って真宮寺家主催のパーティーとか出た事ある?」


 不意に愛実先輩がそう聞いてきて、記憶を探れば幼い頃1度だけ出席したような覚えがある。


「親父は何度も出席しているようですが、僕は小さい時に1度だけだと思います。

 それがどうしたんです?」


「ううん、私さ、雅也と幼馴染だから何度か出席しててね。

 もしかするとその時会ってたのかもしれないね」


 嬉しそうに笑う先輩し、そうだと良いですよねと返す。

 ん? でもそう言えば誰か女の子と一緒にいたような気がしないでもない……が、本当にあやふやな記憶だし口にはしないでおこう。

 ただ、先輩がいつもより上機嫌になっているし、多分先輩なんだろうな。

 ……俺何やったんだろう? 流石に殆ど何にも覚えてないぞ。

 まぁ、先輩が上機嫌になっているんだし、無粋な事は口にするのは止めよう。


 そのまま仲良く雑談しながら家まで送り届け、最後にキスをして別れる。

 うん、これも一向に慣れない。

 照れのあまり叫びながら走り出しそうになるのを毎回堪えているとか、先輩が気が付いたらなんて思うのだろう?

 それにしても、本当に幸せだ。




 間宮が学校に登校するようになり、困った事が1つ発生した。

 早速幼馴染と揉めた! なんて事はなくて、そこは肩透かしを食らったのだが。

 忌々しそうに間宮を見つめる間宮の幼馴染の姿を見るに、今後1波乱は最低でもありそうで、ただ、それは間宮が超えるべき問題だろうし俺は知らない。

 他のクラスメイトに半ば無視されずっとしょんぼりした様子を見ていると、自業自得だしこの機会にしっかり反省すれば良いと思う。

 ただ、挨拶含め完全に無視しているグループもいれば挨拶だけは返してくれる子達もいるし。このままきちんと心を入れ替えそれを行動に出していればいずれ友達も出来るのではないかなと思った。

 いや、出来る。違う、寧ろ頼むからさっさと友達作って俺の愛実先輩を返してくれ!


 切実に願いながら視線を向ければ、困った表情ながらも相手を続ける愛実先輩と、周りが見えていないのか愛実先輩構って構って状態の間宮。

 懐くだろうとは思っていたが、ここまでとは。


「――でですねって、ごめんなさい。愛実お姉ちゃんと雄星お兄ちゃんのお楽しみの時間を邪魔しちゃって」


「おいこら、俺はお前の兄でもなければ年上でもない。その前にそんな事言うなら最初から遠慮してくれ!

 いや、兄というのは百歩譲ろう。肩を落としつつフラフラしてるお前に声を掛けたのは愛実先輩だし、確かに声を掛けられて喜ぶのも分かる。

 分かるがもう昼休み終わるぜ? 頼むからもう少し落ち着いてくれ。

 何も食事に混ざるなとも言わないし、決めるのは愛実先輩だとも思うが。

 お前があんまりマシンガントークぶちかますから先輩殆どご飯食べられてないだろうが。

 頼むからもう少し状況見れるようになってくれ。

 後先輩、僕にも構ってくれないと拗ねます」


 一気に喋り。相当情けない事を口にした事を自覚する。

 でも、それで愛実先輩が俺を相手してくれるならいいんだ。

 いや、よかぁないけど、こっちを気にして時折視線を寄越してくれるのに、肝心の間宮が気が付かなくてずっと相手しなきゃならんのが改善されるのならあえて泥を被ろう。

 ただただ本音が溢れただけだけど、そう言う事にしておこう。


 しょんぼりとごめんなさいと謝る間宮に、今度から気を付けようねとどこか嬉しそうに言う愛実先輩。

 宮城先輩と林が口を揃えてご馳走様と言い、矢部先輩がポツリと愛だなと零した。

 ……矢部先輩、なんか宮城先輩と林に毒されてません?



 ともかく、間宮を傍観する日々もこうやって絡まれる事になった以上完全に終わりを告げた訳で、何だかんだ賑やかででも平穏な毎日が始まったような気がする。

 無論、来年度になれば攻略キャラだった後輩が入学してくる可能性が高いし、それで何かしらありそうな予感もしている。

 兄貴――姉さんも完全な傍観に徹していたようだけど、俺に絡んで来た以上これからはなんかこっそり暗躍しそうなイメージだし。

 ……あの人暗躍するのとかそう言うの大好きだからな、よく傍観だけに徹せれたな、もしかすると何かあるのかもしれない。

 が、あの人に関わるとロクな事にならない場合の方が圧倒的に多いので、愛実先輩絡みの時以外は極力関わらないようにしておこう。

 今生では幸い兄弟でもないしな。


 さぁ、愛実先輩。これからもっとイチャつきましょうね!

 とりあえず本編はこれで終了となります。

 ただ、活動報告にて相談したりした結果、この後章を変えて南 愛実視点で物語を描いていこうと思いますので、今しばらくお付き合い頂ければと思っております。


 なお、本編のヒロインのイメージが崩れる可能性もありますので、ここから先を読むかどうかは読者の皆様のご判断に任せようと思います。

 そう言う意味での章分けの対応ですので。


 それでは、本編を最後までご閲覧頂き誠にありがとうございました。

 自分で想像するより遥かに多くの方に読んで頂けて感無量です。

 この作品自体はまだまだ続きますし、新たな作品にも手をつけていく事でしょう。

 今後も応援して頂ければ非常に嬉しいです。


 それでは、重ね重ねになりますがご閲覧誠にありがとうございました。

 次章も楽しんで頂ければ幸いです。

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