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傍観その18

 親父とのやり取りが終わって半月以上が過ぎ、クラス全員が呆れた目で間宮達を見つめる。


 そりゃぁそうだろう。ついにと言うか先日まで行われていた期末考査中のある休憩時間に、突然攻略キャラ同士での喧嘩が始まりテストの監督に来た先生を困惑させた上、その先生が何とか事態を収集しようとテストも始まるから教室に戻りなさいと言うのに対し、会長が後で受けるから結構ですとのたまい、間宮はテストよりも大事な事もあるんです、後でテストは必ず受けますから時間を下さいなんてほざいたのだ。


 この時多分全員が同じことを思った事だろう、何を言っているんだこいつらと。

 そして再び周りの迷惑も顧みず口論を再開させ、ただ1人俺はなるほどゲームの世界でも有り得ない事やってるなとか思ってたイベントを、多少形は違えど現実世界ででもやりやがったのかと思ったものだ。

 別にテストより大切な事があるのも、それを優先するのも構わない。

 だが、関係ないクラスメイト全員を巻き込むとかそれは絶対間違っているだろう。

 そんな事をしでかしたのに、会長がいる為だろう注意こそあったらしいが特別なお咎めはなしだったらしい間宮達。

 それに納得いかないのは、結局間宮達が騒いでいた所為でその時間にテストを受けられず、わざわざ他の生徒が帰宅するのを横目にしつつしなくともよかった筈の居残りをさせられた上で、本来の時間に受けられなかったテストを受ける羽目になった俺達だ。

 しかも、肝心の間宮は何故か居ないし、理由を問えば会長達と既にどこかに行った後だと言う苦々しい表情の教師から吐き出されたものだしと最悪だった。


 これだけやらかせば1度は好意的に戻ったとは言え、徐々に迷惑そうな視線が増えていた事も手伝い、一気に全員が白い目で見るようになったのも道理だろう。

 他の同級生や別の学年にも仲の良い奴は当然いる訳で、学校にいるほぼ全ての人間が事情を知っている状態で、最早間宮達に近づく者はいない。

 それでも全く応えた様子がないのは流石に凄いと感心したものだ。

 まぁ、単に自分達以外どうでも良いのだろうけど。


 そんな中校内放送で生徒会長が呼び出される。

 どうやら親父の方は仕事を終えたらしい。

 真宮寺グループの社長に会長とか滅茶苦茶多忙だろうに、どうやって時間作って貰ったのやら。まぁ、それだけ生徒会長が問題視されていたって事かもしれないが。

 流石に詳しくは分からないのだがそれより……間宮の方へと視線を向ければ呼び出されたのにも関わらず動こうとしない会長の姿が。

 いやいやいや、普段絶対に呼び出しなんてされないのにされたって事は相応の理由があるのかもとか、少しはそう言うのはないのかよ?

 今までどれだけ甘やかされてきた事やら、寧ろ俺にとっては好都合だから良いのだけど。


 そんな事を思っていたら、今度はダンディーな声がスピーカーから流れ出す。


「真宮寺 雅也。すぐに生徒指導室まで来るように」


 聞いた事のない声に一瞬首を捻るが、会長が弾かれた様に教室から出て行く。

 ああ、なるほど、絶対に逆らえない相手のご登場って訳ね。

 さてさて、何と言われる事かね。

 会長の行動に驚いた様子の間宮。ってか、お前校内放送あった事気付いているか?

 まあいいかみたいに他の攻略キャラ達と会話を再開させているが、会長が親族が築き上げた借り物の権力を取り返されたら、完全に他人事じゃ済まないぞ?

 どこまで行っても脳内お花畑らしくて、思わず溜息を付いてしまった。





 あの後1つ授業が終わると間宮達も呼び出され、そのまま放課後まで帰って来なかった。

 へっ、たっぷり絞られた事だろう。どうせ関わり合いになりたくないからどうでもいいが、これ以上迷惑を掛けられたくないし、少しでも改善される事は願っておこうか。


「おい、あいつらまたやってるぜ」


 なんて俺の願いなど通じなかったようで、林の言葉に頷く。

 今日は2人でお昼を食堂で取っているのだが、偶々間宮達も食堂に来てしかもいつもと変わらない様子にその場に居た全員が呆れた目を向けている。


「ほんとよくやるよな。あいつら厳重注意された後だろ?」


 呆れ返って言えば、林が口を開く。


「そうそう、聞いたところ会長の親父さんが大激怒だったらしいぜ。

 最初こそ穏やかに会話していたらしいが、全員当を得た事を言わないし、間宮に至ってはサブキャラの癖に早く出てきすぎとか何とか、もうどうしたらそんな言葉が出てくるって事を幾つも言ったらしいからな。

 流石に酷すぎると親父さんが苦言を呈すと、会長達全員が訳の分からない理由で庇う始末。

 それで怒らない訳ないよな。

 ブチギレた親父さんが今度問題起こしたら1から性根を叩き直してやると会長に宣言し、間宮達にも学生の本分をもう1度しっかり考えなさいと促し、その場に同席していた校長には愚息が申し訳ありませんと頭を下げたらしいぜ。

 校長カツラで隠してるけどさ、禿げた状態更に進行したんじゃねって噂だ」


「おう、色々詳しく話してくれてマジ助かるが、ホントどこから情報仕入れてきてるんだ?

 正直引くレベルなんだが」


 ドヤ顔な林に率直に告げる。

 いや、ほんとどうやって知ったんだよ? ついこの間の話しだし真宮寺グループの社長が関わっているんだぜ?

 人の口に戸は立てられぬと言うし、いずれ広まる内容かもしれないが、現時点でお前が知ってるのはやっぱりおかしいと思う。

 衝撃を受けたって顔で口をパクパクさせているが、俺の方が衝撃受けてるからな?

 大事な友人に変わりはないが、林に対する評価を色々変えなければならないかもしれない。

 内心でそんな事を思っていると情けない顔で林が口を開いた。


「なんだよ、折角仕入れた情報教えたのに引くってさ」


「いや、いくら友達とは言えまるでどこぞのエージェントばりに情報収集してくれば誰でも似た反応すると思うぞ?」


「むぅ、数少ない特技だってのに、良いじゃないか」


 むくれるように言う林だが、最早特技というか特殊能力ってレベルだし、それ以前にお前がむくれても寧ろ気持ち悪いだけだ。

 どうしたものかと内心で溜息を付けば、何故か姿勢を正す林。


 おや? っと思って振り返ればにっこり微笑む南先輩がいて思わず凝視してしまう。


「私も混ざっていいかしら?」


 そう言われ慌てて首を縦に振る。と、突然林が席から立ち上がる。


「おっと、俺用事あるんでした。

 どうぞどうぞ田中とごゆっくり~」


 わ、わざとらしすぎる。

 思わず待てと言いそうになるのだが、南先輩は笑顔のままありがとうと言って俺の隣座る。

 あのですね、毎回貴方の近くにいるだけで胸がときめいていっぱいいっぱいなんですから、せめていつものように開き直る時間くらい下さい。

 そんな情けない思いなど通じる訳もなく、にこやかに先輩は口を開く。


「田中君もA定食なんだね。ほら、私もお揃い」


 嬉しそうに言う先輩に思わず照れてしまう。

 ああもう、可愛いなぁ。

 っし、何とか気合を入れて平然を装う。成功してるかは知らないけど。


「そうですね、嬉しいです」


 微笑み返して言えば、少し照れた様子の先輩。可愛い。

 じゃない。もう少し落ち着け俺。


「あ、あのね。そう言えば今日放課後予定ある?」


 少しもじもじしながら聞いてくる先輩に、予定はあるなと頷く。

 途端にへにょっと悲しげに顔が歪んだので慌てて言葉を口に登らせた。


「いつも通り先輩を送り届けるって予定がありますが。何かあったのですか?」


 俺の言葉に目をパチクリとさせ、次の瞬間可愛らしく上目遣いで睨んでくる南先輩。


「むぅ、意地悪ー」


「……意地悪をしているつもりはないのですが」


 意地悪だと言われても他意はなかった訳で、誤解させた事は悪かったなぁと思うものの、思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 それを見てクスっと笑う南先輩。

 改めて先輩が口を開いて――開く直前すっと視線の端を何かが通り過ぎ、直後先輩の頭上に食べ物が落とされた。

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