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傍観その14

 転校生が、つまり間宮の幼馴染の攻略キャラがついにやって来た。

 ようやく南先輩の問題が一通り区切りが付きそうだと言うのに、厄介だな。

 確かゲームではここまでの時点で主人公と仲良くなってた攻略キャラ達と揉めるんだっけ?

 逆ハールートを何としてでも完遂しようとしていると見られる間宮が、まさかフラグを回収し損ねているとも思えないし、十中八九騒動になるのだろうな。


 勘弁してくれよと思う。

 そう言えば中間考査が終わった後に登場していたと思い出したので、ゲームに沿っているのだろうが、別に転校してくなくても良いと言うのに。

 現行の間宮ハーレムだけでも正直ウザいんだ。と言うか未だに間宮自身が対応しきれていると言い難い状況なのにこれ以上要らんだろう。


 紹介されている人懐っこそうなイケメンを見ながら、内心で盛大に溜息をつくのだった。


 で、後は予想通り間宮を挟んで大喧嘩。

 クラスメイトは険悪なムードに距離を取り、中には好奇心丸出しに、中には不安そうに、中にはどうでもよさそうに彼らを見つめている。

 俺は正直迷惑をかけるなと険悪な目を向けている事だろうし、その自覚もある。

 まぁ、間宮を見れば予想以上に揉めている事と、至近距離でいがみ合われている事に引きつった表情を浮かべている。

 うん、自業自得だ、自分で何とかしろよ。


 さて、これで来年度入学する後輩キャラと隠しキャラ以外は揃った訳だ。

 忠犬みたいな幼馴染。ミステリアスな雰囲気の教師。真っ直ぐな性格の風紀委員長。根は優しく実は純粋な不良。俺様で御曹司な生徒会長。そして逆ハーの魔の手から逃れたメガネクールの生徒会書記。

 定番と言えば定番の顔ぶれのはずだが……正直全員キャラ崩壊していると思う。矢部先輩だけは良い意味でだけど。


 間宮の幼馴染は今日初対面で普通ならまだ全く判断出来ないところだが、いきなり会長達と喧嘩出来るあたり頭がお花畑グループが1人増えたと考えて十分だろう。

 口喧嘩とは言え場所も状況も何もかもを配慮も考慮もしてない訳だからな。間宮の事だからとか寝言言いそうだが、別に付き合っている訳でもないとは本人すら口にしているし、短慮にも程があると言えよう。

 無論、抑えられない感情と言う物があると言うのは分かるが、想い人であるはずの間宮の制止も聞かない時点でどれだけ自分勝手な人間かうかがえると言うものだ。


「凄まじいなあれ、そのうち殴り合いになるんじゃねー?

 流石に間宮さんが可哀想だ」


 俺の隣で口にする林には同意出来ない。

 あいつ偶に口元をヒクヒクさせてるあたり、多分イケメン達に取り合いをされている事自体には喜んでいると思うぞ。

 単に予想を超えるほど罵り合う醜いあいつらが予想外なだけで。


 と言うか、本当に凄い。

 まだ手は出ていないが、既に全員が胸ぐらを掴みそうな雰囲気だ。

 それに、これまで互の存在を無視し合って間宮を口説いていたと言うのに、途端に存在に気付いたかのように思い思いに喧嘩し合ってカオスな事になってるからな。


「まぁ、もうすぐ授業始まるし先生来たら収まるだろ。

 本来は抑えなきゃいけない教師も同レベルに混じっているのは、もう苦笑すら浮かばないけどな」


「あー、あいつちょくちょく学年主任とか教頭や校長とかお偉方に呼ばれて怒られているらしいんだけど、メンタル強いにも程があるよな」


 お互い呆れたように言い合い、林と顔を見合わせ重い重い溜息を吐き出す。

 本当に勘弁してくれよ。

 ぼちぼち期末考査で親父との約束もあるから集中したいんだ、逆ハーも喧嘩も頼むから他所でやってくれ。





 結局あの後間宮を除いた皆が教師達に連れて行かれた。

 お陰で自習の訳だが、自分の勉強が出来るのは助かる。

 ちらりと間宮を見れば案の定にへらと笑みを浮かべており、俺の予想通り取り合いをされていたのを喜んでいたのだなと思う。


 ……はぁ、多分順調とかも思っているのだろうな。

 となれば、期末考査後にある生徒会選挙に立候補するのだろうな。

 ゲームでは生徒会役員キャラのそれぞれの個別ルートに逆ハールートでそう言うイベントがあったからな。

 詳しくはうろ覚えだから微妙に対策を立て難いのは困る。

 流石に何もかも覚えている訳じゃねーからな。


 物凄い嫌な予感がするが、さて、どう対処したものかねぇ。





「えっ、嫌ですよ」


 はっきりと答えれば、意外そうな顔をする矢部先輩。

 ってか、寧ろ提案された事自体がビックリだよ。


「良いじゃないか。俺達の仲だろう?

 ちゃんとフォローもするし、第一2学期の中間までは俺達もいるんだ。

 生徒会役員のどれかに立候補するくらいやってくれよ」


 確かに俺はしょっちゅう生徒会役員室にお邪魔しているし、そう言う意味でも立候補すると思われたかもしれないが、単に南先輩に会いに来ているとは矢部先輩こそ重々承知しているはずである。

 それに、中間が終われば先輩は役員から解放されるんだ。

 となれば、役員にならずにいた方が共に共有出来る時間が多いとすぐに思い立つし、それが分からない矢部先輩だとは思えないのだが。

 後、個人的理由だが間宮が間違いなく絡む以上下手に関わりたくないのだ。

 そもそも2年の先輩を中心に選ぶべきだろう、1年が1人もいないのはマズいだろうけど、俺以外を当たって欲しい。

 いや、間宮は何としても落とさせるけどさ。


「ふむ、もしかして南がフォローを途中で止めるとでも?」


「そこは多分ご自分の受験に集中されると思いますよ。

 どうやら国立大を受験されるようですし」


 そのへんのリサーチは怠る訳もないので、それこそ俺を止める理由にならない。

 が、ここでやはり2学年しか違わないとは言え年上はしたたかだと気付かされる。


「別にここででも勉強出来ない訳じゃないだろう?

 フォローするとは言え基本分からない時に教える程度だし、勉強しながらこの場にいるだけで十分なんだからな。

 なぁ、南」


「うん、そうだね。ちゃんとフォローするつもりだったよ」


 したり顔の矢部先輩の言葉に頷き、何故か俺の様子をうかがう南先輩。

 しまった、退路を絶たれていた! そうか、俺が南先輩に聞いた時の聞き方が悪かったんだな。

 勉強に集中するって言われてつい勘違いしてしまった。

 が、間宮と南先輩なんて天秤に乗せる必要すらない。


「あ、僕立候補します」


 してやられた感を強く感じるものの、一緒に頑張ろうねと笑顔で言う南先輩の姿にこれで良かったのだろうなとも思う。

 と言うか、多分南先輩は俺が立候補する前提で考えてた? 表情こそ出てなかったけど結構長い時間固まってたし。

 そうか、俺は色々知識があって間宮の事を警戒しているけど、先輩達はそんな知識もない以上警戒する理由がないもんな。

 前回親父を説得した後、実家に帰り着くまでに改めてダメ出しをされまくったと言うのに、早速思い込みでミスをしてしまった事に内心でうなだれる。


 うーむ、色々やらかしそうな間宮と同じ立候補者と言う立場ならそれはそれで警戒出来るだろうが、逆に南先輩に掛かり切りにもなれない事はどうしても不安だな。

 南先輩はもう推挙する人を決めているそうだし、ここは無理言っても矢部先輩に代われないか頼んでみるか? でも、責任感の強い南先輩は良い顔をしなさそう。


 ああ! 俺には幸いな事に助けを求めれる人がいるじゃないか。

 うん、彼の力を借りよう。 

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