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傍観その9

「なぁ、お前副会長や書記の先輩と仲が良いらしいな?」


 午後の休み時間林にそう話しかけられる。

 まぁ、割と視線集めていたし、既に噂になっているのかもな。

 矢部先輩と宮城先輩と昼食を共にするのはもう3度目だし。


「ああ、親しくさせてもらってるぜ」


「へー、間宮さん関連であまり1年では良い噂を聞かないってのに珍しい。

 ってか、田中って間宮さん好きなんじゃなかったっけ?」


 お、これは誤解を解く良いタイミングかもしれない。

 そう思いつつ口を開く。


「ああ、確かに美人だなとは思ってたけど、正直それだけだな。

 と言うか、なんかあれだけ男を囲っているとなんかね」


 苦笑いを浮かべてそう言えば、林は少し考えた後真剣な表情で喋りだす。


「……なるほど、それなんだが俺も同意したいと思うんだ。

 いや、色々周りの話聞いていたらな、なんか間宮さんの方から未だにアプローチ掛けてるようだし、実際見てて何だかなぁって思ってさ」


「ヌイグルミ見せてきた癖にか?」


 不思議に思って聞き返せば、顔を若干赤らめる林。

 うん、南先輩と違って全く可愛くないし寧ろ気持ち悪い。


「いや、それはあれだ、……やっぱり可愛いんだよなぁ。

 くそっ、見た目が全てじゃないのは重々承知してるんだが、間宮さんが俺だけのモノになれば。

 でも会長達のガードも厚すぎるし。話し掛ける事すらろくに出来ないんだもんなぁ」


 どこか悔しそうに言う林に、徐々に本性に気付きつつあるけどまだ未練タラタラのようだと思う。

 そして、何故俺からすればあそこまであからさまなのに皆が気づかないのだろうと思っていたのも、単純に会長達のガードが固くて話せない事もあったのだろうと気付く。

 会長達が男女問わず間宮相手以外にはおざなりな対応しかせず、既に嫌われ始めているのも間宮にとってはいい隠れ蓑となっているのかもしれない。

 間宮も攻略キャラ達の方で手一杯みたいだし、最早逆ハー築ければ他はどうでもいいとか思い始めたか? 結局親友ポジの子と仲良くなりきれずに終わったっぽいし。


 不思議な空間を作り上げる間宮達を眺め、思わず溜息を吐き出してしまった。





 中間考査が終わって自分の結果にそれなりに満足しつつ、ぼちぼち迷惑系イベントが来るかなと気を引き締める。

 間宮達は相変わらずで、最早我がクラスの風物の1つと化している。

 変わった事と言えば、彼女達をまともに相手にしようとする者は殆ど居なくなった事か。

 容姿は良いからファンは多少残っているようだが、間宮はともかく会長も風紀委員長も周りに迷惑掛けてばかりだからな。

 まともに相手にする方がより疲れるし大変だからと、今では南先輩中心に生徒会活動を行っている。


 それでも、南先輩だけは色々と気にかけ声を掛けたりしているようだ。

 が、馬鹿共はどこ吹く風どころか邪魔するなと声を荒げたりしているらしい。

 とうに切り捨てた矢部先輩の判断の方が正解だろう、とは言え、彼女の思いも無駄にしたくないので気を付けて下さいとはお願いしているものの、無理に止める真似はしていない。

 クラスどころか学年が違う以上何かあってもすぐに助ける事も無理なので、本当は無理矢理でも止めさせたいのだけどな。幸い矢部先輩と宮城先輩がフォローに回ってくれているからまだマシだけど。


 ただ、個人的には最近やけに落ち込んだ様子の多い南先輩が心配でならない。

 だいぶ仲良くなったと言うのに、何かありましたか? と聞いても心配かけてごめんね、大丈夫だからとしか返してくれないし。

 もどかしい事この上ないが、先輩から言ってくれるまでは待つべきだろう。


「おーい、田中。今回の中間どうだった?」


 手応えを感じているのか、考え事をしていると自信満々に林が聞いてきたので答える。


「まあまあだったよ。順位も前回と同じだったし。

 林は良かったっぽいな」


「ああ、今回はヤマ張ってたところが大当たりだったし、無論ちゃんと勉強はしてたがだいぶ良かったぜ」


 ニコニコと嬉しそうに点数や順位の載った小さな紙をペラっと見せてくる。

 いや、自慢したいのは分かるが、俺のは見せないぞ?


「うん、結構良いじゃないか。おめでとう」


「なんか反応薄いなぁ。クラスで3位だぜ? 学年でも20番台とか初だし。

 スゲーとかそう言う反応期待してたのになぁ。

 もしかしてお前相当成績良い?」


 訝しげに聞いてくる林に苦笑いを浮かべる。


「まぁまぁ、他人は他人。自分は自分じゃないか。

 こうやってハッキリ点数と順位とが出て比べられる物だけど、気にしすぎるのもなって思ってさ」


「ふーん、そんなもんか」


 どこか感心したように答える林。

 無論良い成績を残すに越した事はないと分かっているし、実際残せるよう努力もしているけど、努力したって事実が大事なのではないかと思っている。

 高学歴だと有利だと言うのは分かってもいるのだが、それだけではないと思うし、夢に向かって努力している友人も知っているからそう言う人を馬鹿にしたくないと思っているからかもしれない。


「そんなもんさ」


 だからと言って自分の考えを押し付ける必要はある訳もなく、軽い感じで流しておく。

 人の意見から何を学んで何を吸収するかなんて、それこそその人次第だろうしな。


「そう言えば聞いたか、間宮さんの話」


「は? いや知らないが」


 そう答えつつ、そう言えば教師に呼び出されていたなと思い出す。

 やらかすのはこれからだと思っていたが、既に何かやらかした後なのか?


「実は、相当順位を落としていたらしくてな。

 会長達も同様で、流石に問題視されたっぽいんだわ。

 橋本先輩は元より悪かったそうだが、あれが見逃されてたのも成績優秀者が主だったからみたいだしな。

 が、今回流石に平均よりも落ちていないものの前に比べれば悪くなっているとくれば流石にお小言も貰うってこった」


「ふーん、まぁ自業自得だな」


 まぁメールや電話ででも好感度上げに勤しむならそりゃぁ勉強する暇ないだろうからな。

 勉強せずに成績をキープしようだなんて、授業受けているだけで好成績が取れるようなタイプでもなければ無理だろう。

 と言うか、進学校なんだし皆が努力しているんだ、そんな中努力しなければ抜かされるなんて当たり前の話である。


「ところが話はこれで終わらないんだな」


「と言うと?」


 多少勿体つけた言い方に、ここからこそ喋りたかったのだろうなと思う。


「実は、説教を受けているのに間宮さんが何よゲームじゃ出ても来なかった癖にとか言ったらしいんだ。

 突然の意味不明な言葉に説教していた先生方は思わず皆黙ったらしいぜ。

 しかも、会長達はその後も間宮さんを擁護していたみたいだし。

 あまりの予想外の展開に面食らった先生達は、今後様子を見るって事で見逃す事にしたみたいだけど、相当印象は悪くなったようだぜ。

 ちなみにソースはその場に居た先生だから、確実な情報だぜ。誰かは口止めされてるからオフレコで」


 その場に居た先生からの情報ならば、間違いなく確かな情報と言えるだろう。

 と言うか、マジで予想外な方向でやらかしやがるなぁ。頭の中はお花畑か?

 それは思ってても絶対口にしちゃならんだろに。とは言え、幾つかのイベントは先生達を通さねば出来ない筈だし、やろうとしてもそこで握り潰されるだろう。

 先生に上手く取り入られるより遥かに良かった訳で、呆れながらも胸を撫で下ろす。


「ってか、ほんとよく情報集めてくるよな。お前」


「いやー、色々話聞くのが好きでな。それにこう見えて口が堅いから割と皆色んな事話してくれるわけよ。

 お前にだって基本間宮さん関連以外話してないだろう? それに、口止めされている事は一切漏らしてないしな」


「そう言えばそうか、まぁ助かるから良いが。何で間宮関連の話をしてくれるんだ?」


「そりゃぁお前が南先輩にアタック掛けてるからだろうがよ。

 勿論最初は間宮さんが好きだと思って、だから共通の話題はこれだって話してたけどな」


「なるほどって、アタック掛けてるってなんだよそれ?」


 自信満々に言われ不思議に思い問い返せば、逆に不思議そうな顔を返される。


「いや、アタック掛けてないのか? あれだけ付きまとってて?」


「付きまとうって嫌な言い方するなよ。会いに行っているとか他に言い方あるだろ?

 まぁ、掛けてるから良いけど、そんなに分かりやすいか?」


 問い返せば縦に頷かれる。

 別に隠してないし、先輩目立つからバレてても仕方ないか。

 特に問題があるとも思えなかったので、そっかーとだけ返しておく。


 ふむ、となれば先輩も周りから色々言われている可能性は大と。

 それでも邪険に扱われたり避けたりされないって事は、俺の予想以上に好感度も上がってると言う事だろう。

 なら、多少強引に聞いても大丈夫かな?

 前言撤回になってしまうが、今度は少し突っ込んで色々先輩に聞いてみようと決意を新たにする。

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