3. ホーランド城 3
GW後の疲労で書く気力がでなく遅くなりました。
ハイランドさんとコバックさんが出て行った後、入替わりに数人のメイドさんが入ってきた。おお!本場のメ・イ・ド・さ・んではないか!中世の貴族に仕えていそうな雰囲気のメイドさん達。感激しつつ見ていると、
「勇者様、お着替えと採寸をさせて頂きます。」
とメイド長的な雰囲気のメイドさんに言われた。それと同時にメイドさん達が回りに群がってくる。その後ろにはいつの間に運び込まれたのか、様々なサイズの皮鎧一式が用意されている。
「ええ、どうぞって・・・。裸にするんですか?ちょっと・・・まって・・・・いやーーーー。」
問答無用で身包みを剥がされあっちこっちを採寸される。まあ、夢のような一時といえばそうだが、なんとなくもの的な扱いをされている感が嬉しさ半減の要因となっている。
「それでは、お食事の用意をいたしますのでもうしばらくお待ちください。」
まさに流れるような感じであっという間に着替え終了。気が付いたらまさにファンタジーな姿になった。皮の鎧、皮の手袋、皮のブーツ、インナーは布製のチュニックにズボンだ。なぜ白銀の鎧とか鋼鉄のフルプレートではないのだろうか?ちょっと初心者より上的な装備・・・。まあ、いきなりフルプレート着て動き回れる自信はないがねぇ。皮装備だが全部着ると結構な重さである。慣らすのにはいいのではないだろうか。
「武器はないの?」
そういえば、あの中に武器は一切なかった。
「勇者様の適性を見たうえで武器は渡されると思います。こちらにお食事の用意ができました。」
質問をわかっていたかのようなスムーズなメイド長の返事である。それにしてもこの会話の間に食事の準備ができてしまっているとはおそるべしメイドである。ハジメは感心した表情をうかべながら、食事の席への案内をうける。
「ああ、ありがとうございます・・・ってこれは!」
ハジメは食事のテーブルを見て驚いた。まるで満漢全席のようなテーブルの端から端へ大量の食べ物が並んでいる。どこの皇帝がたべるのだろう?いや勇者って大食漢だとか?奥の食べ物がなんなのかわからないくらい遠い。手前だけでお腹一杯になるぞ。
「これって全部私が食べるの?」
ハジメは思わず聞いてしまった。
「はい、と言っても召し上がれるだけ召し上がってください。勇者様が何がお好きかわからないのでできる限りの料理を揃えましてございます。」
と満面の笑顔でメイド長が答えてくれた。
見たことある様な食材やまるきり不明な食材を使った料理が所狭しと並んでいるのは非常にある意味楽しい。しかも最近コンビニの食事ばかりのハジメにとってこれは最後の晩餐並の豪華さだ。いや、べつに最後ではないが、それ位ということだ。
「じゃあ、頂きます!」
さっそく目の前の何かの揚げ物をパクリと食べてみる。ジューシーな肉汁とさっぱりとした後味のあるから揚げのような食感。そしてピリッとした香辛料っぽいものが食欲をそそる。ハジメはもう手を止めることができなかった。
「これもおいしいな。おっ、これはパスタっぽい。これは?うーん、スズキのバターソテーっぽいな。おっこれも・・・。」
完全に食事に没頭しているハジメ。周りのメイドが絶妙なタイミングで次の料理を小分けに取ってハジメの視界内にそっと置いていく。流れるような動きだが、ハジメは気づいていない。食べるものをさりげなくコントロ-ルされている事に・・・。
「ふー、ごちそうさまでした。」
自分では気が付かないほど多くの料理を食べていた。よくよく考えば小分けに取ってくれたおかげで多くの料理が食べれていたようだ。まるでワンコソバみたいだったなと、ふと食事中の光景をハジメは思い浮かべた。
「それでは勇者様、大司教様がお呼びですので、こちらにお越しください。」
とメイド長の後ろからショートカットのメイドさんが声をかけてくる。オレンジ色の活動的な印象のこだ。
「あっはい。どちらへ?。」
この部屋じゃないのか。どこに連れて行かれるのだろう?ハジメは食事の食べ残しをふき取りつつ立ち上がる。
「神殿の方でお待ちです。勇者さまの魔力適性を見られるそうです。」
おおっ、ついに来ましたか!適性確認!勇者の超能力がわかるのかー。すごい能力だといいな。できれば楽出来るような能力に期待だ。ファンタジーな能力カモン!
メイドさんについて城内を歩きつつ、城内の様子も確認する。中世のヨーロッパ調ではあるが所々に異世界らしき造りがみえる。というよりは、ハジメの知識からすると中世の城には無いコレなんだというものが所々にあるのだ。浮遊しているシャンデリアや窓が無い筈なのにスリガラスの様に外がぼやけて見える所などがあるのだ。なにかしらの魔法的なもんだろうと思いつつ、ついていくと、
「こちらの中庭を通ります。」
と中庭に出てびっくりした。そこは中庭というには強大な庭で、園庭?外?といった方がいい広さを誇っていた。一部には森や丘もあり川・湖など、これは中庭に必要なのか?というものが多々見受けられた。
「中庭にコレだけの敷地いらないだろ。」
と思わず声にだしてしまうハジメ。日本人にとっての中庭とは狭いなりにも雅さがあるというものだが、雅と言うか壮大さしか感じられない大きさだ。その中央の湖の中に威厳のある神殿が見える。入り口には女神像があり神秘的な風景だ。
「綺麗だなぁ・・・。」
と呟きつつハジメは神殿に近づいていった。
「ぶっ・・・あれ、邪魔!」
とハジメが思わず口走ったのは、その女神像の影で見えなかったが神殿の入り口にはさらに大司教の胸像があったのだ。威厳のある神秘的な雰囲気が、近づくとその胸像により世俗的な雰囲気にかわる。まさに反比例効果満載だ。大司教の人となりが現れ・・・いや具現化したのだろう。なんであんな所に、もっと端っこいや、小屋で隠すとかした方が信仰心あがるんじゃないだろうかと罰当たりな考えをしてみる。
そんな余計なお世話な考えをしていると、
「おお勇者殿、お待ちしていました!さあさあ、こちらへどうぞ!」
と大司教のコバックが出てきた。当たり前だが胸像と一緒の顔だ。2つ並ぶと暑苦しいな。表面は笑顔でうけつつ、失礼な感想を頭の中で述べながら神殿内に入っていく。
「こちらが魔力判定を行う水晶球です。また特殊なスキルもある場合は具現化されます。」
魔力判定か・・・魔力量や属性とかだろうか?特殊なスキルの具現化?まあ、判定すればわかるだろうな。
「どうすればいいのでしょうか?」
ハジメは水晶球に近づきつつ聞いてみる。
「手を翳すだけで結構でございます。」
と言われたので手を翳してみる。水晶球の中が曇り始めた・・・・・・・・・・・・・・・・・。しばらくたったが変化なし。ハジメも、コバックも無言だ。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。手を翳したまま、数十分がたった。しかし、曇り始めた色のままである。
「あの、これってどういう・・・?。」
ハジメは恐る恐るコバックに聞いてみた。
「そ・・・そんな馬鹿な!!ありえない・・・。」
コバックは、真っ青な顔になり言葉が続かないようだ。震え方が尋常ではない。まさかものすごい魔力量とか、能力がでたのか!!とハジメは喜びを抑えつつ、コバックの答えを待った。