1. ホーランド城
う・・・うーん。一体何が起こったんだ?ハジメは、目を開け周りを見渡した。目に入って来たのは先ほどの中世の城っぽい雰囲気は同じではあるが人が半端なくいた。30~40人といった所だろうか?ほとんどが赤の鎧をまとった兵士達で数人、魔法使いの様な文官っぽい人がいる。ハジメの足元には銀色の大きな魔方陣があった。先ほど頭上にあったものと同じである。
「え?なんだ?さっきと違うし、何がおこったんだ?」
ハジメがつぶやきながら、周りも見て状況把握をしていると兵士が左右に分かれ、奥から3人の人物が近寄ってくる。
「ようこそ勇者殿!!」
真ん中の王冠をかぶった若者が話しかけてきた。王様だぞという態度となんとなくふんぞり返っているような気がする。あくまで第1印象だが、これは重要だ。顔は体を表すって違うか。勇者ってやっぱ俺の事なんだろうな・・・お約束がきましたよー。これで魔王を倒してくれとか、世界を救ってくれとかいう流れになるんだろうなぁ。やっぱ、夢じゃないのか・・・。と、考えにふけっていると目の前の王らしき若者が横にいる魔法使いの様な文官に話しかけている。
「ちゃんと召還した際に言語翻訳の魔法はかかっているのだろうな?」
「は、召還した際にしっかりと組み込んでおります。おそらく王の言葉は届いていると思われますが、恐れ多くて恐縮しているのでしょう。」
「そうか、まあ余の威光が強すぎるということか。」
「そうでございます。」
二人はひそひそと目の前で話しているが、ハジメは内容がまる聞こえなので聞こえない振りをしてみた。なんとなくこの王様の第一印象が当たっている気がしてきたのは気のせいではないようだ。
「勇者殿!わがロイエン国は今重大な危機を迎えておる。この国をそなたに救って欲しいのだ!」
えらいぞオーラをバックにこれでもかという顔で話しかけてきている。うーん、出来れば断りたくなったな。こき使われそうな気配がおもいっきりするが・・・。話だけでも聞かないとわからないか。
「えっと、それはどういう事ですか?」
「おお!そうか引き受けてくれるか!それでは詳しい話はこの者達から聞いてくれ!」
とそそくさときびすを返し、ゾロゾロと兵士を連れ部屋から出て行った。
「え?あの・・・ちょっと・・・。」
おいおい、仮にも召還した勇者に対してそれでいいのか?と突っ込む間もなくハジメは呆然と立っている。お約束な流れが端折られてないか?名前もきいてないけど!!いや聞かれてないけど!!いいのかーーー!と魂の叫びを出している所へ、王の両サイドにいた二人が話かけてくる。
「勇者様、私は宮廷魔術師長のハイランドと申します。こちらは帝国神官院大司教のコバックです。詳しいお話をしますのでこちらの部屋にお越しください。」
と丁寧なおじぎで話しかけてくる。しっかりした応対と言葉使いは、この混乱した状況の中ほっとさせてくれるものだった。
「わかりました。まったくわからないので詳しい事以外にも質問をさせてください。」
「ええ、もちろんですとも。」
笑顔で答えて今いる部屋をでて、隣の部屋へと誘導してくれた。疑問点は非常に多い。まずこの世界の状況。そして頼まれようとしている危機とは何か?魔方陣が2つ出ていた事。元の世界に返れるのか。お約束の特殊能力もしくは絶大な力か何か持ってるのか?ここは重要だ。何もわからないまま、はい、いってらっしゃいでは確実に死んでしまうだろう。そう色々な小説を読んでいるおかげでチェックする点はわかっている。はまっていたのが重要な知識になりそうだ。運がいいな・・・まあ、異世界に召還された時点で運がいいのか、悪いのか。と、自分の考えにふけっていると、それを話をまっている体勢と思ったのか、
「それでは、お話させていただきます。」
ハイランドさんが、おもむろに話し始めた。
話の内容からすると、この大陸はオーストラリアの様な大陸でそれを横に2分割し、さらに縦に3つに割ったような国分けになっているようだ。下半分を人間の国家、上半分を魔族国家が統治しているらしい。この国は右下に位置する国のようで魔族の国とは大きな大河をはさんで対峙しているとの事。
「それで何が危機なのでしょうか?その魔族に攻められているとか?魔王が復活もしくは倒してほしいとか?」
俺はよくあるパターンを聞いてみた。
「魔王ですか?魔族の各国の王が魔王と呼ばれてはおります。現在魔族による攻撃はありません。」とハイランドがいった。
「えっ、では危機というのは?」
まさか間違って召還されたとか笑えないぞ・・・。いや、あの上から王様は確かに危機と言ってたからそれはないだろう。
「それは、勇者様の召還とも関係あるのですが・・・。」
なぬっ?危機が近づくと自動的に召還されたりとか・・・。
「100年前に南の人間連合軍と魔族連合軍の戦いが境界線で発生しました。その時人間連合軍には3人の勇者がいたのです。」
おおっ勇者の安売りだな。普通の話では1人なのに3人もいれば最強じゃないか?
「で、3人もいれば勝ったんですよね?」
「いえ、それが その内の1人が暴走し強大な魔力を使用して2人の魔王と他の勇者2人そして多くの兵達とともに消滅したのです。その後がこの大陸の真ん中にある強大な湖となっております。その余りの被害の大きさに共に兵を引いたのです。」
うはっ暴走って・・・しかも魔王だけでなく仲間も・・・どんな自爆魔法使ったんだ・・・。迷惑な勇者もいたもんだ。
「なるほど・・・で私と関係あるというのは?」
まさか、魔王と戦い自爆してこいとかじゃないだろうな。バンザイアタックハキョヒリマスヨ。
「実は召還魔方陣は、稼動させる為には100年の年月が必要なのです。そして各王国にはその魔方陣があり、100年前の戦いの時に各国が召還した勇者を先頭に魔族と戦いました。そしてお互いに軍を引き、小競り合いを繰り返し対峙してきたのです。しかし今回2国がその召還をしない・もしくは連合軍結成をしないという事になったのです。どうやら100年前を教訓にして独自で攻めようという事なのでしょう。召還をしているのかも不明です。」
ふむ、また暴走してしまっては意味がないと思ったのかな?勇者1人でもきっとすごい戦力なのだろうからなぁ。100年かけて呼ぶわけだし・・・。しかし、その度に戦争をしていたのかな?
「このような事は過去にあったのですか?」
でなければ100年毎に危機が来ている事になるのだが?
「過去の例ですと、魔族の侵攻に合わせて召還していたようです。100年前の連合軍というのが珍しい例でしょう。」
すらすらと質問に対してハイランドは答えてくる。予想の範囲内だからだろう。
「なるほど・・・そうですか。」
そんな頻繁に勇者呼んで戦ってるのか・・・。どんだけ他力本願なんだこの世界・・・。魔族って勇者いないとまともに戦えない程強いのだろうか。いや、そうしたら100年の間に攻めてきて人間社会は終わってるはずだな。黙っているのが質問がないと見たのか、ハイランドは話を続けた。
「我がロイエン国は、長年魔族の攻撃を受け続けてまいりました。ここ数年その規模が大きくなってきたのです。近いうちに大規模な侵攻作戦があると思われています。そこで勇者による魔族国奇襲作戦による先制攻撃をして後顧の憂いを無くしたいのです。」
なるほど・・・どうにか防衛できているが反撃まではできないと・・・。まあ、状況はわかったけど1人で頑張れるのかなぁ。