美咲の恋模様1
語り手は、長女美咲ちゃん!!
8時きっかりに、賢人は家の前まで迎えにきてくれた。といっても、賢人の家は家から徒歩1分、走れば30秒以下で着くんだけどね。
バスで15分くらいで着く水族館。何回かは行ったことがある。けど、お母さんが死んだここ4年くらいは、家族でこういう場所にあまり行かなくなった。
何だか、久しぶりだった。
イルカやベルーガが、最初に泳いでいた。
「可愛い!」
「最近産まれたばっかりのイルカがいるんだって。」
賢人は、イルカの水槽前まで連れて行ってくれた。
親イルカと子イルカが、仲良く寄り添って泳いでいる。バンドウイルカ、と書いてあった。
「美咲、イルカ好きだったっけ。あと30分くらいでイルカショー始まるよ。見に行く?」
「うん!!」
私は、いつもの生活のことを忘れて、少し子ども心を取り戻していたのかもしれなかった。
イルカショーを楽しみ、ホッキョクグマやペンギンを見て、世界の珍しい魚をたくさん見て。賢人がどうしてもおごると言ったので、ペアのイルカのストラップを買ってもらった。
お昼は、近くのファミレスに行った。ショッピングモールで、少し買い物にも付き合ってもらった。友達とは、あまり普段してないことを、賢人に付き合ってもらった。普段は、家事や家族のことで忙しくてそれどころじゃ無かった。私が勝手に家族の心配をしてるだけなんだけど、それでも、私には少し容量オーバーな部分があったかもしれない。
賢人は、北原家長女としての私ではなく、あくまで北原美咲自身として、私を見ていてくれていた。
まだまだ明るかったけど、もう4時。そろそろ帰って夕飯の支度しなくちゃ。さすがに、夕食くらいは、私がちゃんと作らなきゃ。
賢人は、丁寧にも家まで送ってくれた。
「今日はありがとう。久々に遊べて、すっごく楽しかった。」
「美咲、ちょっといい?美咲にいい加減、言っておくべきことがあるんだけど。」
な、何?今さら…。
「俺さ、ずっと美咲のこと…」
賢人が急に、真面目な表情をした。
「好きだ。お前は、俺の一番だ。」
私は、フリーズしてしまった。無理ないよ。
ずっと幼馴染だと思ってきた、賢人からの急な告白。
私自身の気持ちが、全然分からなかった。