2話
我が家にうちの高校の女の子が一体何の用だ?と思いながら近づくと、紛れもなくあれは糸虫さんではないか!なぜうちに来たんだ!?
そのまま自宅から30メートルくらい離れた曲がり角で様子をうかがっていると、彼女は俺の家から離れず、周囲をうろうろしている。どうやら本当にうちに用があるらしい。
「うちに何か用?」
糸虫さんに背後から声をかけて見ると、思いの他びっくりしてこちらに振り返った。急に家に来られてびっくりしているのはこっちなんだが。
「あ、斉藤君、ここ、斉藤君ちだよね?急に家まで来てごめんね?」
何をおっしゃる、美人ならいつでも大歓迎ですョ。と思いつつも俺はさしてイケメンでもないし本当になにか事務的な用件があって来たんだろうなぁ。俺に何の用だろう?
「糸虫さんうちになにか用なの?」
と呼ぶや、
「名前で呼んで、苗字嫌いなの」
と険のある声で返された。怖い。
「わかった、ごめん、でもどうしたの?」
「うん、あのね、そのぉ…斉藤君て好きな子とかいる?」
え?
今なんていった?
「もし付き合っている人とかいなかったらしばらく私とつきあってくれない?」
ええ?
「え?どういうこと?」
なにこれ、嬉しすぎるんですけどなぜこんなかわいい子が俺にこんなことを言ってきたんだ?混乱していると糸虫さんは、
「あなたは私と一緒にいなくちゃいけないのよ、離れてもらっては困るわ」
と続けて口にした。
自分の顔面がだらしない笑顔から無表情になるのがわかった。
いまちょっとなんか違うセリフを口にしなかったかこの人。アレな人なのか?美人だけど中身がアレな人とかやっぱりそういうオチなのか。
「ごめん学校に忘れ物した」
と言うや180度ターン、ダッシュして逃げる。逃げろ俺。なんか「待ちなさい!」とか聞こえるけど無視して走れ俺。
と、走っていると道の真ん中の空間にA4サイズくらいの穴が開いているのが見えた。
なんだこれ。
走って近づいている間にもにも空間がどんどん広がりだし、人間大くらいになり、そこから人間が出てきた。さっきから何なんだ俺の周りは。
空間から出てきた人間はごく普通の濃紺のスーツ姿の若い男性だが、その眼が緑色でそれだけが異彩を放っていた。
男は空間から出てくると、いきなり俺に掌を向けて、
「君が優生者か、いきなりで悪いが死んでくれ」
と言い放つと、その掌から閃光が迸った!
「大丈夫?」
閃光が放たれた時、思わず眼を瞑っていたが、眼を開けると目の前には光り輝く壁があり、脇には糸虫さんがいた。俺を守ってくれた?
「ちっ邪魔が入ったか、しかも相手が悪いな、ここは退散しよう」
とスーツ男が言うや、開いたままになっていた空間に身を躍らせた。あっという間に空間は閉じ、周りはいつもの自宅周辺の景色に戻った。
「怪我はない?大丈夫?」
糸虫さんにさらに問いかけられ、自分の体を点検する。特に痛む場所もないし、まぁ大丈夫だろう。それよりこの事態は何だ?
「いまの何?沙織さんがやったの?」
「光の壁のこと?そりゃ私よ、壁作ってないとあなたたぶん死んでるわよ」
なんて怖いことを言うんだこの人は、さっきからセリフが怖い。
「…わかった、ありがとう。じゃあ質問を変えるけど、さっきのスーツの人は知ってる?あとなんで俺 が殺されかけたのかも知ってたりする?」
「ええ、知ってるわよ」