1話
「なあ、田中よぉ、高校生になったし、クラスのかわいい子とお近づきになれそうか?俺はまだ無理そう だ、おまえがかわいい子と仲良くなって友達を俺に紹介する作戦でいこう」
入学式が終わり何日か経ったところで学校の帰り道、中学以来の親友であるところの田中卓司に話かけた俺、斉藤洋介は入学式の日を回想してみる。
入学式が終わり、初めてのホームルームで自己紹介が行われた。
あいうえお順に自己紹介が進んでいき、イケメンやちょっとかわいい子に注目があつまり、ひそひそ声が立つ。
俺の順番が来たところで俺は席から立ち上がり話をはじめる。
「僕の名前は斉藤洋介と言います、趣味は読書で、中学の時は剣道をやっていました、よろしく」
と無難なことを言っておく。
順番に自己紹介は続いていくがみんな無難に自己紹介を進めていく。
はじめは知らない顔ばかりなので慎重になるのが当然だ、これからの学校生活がどのようなポジションになるかはその第一印象にかなり左右される部分があるといっても過言ではない。
早めにクラス内でそれなりに居心地のいいポジションを確保しなくては快適な学校生活が送れないというものだ。
これから快適な学校生活を送るため、手始めに隣の席にいる美人である、糸虫沙織さんと仲良くなってやるぜ、ふふん。
黒髪ロングの日本的な美人な糸虫さんは自己紹介も茶道を習っていると言っていた、習い事も日本的で素敵だ。
それに配られたプリントを俺がうっかり落としてしまったときにちゃんと拾ってくれたし、あまつさえにっこり微笑んで渡してくれたんだ!
などと隣の席の女の子について熱弁していると、
「ふうん、いとむしさんね、変わった名前だこと。ヒロインにはなりそうにない名前だな、印鑑なんかもその辺で売ってなさそうな苗字だし」
「うっさい、下のなまえはさおりっていって可愛らしい名前なんだよ。まださほどしゃべってないけどきっと中身も可愛らしい人に違いない。」
「そうか?あと初対面でお前に優しいってことは、ほかの人にも同じように優しいってことだぞ。まあそれを踏まえたうえでガンバレ」
なんてことを言うんだこいつは、これだからイケメンは。芸人みたいな名前のくせしやがって。
「いや、あれは俺に気があるやつの眼だ、間違いない。そのうち斉藤君って好きな子とかいる?って聞いてくるに違いないね」
「強がるなよ、今まで彼女いなかったろ?中高生くらいの女の子は見た目の比重大きいからな。磨けば光ると思うけど磨いてないからお前は」
そういうイケメン田中はもう嫉妬する気がしなくなるほどのイケメンだ。いいけど。
自分の容姿については平均並みだと思うが、かけている黒色セルフレームメガネがすべてを駄目にしているのは自分でわかっている。
コンタクトレンズにするにはお金がかかるしそのままで別段不都合はないしで、放っておいて今にいたったわけだ。
「そうは言ってもなかなかなあ、おしゃれってやり始めると際限なさそうでなあ」
「だから駄目なんだよ、女と付き合うのは面倒なときもあるけどまあ基本的には楽しいからな」
「そんなもんかねぇ、ま、気が向いたら頑張るよ」
俺と田中はそれぞれ学校から少し離れた最寄駅(あまり最寄ってない、何故学校は駅から遠いところに立地するのか?)近所で別れ、帰路についた。
俺の家の前まで来たところで、家の前にうちの学校の制服を着た女の子がいるのに気づいた。