エピソード・5 浅間 陽菜
「ふぅ~・・・何とか今回も任務完了か」
四班最強の草食系男子で知られる三島慎矢 三等陸尉は、山のふもとのHQでコーヒーを飲んでいた。
彼は元々東京大学出身で、大卒後、就職先がなく自衛隊に入ったところ、思わぬ(格闘、射撃、知識等の)才能を発揮した。
一応東大卒のスキルで幹部試験に受かり、三等陸尉という階級が与えられた。
しかしその矢先・・・
「三島慎矢 三等陸尉・・・君だね?」
「? はい」
「おめでとう、君は第一特殊テロ対策部隊 に選ばれた。」
「?」
「早速だが、君は第一中隊 一班に配属されることになっている」
「ちょ…ちょっと待ってください!
何の話ですか!?」
「・・・こちらに来たまえ。」
三島が呼び出されたところ、そこは司令室だった
「この資料を見たまえ」
男に渡されてみた資料は
「第一・・・特殊テロ対策部隊・・・」
についての資料だ。
「3か月前・・・ある事件が起こった。
西日本の塩飽諸島が 魔法 を使用する集団に占拠された。」
「塩飽諸島立てこもり事件です…か?
しかし・・・あれは憲法改正を要求する過激派だったのでは?魔法なんてものは・・・」
塩飽諸島立てこもり事件
過激派が、憲法改正要求の題材にするためにこの島を占拠した事件のことだ。
いちおう内部抗争が起こったことにより事件は解決。
この事件で日本政府に強硬改革が求められてきているところだ。
「表向きはな。だが本当は、魔術集団による侵略だった。政府はSAT投入にかなり出し渋っていたが、あれは塩飽諸島に西部普通科連隊を上陸させていたからだ。しかし魔法というものを使用する集団と戦うことは想定していなかった。・・・いやむしろ想定できなかったといってもいいだろう。
だから、一個中隊を犠牲にしてしまった。」
・・・あれは内部抗争ではなくて、自衛隊を極秘に送って制圧させていたのか?
「あの事件以降、我が国で起こった塩飽諸島事件と同じようなことが各国で起こったほか、その集団をほうふつとさせる新興宗教が台頭してきた。我々もこれに対抗できる部隊の組織が求めらる、そして機密が漏れることなく着々と準備を整えることができたのだ。
計画も最終段階に入った、あとは人員集め。君はそれに選ばれたのだよ!三島君」
なんかこう・・・何考えているのかわからない人だった。
「すまんな、私の名前は機密上明かせないが、コード00と覚えてくれ。
この部隊の司令官だ」
三島はよくわからないまま、得体のしれない司令官についていってしまった。結果、今までと違う特殊な訓練や教育隊時代をはるかに上回るハードすぎる訓練を受ける羽目になった。
・・・で今に至るのである。
三島は一息つかせていると、拝島がやってきた。
「どや?調子は」
と声をかけてきた。
三島は縦にうなずくと、ボーと医務室の方を見てため息をついた。
「どうしたん?
ちょっとやつれてるで」
拝島に言われると、三島もやっと重い口を開いて
「この先どうなるんかな…って憂鬱になるんだよ。だって魔法とかエルフとかが本当にあって、なおかつ魔術勢力なんてものが世界をわがものにしようとか言って…
そんでもって、魔法の使える俺達自衛隊の特殊部隊が闘っていくんでしょ?
なんかもう・・・わけわかんないよ」
と愚痴を漏らした。
「まぁ…気持ちはわかるんやけど」
拝島は腕を組んで、答えた。
その時、
「やあやあ諸君!
任務ご苦労。」
制服を着た中年男性が、やってきた。
「コード00・・・」
三島はは思わず、中年男性の名を呟く、コード00には実名が存在しない。
だからコード00と呼ばれている。
「諸君、君たちに新入隊員だ!
一班の隊員のほとんどが、自衛官出身だろう・・・
しかし今度の新入隊員は、民間人だ。魔法が使えるってことで、こっちに配属されることになった。
これで一班は定員5人ピッチリになったわけだ。
浅間 陽菜君 来なさい。」
「は・・・はい」
返事とともに、民間服姿の少女が現れた。
彼女が、浅間 陽菜である。かなりのあがり症なのか顔を赤らめて、目線を斜め下に向けていた。
「今日から・・・第一班に、は・・・配属されます・・あさまひな・・・です」
ものすごく緊張していることがわかる。本当にこの人が一班で大丈夫かとみんなが、心配になったほどである。
「え〜・・・、彼女はこう見えても 賢者 だそうだ。
いまはできんが、いずれ死者をも生き返らせる魔術を習得できるらしい。」
皆特に反応はなかったが、少し期待していた。
「賢者…か」
土方が浅間を見て、独り言を呟いた。
その時、
『こちらニ分隊!襲撃を受けている!!』
ちょうど、第二分隊から救援を求める無線が入った。
新入隊員 浅間 陽菜の力が試されようとしている。
ちょうどいい、お手並み拝見といこう。
土方はそういわんばかりに、戦う準備を進める浅間を見守った。