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忘却の空より来たる
その夜、星が降った。
北半球を中心に、天空から地表へと無数の光が降り注いだのだ。
突然の現象に、天文学の徒は困惑した。兆しがなく、カメラを始めとする観測機器の一切に記録として残らず、目撃情報を統合しても、流星という既知の現象とはかけ離れていたからだ。
降り注ぐ光をその身に受けたと称する人々が現れ、ひとときメディアをにぎわせたが、彼らの体には何の異変もなく、光にまつわる物証が存在しなかったこともあり、彼らも、光も、次第に人の意識から薄れていった。
それでも、光は数年にわたって降り続け、いつの間にか止んでいた。
誰も知らなかった。
だから、誰にも防ぎようはなかった。
後に『夏の夜の夢』と呼ばれる、人類史の致命的な節目であった。