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「やった!」「まるで別人だ」
「やった!」
彼女は体全体で喜びを表現していると言わんばかりに、俺の背中を痛快な音を立て叩いている。
俺[雨森弥太郎]は、元派遣先のアルバイト[山本麻耶]からの依頼を受けているところだ。
「なぁ、山本ヤm・・・ゲフフン」
そんな目で俺を見ないでくれ。決して下から読んでも『大丈夫』とか思ってはいない。
「すまん、あまり叩くもんだから噛んだ。それより、どうだった?山本」
先程まで彼女は喜色満面だったが、
軽くいい訳をした今も、俺を忌み嫌う物を見る様に睨んでいる。
「・・・・パフェ1つ」
勢いよく俺の背中を拳で殴りつけ様に言い放った。
奢るのは別に構わないが、いい加減それは ヤ メ テ ホ シ イ ゾ。
「了解―――ほら、取れてよかったな」
最近流行している『赤備え』をした猫の『ぬいぐるみ』を取り出し、彼女に渡す。
胸に『ぎゅぎゅっ』と幸せそうに『ぬいぐるみ』を抱く様からは、暴力を振るう女には見えない。
だからまぁ、いらない言葉がつい出てしまうのだ。
「まるで別人だ」