5/21
「今日だっけ?」 「嘘つき」
「今日だっけ?」
社長[八王子芽衣]は別にそれを期待していなかったという様に、怠惰にそれを受け取った。
「いえ、ホワイトデイはずっと前になりますけど・・・私の気持ちという事で、よろしくどうぞ」
慣れない事をするためもあるが、やたら緊張して顔を強張らせている俺は、[雨森弥太郎]。
きっとそろそろ[モーリー]という愛称を皆さん覚えてくれただろう、入社3ヶ月になる男だ。
「まぁ言うまでもなく、モーリーの物は私の物なのだけど。一応お礼を言おうか」
そう言いながら『ありがとう』の一つも言わない自称16歳の社長。
チョコのお返しの一品にと思って俺が買って来た物はホールケーキ。
お返しが欲しそうだと勝手に思っていたのだが、
箱を開けている今も社長の心はどこか別の所にある様だった。
箱を開け、中を覗くと・・・・
【お誕生日おめでとう!ビバ社長!!】と書かれたチョコプレートが芽衣の目に留まった。
数秒社長はそれを眺め、呆れた様に一つ小さく笑った。
一瞬背筋に冷たいものが走ったが、社長は再びそれを眺め、俺を見つめ直して優しく笑う。
「嘘つき」