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「問題なさそうだ」「大丈夫」
「問題なさそうだ」
俺は【カツ丼】を最高の出来に仕上げ、赤子の手を握る様に注意を払い、丼に蓋をした。
このところ社長が俺に与えてくれる仕事はどれも料理屋への派遣だ。
しかも何故か和食の店に限られている。
[ダ・ダン]の様に人殺しまで請け負う様な独裁っぷりを発揮する仕事は俺にはまだ回ってこない。
【独裁社】は俗に言う[何でも屋]であり、[請負人]として依頼をこなす事を生業とする会社だ。
ヤクザの様な身に危険が迫る仕事をする事もあれば、平和すぎる犬の散歩とかを請け負う時もある。
「雨森さん!品が出来たなら教えて下さいよ。丼をじっと見つめて何があるんですか。
冷めないうちに持っていきますからね!」
この丼専門店に派遣されて3週間。今では従業員と親しい仲である。
昼時の忙しい時間等、
俺は派遣でなく本当の社員なのではないかと錯覚してしまう程に場に溶け込んでいる。
だからこそ、心配している事が一つある。
俺は社長に忘れられているのではないだろうか・・・。
不安を打ち消すため、次の丼を作るため、頬を両手で叩き気合を入れ、自身に言い聞かせる。
「大丈夫」