「辞表ッ!?」「ありがとう」
「辞表ッ!?」
「あぁ、辞表を提出する」
【独裁社】社長[八王寺芽衣]はいつもと変わらない口調で俺[雨森弥太郎]に告げた。
「提出って誰にですかッ!?
って、そうじゃなくて、何言ってんですか急に!!」
「そう煩く言うな、真面目な話なんだぞ?」
「いや・・・それじゃやっぱりダメですよッ!?」
「そうなのか?」
「そうなのかって・・・社長が居なくなった後はどうするんですか」
「親父殿に任せる」
変に空気が重くなるが、思考が追いつかない俺は聞く事しかできなかった。
「・・・(こ、これはありえる展開だ。
(実質【独裁社】の創立から今に至るまで、尼子さんが全て経営してたようなもんだし・・・
(それじゃなんだ?まさか本当に辞めてしまうのか???)」
「言うのが遅くなって悪かった、実は1週間くらい前に親父殿には言ってたんだ」
「・・・(やっぱり冗談じゃないのか
(なんだろう、胸の辺りがひんやりする)」
「モーリーはなかなか優秀だからな、多分まだ【独裁社】は続くはずだし、
急な解雇とかにはならないと思うけど、その時が来たら手当てには色をつけておくよ」
「・・・(ありがたい話だけど、何故か嬉しくないぞ)
あ、あの、社長は今後どうするんですか?」
「いや、何も考えてない」
「はぁ」
しばらく沈黙が続いた。
俺は積極的に話を続ける事ができず、窓から夕陽を眺める社長の横顔をぼんやり見つめていた。
「ただ、そうだな」
夕陽を眺めつつ社長は言った。
「親友に会いに行こうと思う」
「・・・海外とか、ですか?」
「いや、そう遠くない。
しばらく会ってなかったから、長期滞在しに行こうかな?ってね」
それじゃ何も辞めなくても・・・と思う俺だったが、
今までの付き合いで彼女の事を俺はよく知っている。
彼女は'自分の意思を何よりも尊重し重視する'。
そんな彼女が俺は嫌いではない、だからこそ彼女を止める言葉を紡げない俺だった。
「それじゃ、お別れって分けじゃあないですね。
少し安心しました、俺は'一生働くなら社長の元で'って一昨日くらい前に決めたんですよね。
だから帰りをお待ちしてますよ?もちろん【独裁社】を残せてたらですけど」
「上手くしつけができてたみたいだなぁ」
社長はそういって俺の目を見て破顔した。
お互いの笑い声が社長室に響きあう。
「ありがとう」
いつかまた会えるその日まで。
「ありがとう」
【独裁社×芽衣】を読んで頂き、誠にありがとうございます。
この作品の製作背景等を以下に書いていきます。
興味があればどうぞご覧下さい。
*
当初、10行小説シリーズとして、過去に弟と運営したHPで書いたのが始まりです。
「A」「B」を最初に決め、弟と私の想像する話の違いを楽しむという目論見でした。
私は10行の中に背景描写を事細かに描く事は無理と判断し、
特定の主人公が4コマ漫画の中で続き物(世界観)の話しを展開させるという漫画から、
その小説版を作れないだろうかと考えこの様な作品を書いてしまいました。
結果は・・・どうもうまくいかなかった気がします。
中途半端な作品だときっと読者の皆様には思われていると思います。
この【独裁社】の中に登場する人物は、私が以前から作りたかったサウンドノベルの登場人物です。
サウンドノベルは構想だけできてる感じで完成していません。このサウンドノベルを楽しんでもらった方に、
こちらの作品を見てもらえれば・・・という様な物を、皆様に読んで頂いた事になり申し訳なかったです。
ちなみに[八王子芽衣]ですが、こいつは[バルーンハウス]という小説(未完)の中にも出てきます。
雨転結構を起こす際に、絵のサイトで稀に見かける看板娘を小説版で作りたかったという、馬鹿な発想が元です。
きっと今後の作品にチラホラでると思います。
馬鹿な作者をどうぞ許してやって下さい。
ちなみに今回、08.10.04をもちまして【独裁社】を完結させた理由ですが、
思い出してみれば私は以前のHPでも小説をメインに扱っていませんでした。
サウンドノベルを作るのが好きだったのです。
サウンドノベルを多くの方にやって貰えたらと思い、
人気あるHP製作への工夫として、弟との10行小説企画を始めました。
弟はサウンドノベルよりも小説派でしたので、当時のHPでは問題ありませんでした。
しかし、雨転結構に弟はもう参加していません。
従って、以前のHPから続けていたこの10行小説を終了し、サウンドノベル製作の方に力を注ぎ込もうと思っております。
どうぞこれからも雨転結構をよろしくお願い致します。
最後まで読んでくれた貴方に深くお礼申し上げます。
■雨邪鬼