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「立てるのか?」「直行したな」
「立てるのか?」
私の足元の秋山組長は片膝をついて、苦渋に満ちた顔で私を見上げる。
「弾は貫通したようだが・・・歩けそうにない」
どうやら先ほどから押さえている左太ももに銃弾を受けたらしい。
服が黒だったために一見出血がわからなかったが、
秋山の血は床に拡がり始め、血の匂いが鼻につき始めた。
「く、組長!!」
「馬鹿野郎、静かにしろ!!
お前らが騒いだとしても結果は変わりないし、
何の慰めにもならんわ!!」
「・・・ヘイ」
うろたえて秋山に駆け寄ってきた下っ端達が萎縮する。
全く役に立たない連中だ。
「この位で歩けないとか言うな、それでも男か」
「安静にしろと言う言葉はお前にはないのか」
「なんだ?代わりに私が前にでて戦うのか? もう戦えないというのか?」
秋山は私の言葉を聞くなり無言で立ち上がる。
苦悶の表情を浮かべ小声で『お前を戦わせる訳がないだろ』と言い(私は読唇術を心得ている)、
片足を引きずる様にして動き始めた。
ふん、なかなかどうして狸だな、お互い。
「直行したな」